目と耳の両方が不自由な「盲ろう者」が、国内で少なくとも1万3952人いることが「全国盲ろう者協会」(東京)の実態調査で分かった。厚生労働省の事業として初めて本格的に行われ、先ごろまとめられた。盲ろう者の孤立が浮き彫りとなり、厚労省や関係団体は対策を急いでいる。
2012年10月時点の調査で、視覚、聴覚両障害が身体障害者手帳に記載されている人が対象になっている。東北6県では938人(青森150人、岩手167人、宮城179人、秋田112人、山形162人、福島168人)だった。
盲ろう者の障害の程度はさまざまで、約1万2800人に送付したアンケート(回収率22.4%)によると、全盲ろうの人が15.9%、全盲難聴41.2%、弱視ろう7.7%、弱視難聴26.3%だった。無回答は8.9%。
盲ろう者が社会参加するには、当事者の意思疎通や情報入手を支援する「通訳・介助員」の存在が欠かせない。通訳・介助員の派遣事業は都道府県、政令市などが行うが、今回の調査を基に調べた利用率は6.9%にとどまっている。
当事者の意思疎通方法としては、手話をする人の手に触れて理解する「触手話(しょくしゅわ)」や、点字タイプライターのキー代わりに盲ろう者の指を直接たたいて言葉を伝える「指点字(ゆびてんじ)」などがある。
全国盲ろう者協会の山下正知事務局長は「盲ろう者自らの情報取得が困難なことから、福祉サービスの利用が進んでいない。当面は、通訳・介助員派遣制度の拡充などを訴えたい」と話している。
◎みやぎ「友の会」の早坂さん/仲間の存在知り希望
盲ろう者は情報を得ることが難しい。生まれた時から弱視難聴だった「みやぎ盲ろう児・者友の会」(仙台市)の会長、早坂洋子さん(32)は小中高校を普通学校で過ごした。高校を卒業するまで「目と耳が不自由な人は、自分だけだと思っていた」と言う。
子どもの頃は家族の会話を聞き取れたため、言葉を習得することができた。だが、障害は進行した。中学の授業で、単眼鏡を使って黒板を見た。友人の声も徐々に聞こえなくなった。みんなが笑っていても、どうしてなのか分からずにいた。
孤独から救ってくれたのは、19歳の時に知った関東の当事者団体だった。交流会に参加すると、支援者らと大きな文字を使った筆談で会話をすることができた。
「たわいもない内容を、心から楽しんだ。自分もみんなとおしゃべりができるんだと思った」
同様の団体を宮城でも発足させようと、2002年に県内の当事者や支援者と「友の会」の準備会をつくった。会は、県と仙台市が主催する通訳・介助員養成講座に協力もしている。
早坂さんは現在、新聞の大きな見出しサイズの文字なら目の前で読むことができる。ただ、音声の聞き取りは難しい。それでも、支援者の助けを借りながら通訳・介助員養成講座で講師を務めている。
友の会の盲ろう者は現在5人。多くの当事者に、会の情報が届いていないのが現状だ。「盲ろう者に直接知らせることは難しいので、周囲の人に情報を伝えていきたい」と早坂さん。「盲ろうの状態になって絶望している人もいるかもしれないが、工夫すればできることも多い。希望を持ってもらえるように活動したい」と話す。
[盲ろう者実態調査] 地方自治体を通じて身体障害者手帳の交付状況を直接調べており、これまでの抽出調査に比べて精度が格段に上がった。一方で、障害者手帳を取得していない当事者もおり、実態調査にも限界がある。アンケートも同時に実施し、当事者の暮らしぶりを詳細に分析している。全国盲ろう者協会の連絡先は03(5287)1140、ファクス03(5287)1141。
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通訳・介助員養成講座で筆記通訳の方法をアドバイスする早坂さん(中央)
2014年08月17日日曜日 河北新報
2012年10月時点の調査で、視覚、聴覚両障害が身体障害者手帳に記載されている人が対象になっている。東北6県では938人(青森150人、岩手167人、宮城179人、秋田112人、山形162人、福島168人)だった。
盲ろう者の障害の程度はさまざまで、約1万2800人に送付したアンケート(回収率22.4%)によると、全盲ろうの人が15.9%、全盲難聴41.2%、弱視ろう7.7%、弱視難聴26.3%だった。無回答は8.9%。
盲ろう者が社会参加するには、当事者の意思疎通や情報入手を支援する「通訳・介助員」の存在が欠かせない。通訳・介助員の派遣事業は都道府県、政令市などが行うが、今回の調査を基に調べた利用率は6.9%にとどまっている。
当事者の意思疎通方法としては、手話をする人の手に触れて理解する「触手話(しょくしゅわ)」や、点字タイプライターのキー代わりに盲ろう者の指を直接たたいて言葉を伝える「指点字(ゆびてんじ)」などがある。
全国盲ろう者協会の山下正知事務局長は「盲ろう者自らの情報取得が困難なことから、福祉サービスの利用が進んでいない。当面は、通訳・介助員派遣制度の拡充などを訴えたい」と話している。
◎みやぎ「友の会」の早坂さん/仲間の存在知り希望
盲ろう者は情報を得ることが難しい。生まれた時から弱視難聴だった「みやぎ盲ろう児・者友の会」(仙台市)の会長、早坂洋子さん(32)は小中高校を普通学校で過ごした。高校を卒業するまで「目と耳が不自由な人は、自分だけだと思っていた」と言う。
子どもの頃は家族の会話を聞き取れたため、言葉を習得することができた。だが、障害は進行した。中学の授業で、単眼鏡を使って黒板を見た。友人の声も徐々に聞こえなくなった。みんなが笑っていても、どうしてなのか分からずにいた。
孤独から救ってくれたのは、19歳の時に知った関東の当事者団体だった。交流会に参加すると、支援者らと大きな文字を使った筆談で会話をすることができた。
「たわいもない内容を、心から楽しんだ。自分もみんなとおしゃべりができるんだと思った」
同様の団体を宮城でも発足させようと、2002年に県内の当事者や支援者と「友の会」の準備会をつくった。会は、県と仙台市が主催する通訳・介助員養成講座に協力もしている。
早坂さんは現在、新聞の大きな見出しサイズの文字なら目の前で読むことができる。ただ、音声の聞き取りは難しい。それでも、支援者の助けを借りながら通訳・介助員養成講座で講師を務めている。
友の会の盲ろう者は現在5人。多くの当事者に、会の情報が届いていないのが現状だ。「盲ろう者に直接知らせることは難しいので、周囲の人に情報を伝えていきたい」と早坂さん。「盲ろうの状態になって絶望している人もいるかもしれないが、工夫すればできることも多い。希望を持ってもらえるように活動したい」と話す。
[盲ろう者実態調査] 地方自治体を通じて身体障害者手帳の交付状況を直接調べており、これまでの抽出調査に比べて精度が格段に上がった。一方で、障害者手帳を取得していない当事者もおり、実態調査にも限界がある。アンケートも同時に実施し、当事者の暮らしぶりを詳細に分析している。全国盲ろう者協会の連絡先は03(5287)1140、ファクス03(5287)1141。

通訳・介助員養成講座で筆記通訳の方法をアドバイスする早坂さん(中央)
2014年08月17日日曜日 河北新報