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Channel: ゴエモンのつぶやき
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聴覚障害者の闘魂リング 健聴者とファイト 手話でアピール

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 聴覚障害のある人たちがプロレスのリングで戦っている。障害の壁で阻まれたレスラーになる夢を四十年越しでかなえた還暦超えの選手、憧れの選手と同じコスチュームでなりきる選手。観客も手話で応援する。障害があっても舞台に立てる。そんな姿を障害がある仲間に見てほしいという。 (堀祐太郎)


 「次は引退を懸けて勝負だ!」。二〇一〇年十月の興行。額を血に染めた選手が会場に悲壮な決意を示す。アピール手段は手話。脇でリングアナが通訳してマイクで訴える。


 聴覚障害者プロレス団体「HERO」(本部・東京都中央区)の興行で、聴覚障害のある選手が大見えを切る際のおなじみの光景だ。


 試合は、団体に所属する聴覚障害者の選手五人が、障害というハンディのない健聴者のプロレス団体の選手らに挑むのが基本。観客の八割は聴覚障害者。


 「戦う姿を障害がある仲間にみてもらい自信を持ってほしい」。団体の看板・ヤミキ選手(62)はそんな思いでリングに上がる。大技が決まると、観客は頭上で手をひらひらさせる手話で喝采を送る。


 ヤミキ選手は二十一歳の時、アントニオ猪木さんが立ち上げた新日本プロレスに練習生として入門。障害を不安視され、けがをすると練習に呼ばれなくなり一年ほどで去った。〇五年ごろ、別の障害者プロレス団体にレフリーなどで関わり、再びレスラーになりたいと思うように。


 プロレスの団体運営の仕事をするようになった長男で、現在団体代表の佐藤剛由さん(34)を誘い、一〇年二月に「HERO」を旗揚げした。


 「プロレスに障害は関係ない」と言い切るが、苦労は尽きない。大会前、健聴者のレスラーに手話で指示すると、ジェスチャーで指を指されたのが気に入らず、「おれに指図するのか」と怒られた。


 代表の佐藤さんも旗揚げ時からずっと配送のアルバイトを続けながら活動資金を捻出。手話スタッフを確保するのにも奔走した。


 憧れのプロ選手、天龍源一郎さんに似たコスチュームで戦う友龍(ともりゅう)選手(41)はリングの上での苦労を打ち明けた。「耳が聞こえないために死角からの攻撃に対応できず、怖い思いをする」


 選手たちは、会社勤めで練習時間の確保もままならない。支えは、ファンとして味わってきたプロレスの感動を、レスラーとして与えたいという熱意だ。プロレスは、ピンチを脱して勝利したり、時には負けたり。友龍選手は「ストーリーが続くから心を動かされる。障害者が強い人に立ち向かうからこそ、与えられる感動もあるはずだ」と話した。


 十六日に新木場1stRING(江東区新木場一)で、昨年五月以来の興行「HERO7」を開く。問い合わせは主催のNPO「日本聴覚障害者エンターテイメントサポート」=ファクス03(6868)6819=へ。

<聴覚障害者プロレス団体「HERO」> 2010年の旗揚げ以降、都内を中心に6回の興行を開催。レスラーの手話をアナウンサーが通訳したり、聴覚障害者の観客向けに、健聴者レスラーのマイクアピールをリング脇のスタッフが手話で通訳する。他にも、足が不自由な障害者のプロレス団体などがある。


アピールする選手の横で手話で通訳するスタッフたち=2010年5月、東京都江東区で(日本聴覚障害者エンターテイメントサポート提供)

東京新聞-2013年2月15日 夕刊

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