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家族対象にアンケート 精神障害者の生活実態

 和歌山県内の福祉関係団体が精神障害者の家族を対象に精神障害者の生活実態について調査し報告書にまとめた。回答した家族の多くが高齢化しており、病気など将来への不安を抱えていることが分かった。団体は結果を基に、精神保健福祉の啓発普及の重要性や訪問支援の必要性など10項目を提言、行政などに働き掛けることにしている。


 調査は、県精神保健福祉家族会連合会や県共同作業所連絡会など、福祉関係団体でつくる「家族対面調査研究プロジェクト検討委員会」が、2010年7月から11年6月にかけて、県内精神障害者の家族66人を対象に対面で聞き取り調査した。

 報告書によると、精神障害者と回答者の関係では母親が多く、回答者のうち60代以上は48人で全体の73%を占めた。精神疾患では統合失調症と答えた人が57人で最も多く、次いでうつ病が3人。病名を聞いていない、不明と答えた人もいた。

 精神疾患について初めて精神科で診断を受けた時に、その精神疾患の知識がなかったと回答した人は47人で、十分な知識を得るまでに6カ月以上かかった人は43人で半数以上を占めた。

 現在受けている医療サービスに対しては53人が満足していると回答。医療への要望(複数回答)では「夜間や休日など急変期の対応」が29人、「回復の見通しの説明」が24人、「現状の病状の説明」が22人で多かった。利用している福祉サービス(同)は「作業所や通所施設」が28人、「地域活動支援センター」が10人いた一方で、「利用していない」人は17人だった。

 日常生活で感じる今後の不安に関する質問(同)では、「家族の高齢化」が54人、「家族の病気」が40人、「死別や別居などによる家族構成の変化」が28人で上位を占めた。

 調査では、選択式の質問以外に意見を聴取しており、報告書に「家族の声」として掲載している。「発症時は精神疾患という知識がなく、近所への罵声や家族への暴力といった行動に混乱し、おびえた生活を送った」「親が亡くなった後、本人の病状が急変した時に対応してくれる機関が欲しい」「時には本人と離れて気の休まる場所があればと思う」「気軽に相談できる窓口が欲しい」などの意見約300件を紹介している。

 プロジェクト検討委員会は報告書を約千部作成。全国の家族連合会や自治体、福祉医療関係機関に配布・説明して、理解の促進や制度改善に向けて働き掛けている。

 委員会の大畠信雄委員長は「精神障害者家族の多くが孤立し悩んでおり、悩みを抱え込まないような支援体制が必要。少しでも多くの人に精神疾患について理解してもらいたい」と話している。

 同委員会は一般向けに1冊500円で報告書を販売している。問い合わせは大畠委員長(090・7343・8391)へ。



【精神障害者の家族を対象に聞き取り調査した内容をまとめた報告書】

紀伊民報-(2012年12月18日更新)

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