視覚障害者柔道のワールドカップは22、23両日、トルコ・アンタルヤで行われ、女子57キロ級でリオデジャネイロ・パラリンピック銅メダルの広瀬順子(伊藤忠丸紅鉄鋼、愛媛県松山市在住)が金メダルに輝いた。夫の悠(同)は男子90キロ級で7位に入った。
女子57㌔級で金メダルに輝いた広瀬順子(左)と男子90㌔級で7位の夫の悠
2018年4月24日(火)(愛媛新聞)
視覚障害者柔道のワールドカップは22、23両日、トルコ・アンタルヤで行われ、女子57キロ級でリオデジャネイロ・パラリンピック銅メダルの広瀬順子(伊藤忠丸紅鉄鋼、愛媛県松山市在住)が金メダルに輝いた。夫の悠(同)は男子90キロ級で7位に入った。
女子57㌔級で金メダルに輝いた広瀬順子(左)と男子90㌔級で7位の夫の悠
2018年4月24日(火)(愛媛新聞)
ドコモ子会社の取り組みを訪ねる
発達障害の人たちが職場に増える――。そんな法改正が行われたことを知っているだろうか?
2018年4月から障害者雇用に関しての法律が改正され、その中の1つとして、「精神障害者の雇用義務化」が始まった。
「障害者雇用促進法」では、障害者の雇用義務が事業主にあるが、これまでその対象とは「身体障害者」と「知的障害者」に限られていた。今回から適用される「精神障害者」の対象は、精神疾患を抱えるすべての人たちとなる。中でも、外見からはわかりにくい障害である「発達障害(自閉症スペクトラム障害、学習障害、注意欠如多動性障害等)」が対象者に入り、大きな注目を集めている。
2011年に改正された「障害者基本法」により、「発達障害」は「精神障害」の一部として位置づけられた。ただし、知的遅れのない発達障害者の場合は、幼少期に障害が見過ごされやすく、大人になってから「就職先で職場になじめない」「仕事ができない」といったことで、本人や周囲が障害を疑い、医療機関を受診して初めて「発達障害」という診断が下されるケースも少なくない。
「発達障害者」の雇用と活用東京都豊島区東池袋にある「株式会社ドコモ・プラスハーティ」(以下、プラスハーティ)を訪ねてみた。NTTドコモグループの特例子会社で、業務内容はドコモグループ各社のビル清掃業務をメインとしている。
「特例子会社」とは、文字どおり特例として、会社の事業主が障害者のための特別な配慮をした子会社のこと。障害者の雇用の促進、および安定を図るために設立するものだ。
2018年4月、常時雇用している労働者数が50人を超える会社での障害者雇用義務の「法定雇用率」は、2%から2.2%に引き上げられた。また、2021年3月末までには2.3%に引き上げていく計画になっており、各企業は早急な対応に迫られている。しかし、機械的に法定雇用率が上昇していけば、障害者の採用で苦戦を強いられる企業が増えて、結果として未達成企業の割合が高まることが懸念されるのではないだろうか。
さらに、いままでの「身体障害者」「知的障害者」に加えて、「精神障害者」も雇用義務の対象となり、今年の4月からは「精神障害者」が算定基礎の対象に加わった。ちなみに「発達障害」は精神障害に含まれているため、今回から対象になる。
プラスハーティは、重度の知的障害者を中心に採用するとともに、グループ各社の障害者雇用・定着を支援するために設立された。ほかの企業では雇用が難しいという方たちを採用している。
その背景には、「個人ではなくチームで取り組めば、さまざまな作業が可能になる」というコンセプトがあるという。また、同社ではほかの会社が障害者雇用をしていくうえでのサポート業務も行っており、本人や上司、同僚などに対してのグループ会社の相談窓口も作っている。
そこで業務運営部担当部長の岡本孝伸さん(46)に、発達障害者の雇用と活用について、話を聞いてみた。岡本さんは2009年から他社の障害者雇用に感化され、働く意思のある知的障害者に働く場を創り出すことをライフワークにしようと決意し、社内の障害者雇用に携わることになったそうだ。今では、発達障害支援に関する学会で発表するまでに詳しくなっているスペシャリストだ。
障害者のイメージをどう変えていくか
