栃木県足利市にあるブドウ畑。そこで働いているのは、障害者支援施設“こころみ学園”で共同生活を送る多くの知的障害者です。施設に隣接するワイナリーでワイン造りにも参加する彼らは今、ある問題と向き合っています。小山慶一郎キャスターが取材しました。
栃木県足利市の山あいにある“ココ・ファーム・ワイナリー”。30年前からワインを生産しています。小山キャスターが訪れると、早速、越知さんという女性が歓迎してくれました。
小山キャスター「こんにちは。小山と申します」
越知さん「よろしくお願いします」
目の前には山の斜面を利用した広大なブドウ畑。日当たりが良い山肌には約1500本、ワイン用のブドウの木が植えられています。このブドウ畑を運営するのは、障害者支援施設“こころみ学園”。現在、約150人の知的障害者が働いています。出迎えてくれた越知さんは、この“こころみ学園”の施設長です。
取材したこの日、ブドウ畑である作業が行われていました。ココ・ファーム・ワイナリーのスタッフ、?原さんに尋ねてみると――
小山キャスター「いま何しているところですか?」
?原さん「袋がけですね。ブドウに雨よけで…」
ブドウの実を雨などから守るため、一房ずつ袋で覆います。その作業を見せてくれたのは、知的障害がある山田さん61歳。
小山キャスター「いいですか?作業見させていただいても」
山田さん「こういうふうにやって、やさしく丁寧に。ご丁寧に」
おいしいブドウを作るためには欠かせない作業です。
小山キャスター「これを数えきれないほどやられるわけですもんね。これは大変な作業ですよ」
草刈りや、石ひろいなども学園生の仕事です。そして、山から『カンカンカン』という音が聞こえてきました。実は、これも仕事の一つです。音を頼りに小山キャスターが向かった山頂にいたのは、小峰さん66歳です。
小山キャスター「何をされてたんですか?」
小峰さん「いまカラスを見てた」
小山キャスター「カラス!?」
小峰さんの仕事は“カラス番”。実ったブドウがカラスに食べられないように、缶を叩いて追い払っています。スタッフの?原さんは、学園生の仕事ぶりをこう語ります。
?原さん「自分が楽しいと思ったことをがんばって、自分ができることを一生懸命にやるのがこの施設の人たちだと思います」
小山キャスター「自信につながっていくということですよね」
?原さん「そうですね」
このブドウ畑が作られたのは、今から56年前のこと。当時、市内の中学校で特別支援学級の教員をしていた川田昇さんと9人の生徒が中心となり、2年がかりで開墾。その後、川田さんは“こころみ学園”を創設し、ワイン造りを始めました。ワイン造りには学園生も参加しています。
学園生「仕込みもやるもんね。9月から」
小山キャスター「仕込みというのはなんですか?」
?原さん「ワインにする前の悪い実といい実をわけたりとか」
小山キャスター「先生が教えて皆さんやられるんですか?」
?原さん「みんなでコンテナを開けたりとか」
毎年、夏から秋にかけて行われるワインの仕込みでは、学園生が活躍します。
次に訪れたのは、醸造場。責任者の柴田さんに案内してもらいました。
小山キャスター「これタンクですか。こんな大きいんですね」
柴田さん「8500リットル入るタンクです」
こちらのワイナリーでは13の大型タンクで醸造し、年間120トン以上のワインを生産しています。全国の契約農家のブドウも集まり生産されるワイン。年商は7億円を超えます。ブドウ畑のふもとにあるワインショップでは、ここで生産されたワインの飲み比べができます。
柴田さん「こちらは足利呱呱和飲(あしかがここわいん)というワインです」
学園生が育てたブドウが使われている白ワイン。小山キャスターが試飲してみました。
小山キャスター「いい香りなんですね。いただきます。(飲んでみて)飲みやすい!スッキリしてる感じですね」
この白ワインは、成田空港にあるJALのファ−ストクラスラウンジでも採用されました。
創設から40年以上たった“こころみ学園”では、この施設で生涯を過ごす人が多く、高齢化が進んでいます。現在、ここにいる大半は60歳以上です。中には、山のブドウ畑での作業が体力的に厳しいという人もいます。そのため、足腰への負担が少ない平地のブドウ畑を増やしました。また、他の企業から簡単な食品の加工を請け負うなどの対策もすすめられています。施設長の越知さんはこう語ります。
越知さん「かつてここで一生懸命仕事した人たちがちゃんと年をとって、それを若い人たちが見て、優しさを引き出す気持ちを芽生えさせてくれるのは、高齢になって動けなくなった人の役目だなと…」
「取材に行って印象的だったのは、知的障害のある皆さんがお互い支え合いながら汗をかき、笑顔で働いている姿でした」と語る小山キャスター。施設長の越知さんによると「同情から買ってもらえるのは1回だけで、本当においしいワインじゃないと続かない」とのことです。
