ブラジル大会に8カ国が出場
現在、ブラジルで「もう一つのサッカーW杯」が開催されている。国際知的障がい者スポーツ連盟(INAS―FID)主催の、知的障がい者サッカーのW杯。サンパウロ州のサントス、サンビセンテ、グアルジャーの計4会場を舞台に、今月11日から25日まで熱戦が繰り広げられている。同W杯の初開催は1994年のオランダ大会。以来6回目を迎える。今年のブラジル大会には、全8カ国が2グループに分かれ出場。上位2カ国ずつが決勝トーナメントへ進む。日本はブラジル、ドイツ、ポーランドと同組。13日の初戦はブラジルと対戦し、2―2で引き分けた。(夏目祐介記者)
そもそも知的障がい者サッカーに、それほどなじみはないだろうか。日本知的障害者サッカー連盟(JFFID)の天野直紀理事長によれば、日本国内の競技人口は4000人。知的障がい者とは、相対的な境界線で分けたIQ知数で決まるところもあり、日本代表クラスの選手は、健常者と同レベルでプレーする。W杯もFIFAルールを採用しており、試合の見た目は、7月まで開催していたFIFAサッカーW杯と基本的に何ら変わらない。
しかし、日本での障害者スポーツに対する理解は、東京五輪・パラリンピックが決まり向上してはいるそうだが、まだまだ低い。選手たちは中学、高校までは学校の部活でチームに所属できるが、社会に出るとプレーする機会が減っていく。知的障がい者向けのクラブがあるのは、せいぜい東京近郊にいくつかだという。
JFFIDの活動予算も限られている。国からは年間700万円、パラリンピック連盟からも年間400万円が支給されているが、知的障がい者サッカーはパラリンピック正式種目でなく、正式種目のほうが優遇されるのも実情だそうだ。
また障がい者スポーツは、一括りにできない複雑さもある。というのも、例えば知的障がい、耳や目が不自由な障がい、あるいは足が不自由な障がいなど、障が いの種類だけ同スポーツ内で団体が分かれており、サッカーは日本に7団体存在するという。そのため支援が分散してしまうのも現状だ。
今回の日本代表のブラジル派遣も協会予算内ではまかなえず、スポンサー支援やユニホームを販売するなどして資金を集めた。それでも選手も含めて1人30万円を自己負担している。
そうして迎えたブラジルW杯初戦。大雨に見舞われたグアルジャーで対するは開催国ブラジル。小澤通晴監督が「ボールを止める、蹴るの基本的な技術は相手が 一枚上手だった」と振り返るように、日本は中盤を支配されるも、カウンターから相手のサイドをうまく使い、FW森山憂多選手を中心に多くのチャンスを作 る。しかしシュートに精度を欠き、なかなかゴールを奪えない。
一方ブラジルは、雨天で悪いピッチコンディションの中で も、縦への早いパスやサイドチェンジを使い、効果的にゴール前までボールを運ぶ。何度かシュートがポストを叩き、ひやりとする場面もあった。すると前半終 了間際。ついに日本のDFが耐え切れなくなり、ブラジルが先制。日本は1点ビハインドのまま前半を終える。
雨足がますます強まった後半。まずは同点に追いつきたい日本だが、開始早々逆に失点を喫してしまう。これで0―2。ベンチにも熱が入り、「前線から厳しくボールを奪いに行く」「自分たちの攻撃時でも、ボールを奪われた後の守備をもっと意識する」などの指示が飛ぶ。
一進一退の攻防が続き、敗戦かと思われた試合終了直前、ドラマが待っていた。
後半41分、左サイドを突破したMF浦川優樹選手が、シュートをサイドネットに突き刺し1点を返すと、勢いそのままに同43分、ゴール前の混戦からFW森 山選手がこぼれ球を執念でねじ込み同点。監督以下ベンチ全員がピッチ脇まで飛び出し、選手と抱き合い喜びを爆発させた。
ロスタイムの4分間も、逆転を狙い攻め立てた日本だったが、そのまま試合終了。2―2の引き分けで初戦を終えた。
小澤監督は「勝てる試合だった」と悔しさを滲ませ、「DFラインとGKの連携」を課題に、次戦の勝利を誓う。
応援に駆け付けたDF峰広志選手の母夏江さんは、「チームとして今までで一番エネルギーを感じる試合だった」と選手たちを労った。
予選突破を懸けた残りの日程は次の通り。「もう一つの日本代表」の躍進を期待したい。
15日午前10時からサントスでポーランド戦。17日午後3時からグアルジャーでドイツ戦。日程や競技などについての詳細は(http://jffid.com/)まで。
サンパウロ新聞 2014年8月15日付