「今まで『あうんの呼吸』で仕事をしていた会社の中で、発達障害という配慮が必要な人が入ってくるとなると、障害者と接したことのない多くの社員は、できれば避けて通りたいというのが本音だと思います。障害者という言葉はものすごく強烈なもので、それぞれが勝手な物語やイメージを作り出します。これから会社としてやるべきことは、障害者のイメージをどう変えていくかということです。みんなステレオタイプのイメージだけで、実は具体的なイメージを持っていませんから」(岡本氏)
見た感じでは一般人とまったく変わらないのが、知的発達の遅れがない「発達障害者」だ。特出した才能の持ち主も多いとされているが、実際、アスペルガー症候群を含む「自閉症スペクトラム障害」は、コミュニケーション能力や、社会的な関係を作る能力、応用力などに偏りがあるといわれてる。
プラスハーティ業務運営部主査の金山俊男さん(59)は、障害者雇用や育成に携わる中で、自分が知的な遅れがなく、対人関係の障害が比較的軽度な自閉症スペクトラム障害のカテゴリーに含まれる「アスペルガー症候群」、その他に「軽度のADHD(注意欠如多動性障害)」であることがわかり、60歳手前になって、これまで抱えていた違和感の理由がわかったという。
金山さんは、重度身体障害でもあり、歩行障害も含めいくつかの障害があるところに、「発達障害」が加わったのだ。
現在はプラスハーティで、自らの経験を踏まえ、雇用者が実力を発揮しやすく、また、周囲の理解が深まるようなマニュアル作成等を中心の業務として、日々職務に精励している。社会に出て40年近くなる金山さんは、他者とのコミュニケーションが難しいという状況の中、これまでどのような方法で仕事や人間関係に向き合ってきたのだろうか。
「正式に発達障害の診断をもらったのは2016年の秋です。検査した結果、発達障害がかなり強く出ている数字だったのですが、病院の先生は『よくこれで今までやってきたね』って言っていましたね。自分の場合は年を重ねるごとに学習していきました。発達障害とわかってからは、『あ、これはもう自分でコントロールすればいいんだ』と割り切ることができました」(金山氏)
金山氏は「こうすれば自分の気持ちが荒れなくて済む」という、落ち着く術を日々の仕事の中で覚え、自らの「取扱説明書」を作るように処世術を学んでいったという。
「今は穏やかに仕事に取り組んでいます。マニュアル作成のような仕事は、アスペルガー症候群にとっては実力を発揮することができます。また、自分で『自分で納得するまで追求しなくても、この段階で終結していればいい仕事なんだ』ということをコントロールできるようになりました。初めてのところに行ったら、『あー、ちょっとあの人変わってるな』と思われる程度に自分を抑えるようコントロールをしています」(金山氏)
従来は「身体障害」が中心だった雇用に、「発達障害」の人が入ってくるということで、企業としても今までのマネジメント手法では確実に追いつかなくなってきている。
障害者雇用は、基本的には障害者手帳を持っている人のみが対象となる。発達障害の診断を下されても、手帳を持っていない人もいる一方で、自分から会社へはなかなか言いづらい状況もあり、認知されていないケースもあるとのことだ。
「私の場合は、目標になる上司がいたわけですよ。非常にかわいがってくれたんです。懐が深く、いろいろなことを教えてくれたんですね。だからその人の下にいたりその人としゃべれているうちは、穏やかに過ごすことができましたね」(金山氏)
多様性に対応できる組織づくりそんな中、プラスハーティは、金山さんのような自ら障害を抱える社員がほかの社員をサポートしていることもあり、安心して仕事ができる環境づくりが可能だとのことだ。
「アスペルガー症候群の方は集中力に長けているところもあり、職種によってはイノベーションを起こす可能性もあります。そういった人を活かすことができないのはもったいないと考えます。そうした人材を活かせなければ、結局は組織マネジメントがうまくできていないということになります。