< 2014年8月28日 18:54 > 日テレNEWS24
栃木県足利市の山あいにある“ココ・ファーム・ワイナリー”。30年前からワインを生産しています。小山キャスターが訪れると、早速、越知さんという女性が歓迎してくれました。
小山キャスター「こんにちは。小山と申します」
越知さん「よろしくお願いします」
目の前には山の斜面を利用した広大なブドウ畑。日当たりが良い山肌には約1500本、ワイン用のブドウの木が植えられています。このブドウ畑を運営するのは、障害者支援施設“こころみ学園”。現在、約150人の知的障害者が働いています。出迎えてくれた越知さんは、この“こころみ学園”の施設長です。
取材したこの日、ブドウ畑である作業が行われていました。ココ・ファーム・ワイナリーのスタッフ、?原さんに尋ねてみると――
小山キャスター「いま何しているところですか?」
?原さん「袋がけですね。ブドウに雨よけで…」
ブドウの実を雨などから守るため、一房ずつ袋で覆います。その作業を見せてくれたのは、知的障害がある山田さん61歳。
小山キャスター「いいですか?作業見させていただいても」
山田さん「こういうふうにやって、やさしく丁寧に。ご丁寧に」
おいしいブドウを作るためには欠かせない作業です。
小山キャスター「これを数えきれないほどやられるわけですもんね。これは大変な作業ですよ」
草刈りや、石ひろいなども学園生の仕事です。そして、山から『カンカンカン』という音が聞こえてきました。実は、これも仕事の一つです。音を頼りに小山キャスターが向かった山頂にいたのは、小峰さん66歳です。
小山キャスター「何をされてたんですか?」
小峰さん「いまカラスを見てた」
小山キャスター「カラス!?」
小峰さんの仕事は“カラス番”。実ったブドウがカラスに食べられないように、缶を叩いて追い払っています。スタッフの?原さんは、学園生の仕事ぶりをこう語ります。
?原さん「自分が楽しいと思ったことをがんばって、自分ができることを一生懸命にやるのがこの施設の人たちだと思います」
小山キャスター「自信につながっていくということですよね」
?原さん「そうですね」
このブドウ畑が作られたのは、今から56年前のこと。当時、市内の中学校で特別支援学級の教員をしていた川田昇さんと9人の生徒が中心となり、2年がかりで開墾。その後、川田さんは“こころみ学園”を創設し、ワイン造りを始めました。ワイン造りには学園生も参加しています。
学園生「仕込みもやるもんね。9月から」
小山キャスター「仕込みというのはなんですか?」
?原さん「ワインにする前の悪い実といい実をわけたりとか」
小山キャスター「先生が教えて皆さんやられるんですか?」
?原さん「みんなでコンテナを開けたりとか」
毎年、夏から秋にかけて行われるワインの仕込みでは、学園生が活躍します。
次に訪れたのは、醸造場。責任者の柴田さんに案内してもらいました。
小山キャスター「これタンクですか。こんな大きいんですね」
柴田さん「8500リットル入るタンクです」
こちらのワイナリーでは13の大型タンクで醸造し、年間120トン以上のワインを生産しています。全国の契約農家のブドウも集まり生産されるワイン。年商は7億円を超えます。ブドウ畑のふもとにあるワインショップでは、ここで生産されたワインの飲み比べができます。
柴田さん「こちらは足利呱呱和飲(あしかがここわいん)というワインです」
学園生が育てたブドウが使われている白ワイン。小山キャスターが試飲してみました。
小山キャスター「いい香りなんですね。いただきます。(飲んでみて)飲みやすい!スッキリしてる感じですね」
この白ワインは、成田空港にあるJALのファ−ストクラスラウンジでも採用されました。
創設から40年以上たった“こころみ学園”では、この施設で生涯を過ごす人が多く、高齢化が進んでいます。現在、ここにいる大半は60歳以上です。中には、山のブドウ畑での作業が体力的に厳しいという人もいます。そのため、足腰への負担が少ない平地のブドウ畑を増やしました。また、他の企業から簡単な食品の加工を請け負うなどの対策もすすめられています。施設長の越知さんはこう語ります。
越知さん「かつてここで一生懸命仕事した人たちがちゃんと年をとって、それを若い人たちが見て、優しさを引き出す気持ちを芽生えさせてくれるのは、高齢になって動けなくなった人の役目だなと…」
「取材に行って印象的だったのは、知的障害のある皆さんがお互い支え合いながら汗をかき、笑顔で働いている姿でした」と語る小山キャスター。施設長の越知さんによると「同情から買ってもらえるのは1回だけで、本当においしいワインじゃないと続かない」とのことです。
< 2014年8月28日 18:54 > 日テレNEWS24