現在、ブラジルで「もう一つのサッカーW杯」が開催されている。国際知的障がい者スポーツ連盟(INAS―FID)主催の、知的障がい者サッカーのW杯。サンパウロ州のサントス、サンビセンテ、グアルジャーの計4会場を舞台に、今月11日から25日まで熱戦が繰り広げられている。同W杯の初開催は1994年のオランダ大会。以来6回目を迎える。今年のブラジル大会には、全8カ国が2グループに分かれ出場。上位2カ国ずつが決勝トーナメントへ進む。日本はブラジル、ドイツ、ポーランドと同組。13日の初戦はブラジルと対戦し、2―2で引き分けた。(夏目祐介記者)
そもそも知的障がい者サッカーに、それほどなじみはないだろうか。日本知的障害者サッカー連盟(JFFID)の天野直紀理事長によれば、日本国内の競技人口は4000人。知的障がい者とは、相対的な境界線で分けたIQ知数で決まるところもあり、日本代表クラスの選手は、健常者と同レベルでプレーする。W杯もFIFAルールを採用しており、試合の見た目は、7月まで開催していたFIFAサッカーW杯と基本的に何ら変わらない。
しかし、日本での障害者スポーツに対する理解は、東京五輪・パラリンピックが決まり向上してはいるそうだが、まだまだ低い。選手たちは中学、高校までは学校の部活でチームに所属できるが、社会に出るとプレーする機会が減っていく。知的障がい者向けのクラブがあるのは、せいぜい東京近郊にいくつかだという。
JFFIDの活動予算も限られている。国からは年間700万円、パラリンピック連盟からも年間400万円が支給されているが、知的障がい者サッカーはパラリンピック正式種目でなく、正式種目のほうが優遇されるのも実情だそうだ。
また障がい者スポーツは、一括りにできない複雑さもある。というのも、例えば知的障がい、耳や目が不自由な障がい、あるいは足が不自由な障がいなど、障が いの種類だけ同スポーツ内で団体が分かれており、サッカーは日本に7団体存在するという。そのため支援が分散してしまうのも現状だ。
今回の日本代表のブラジル派遣も協会予算内ではまかなえず、スポンサー支援やユニホームを販売するなどして資金を集めた。それでも選手も含めて1人30万円を自己負担している。
そうして迎えたブラジルW杯初戦。大雨に見舞われたグアルジャーで対するは開催国ブラジル。小澤通晴監督が「ボールを止める、蹴るの基本的な技術は相手が 一枚上手だった」と振り返るように、日本は中盤を支配されるも、カウンターから相手のサイドをうまく使い、FW森山憂多選手を中心に多くのチャンスを作 る。しかしシュートに精度を欠き、なかなかゴールを奪えない。
一方ブラジルは、雨天で悪いピッチコンディションの中で も、縦への早いパスやサイドチェンジを使い、効果的にゴール前までボールを運ぶ。何度かシュートがポストを叩き、ひやりとする場面もあった。すると前半終 了間際。ついに日本のDFが耐え切れなくなり、ブラジルが先制。日本は1点ビハインドのまま前半を終える。
雨足がますます強まった後半。まずは同点に追いつきたい日本だが、開始早々逆に失点を喫してしまう。これで0―2。ベンチにも熱が入り、「前線から厳しくボールを奪いに行く」「自分たちの攻撃時でも、ボールを奪われた後の守備をもっと意識する」などの指示が飛ぶ。
一進一退の攻防が続き、敗戦かと思われた試合終了直前、ドラマが待っていた。
後半41分、左サイドを突破したMF浦川優樹選手が、シュートをサイドネットに突き刺し1点を返すと、勢いそのままに同43分、ゴール前の混戦からFW森 山選手がこぼれ球を執念でねじ込み同点。監督以下ベンチ全員がピッチ脇まで飛び出し、選手と抱き合い喜びを爆発させた。
ロスタイムの4分間も、逆転を狙い攻め立てた日本だったが、そのまま試合終了。2―2の引き分けで初戦を終えた。
小澤監督は「勝てる試合だった」と悔しさを滲ませ、「DFラインとGKの連携」を課題に、次戦の勝利を誓う。
応援に駆け付けたDF峰広志選手の母夏江さんは、「チームとして今までで一番エネルギーを感じる試合だった」と選手たちを労った。
予選突破を懸けた残りの日程は次の通り。「もう一つの日本代表」の躍進を期待したい。
15日午前10時からサントスでポーランド戦。17日午後3時からグアルジャーでドイツ戦。日程や競技などについての詳細は(http://jffid.com/)まで。
サンパウロ新聞 2014年8月15日付