今の組織はすでに出来上がったものを維持することに長けた人たちが大勢を占めています。この状況を打破するためには、常識にとらわれない発想ができる人や、さまざまな部分で振り切っている人たちが、しっかり力を発揮できる環境が必要であり、そういう受け皿を作っていかなければならないと思っています」(岡本氏)
岡本氏は、発達障害などの個性を持つ障害者の人が組織の中で力を出せずに評価が下がってしまうのは、企業にとってもマイナスだと考えている。イノベーションを起こすためにも、うまくマネジメントしていく能力を持っている人が管理職になれば、会社にとってもプラスになるのではないかと述べている。
NTTドコモという巨大企業の未来は、こういった多様性に対応できる組織づくりの成功がカギを握っているのかもしれない。
2018年04月24日 東洋経済オンライン精神障害者の家族会で構成する全国精神保健福祉会連合会(本條義和理事長、通称=みんなねっと)は13日、大阪府寝屋川市、兵庫県三田市で精神障害者が自宅で家族により長期間監禁された事件が発覚したことを受け、見解を表明した。家族が社会から孤立し、ストレスを抱えているとして、医療アクセスの改善などが必要だと訴えた。
監禁事件の背景に、「治療を受けることへの抵抗感」「周囲から隠そうとする心理」「病状が悪化したときにとる手段がほとんどないこと」があったとみている。
寝屋川の事件では統合失調症の女性(33)が10年以上監禁された末、昨年末に死亡。三田の事件では精神障害のある男性(42)が20年以上監禁され、今年1月に福祉施設に保護された。
同連合会が4月3日に公表した全国調査によると、日中、家にいて何もしない精神障害者が2割いること、家族の7割が日常的にストレスを抱えていることが分かった。
同連合会は調査結果を踏まえ、「訪問型の支援・治療サービス」「24時間・365日の相談支援体制」「家族に対する適切な情報提供」など、7項目を実現するよう提言している。
調査は精神障害者とその家族にどのような支援が必要か把握するため、2017年10~11月に実施。家族会員7130人に調査票を送り、3129通の回答を得た(回収率44%)。回答者の平均年齢は69・3歳。その85%は精神障害者(平均年齢45・3歳)の親の立場で答えた。
同連合会による全国調査は09年以来、8年ぶりのこと。調査結果の概要は、同連合会のホームページで閲覧できる。報告書は有償頒布する。
2018年04月24日 福祉新聞編集部
――“差別撤廃”か“部分的権利保障”か
昨年、障害学会でシンポジウム「障害、介助、セックスワーク」(2017年10月28日、於神戸学院大学)が行われました。シンポジウムでは、障害者の性の問題をめぐって、障害当事者だけでなく、セックスワーカーの社会的な位置づけを踏まえて議論されるべきであるという問題提起がされました。
そこで、ホワイトハンズという団体が行っている「身体障害者を対象にした射精介助」に対して、障害当事者、障害学研究者、福祉関係者から批判が出されました。(※1)本記事では、射精介助をめぐる問題やこれまでの障害者の性に関する論点を解説しながら、ホワイトハンズのような活動の何が問題とされているのかについて説明したいと思います。
1.障害者の性のノーマライゼーションの考え方
障害者の性のノーマライゼーションの運動、議論、実践、支援の歴史は、他のさまざまな課題についての障害者運動、ノーマライゼーションの歴史と同じくらい長いと言えます。これまで障害当事者たちは性に関して、差別撤廃に関する普遍的な考え方にもとづいた問題提起をし、実践や支援のあり方を模索、開発してきました。
それがどのようなものかを説明する前に、最初に“ノーマライゼーション”の概念と、障害当事者たちが語ってきた普遍的な問題提起を押さえておきたいと思います。
ノーマライゼーションについては、「障害を持つ人も高齢者も子どももすべての人が特別視されることなく、同じように社会の一員として、当たり前の個人として、社会生活に参加し、行動することができ、また日常の生活においては、障害を持つ人たちのさまざまな欲求が障害を持たない人と同様に、ごく自然に満たされていくことが当然であるという考え方である」、という説明をここでは採用します(※2)。
