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Channel: ゴエモンのつぶやき
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デフリンピック 聴覚障害者の活躍に注目

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 4年に1度開かれるスポーツの祭典といえば、オリンピックやパラリンピックを思い浮かべる人が多いだろう。

 同じように、世界規模で開催される大会に聴覚障害者を対象にしたデフリンピックがある。英語のデフ(聴覚障害)とオリンピックを組み合わせた造語だ。

 その第22回夏季大会が26日、ブルガリアのソフィアで開幕する。世界の90カ国・地域から3千人近い選手が参加する予定で、8月4日まで水泳やサッカー、自転車(ロード、マウンテンバイク)など18競技でメダルを争う。

 このうち、日本選手団は柔道や卓球など12競技の219人(選手149人、役員70人)で、九州からも陸上の田井小百合さん(34)=長崎県佐世保市=ら15人の選手・役員が参加する。

 田井さんは、全日本学生陸上の女子100メートル障害で2度準優勝の経験を持つ。しかし、23歳の時に右耳が突発性難聴となり、4年前には左耳も急性進行性難聴となった。2年前に長女を出産したのを機に聴覚障害者陸上に転向している。

 昨年の日本聴覚障害者陸上選手権女子100メートル障害で優勝し、同種目と女子400メートルリレーの代表となった。「夢に向かって頑張る姿を娘に見せたい」と晴れ舞台での活躍を誓っている。

 残念なのは、オリンピックやパラリンピックに比べて国民の認知度が低いことだ。2006年に内閣府が行った国民意識調査では、デフリンピックを知っていると答えたのは3%にも満たなかった。

 このため、周囲にデフリンピック出場を理解してもらうのが難しく、強化合宿参加などのため職場に休みを申し出るのをためらう選手も少なくないという。

 国際的にも状況は厳しい。11年2月にスロバキアで開催予定だった冬季大会は地元組織委員会の資金難などで直前になって中止に追い込まれた。

 聴覚障害者自らが大会を運営し、参加者が国際手話でコミュニケーションを深めるのがデフリンピックである。選手のリハビリテーションを重視して始まったパラリンピックに対し、記録を重視するのもデフリンピックの特徴だ。

 この独創性を守るため、大会を主催する国際ろう者スポーツ委員会が1995年に国際パラリンピック委員会を脱退して以降、パラリンピックに聴覚障害者は出場していない。デフリンピックは聴覚障害者にとって最高峰の大会となった。

 苦難を乗り越えて限界に挑む選手たちの姿は、五輪にも負けないような感動を私たちに与えてくれるはずだ。

 今回は大会を盛り上げるため初の聖火リレーも行われ、24年に初めて聴覚障害者の国際スポーツ大会が開かれたフランスのパリからソフィアまで聖火が自転車で運ばれるそうだ。

 大会を通して聴覚障害者への理解が深まり、健常者との交流が広がることも期待される。大会の意義を踏まえ、選手たちの活躍に注目したい。


=2013/07/24付 西日本新聞朝刊=(最終更新 2013年07月24日 10時34分)






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