この考え方を障害者の性の権利にも当てはめて考えることが、「障害者の性のノーマライゼーション」ということです。ここで重要なのが、「障害者の性に、社会の性規範や慣習的な性を投影しないこと」。これは長年、障害当事者たちから異口同音に主張されてきたことです(※3)。
障害者の性は、この社会の性規範である、家父長制、異性愛主義、健常主義から疎外され、“規格外”の性とされてきたことで、スティグマ化、不可視化されてきました。性器中心主義や、射精・オーガズム至上主義といった、この社会に存在する性にまつわる“正解と基準”は、障害のある人や、“正解と基準”に合わない多くの人を苦しめています。
健常者において、性的欲求や性活動は多様であるのと同じく、障害者にとっても多様であり、一律に「こうであるべき」との規範は、つねにそこから外れる人たちを生み出し、スティグマを与えます。
健常者の中には、性愛の対象が異性ではなく、同性に向く人がいます。それと同じく、障害者にもいます。同性も異性も対象になる健常者がいるのと同じく、障害者にもいます。また、自分の親と同じくらいの年齢が対象になる健常者も障害者もいます。罵倒されたり、ムチで打たれることで初めて性的興奮を得られる健常者も障害者もいます。靴やストッキングに性的興奮を覚える健常者も障害者もいます。三次元ではなく二次元にしか対象が向かない健常者も障害者もいます。こういった性的欲望が一切ない健常者も障害者もいます。
このようなさまざまな欲望があっても、それらを日常生活で満たすことが難しい人たちがいて、その欲望を性風俗産業やポルノ産業がすくいあげています。さまざまな障壁により行動を制限されている障害者にとっては、健常者以上にそれらの産業が提供するサービスは重要性が高い。性風俗産業やポルノを否定する性規範は、とりわけ障害者が性を選択する自由を侵害するものと言えるでしょう。
この障害者の性のノーマライゼーションの理解は、自分がどれだけ世の中のセクシュアリティの多様性を理解しているか、つまり私たちのセクシュアリティ観が問われる問題です。したがって、障害の有無に関係なく、すべての人が自分を軸にした性の楽しみ方を持てることが、長年の議論がたどり着いた性の権利の考え方です。
障害者の性の権利に関して国が普及啓発しているものでは、2002年厚生労働省が、世界保健機関(WHO)が採択したICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)を翻訳し、「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(※4)としてWebで公表しています。「身体障害者の性活動」(玉垣努・熊篠慶彦編)の執筆者の一人である田畑雄吉氏は、このICFの中から障害者の性生活に関わる項目をピックアップして表にまとめています。
近年、障害者総合支援法(2013年施行)や障害者差別解消法(2016年施行)ができましたが、このICFが普及する兆しは見られません。そのため、介助者や作業療法士など福祉関係者が、障害者のセクシュアリティについての間違った考え方に気づいたり、環境的・人的課題や支援について学ぶ機会もないのが実情です。
現在、障害者の性を支援する代表的な団体が、冒頭で触れたホワイトハンズと、もうひとつノアールです。しかし、両者はとても対照的な団体です。ふたつを比較することで、障害者の性についてさまざまな気づきがもたらされます。以下に、ノアールとホワイトハンズの支援プロセスごとの理念と実践を照合したものを解説します(リンク先PDFファイルを開くと比較表が見れます)。
2.障害者の性を支援する、ノアールとホワイトハンズの違い
性の支援の目的で問われる理念【ノーマライゼーション】
まず2団体について簡単に紹介します。
ノアールは、脳性まひの身体障害者の当事者である熊篠慶彦さんによって、2004年に設立されたNPO法人です。
ノアールの活動は、身体障害者のマスターベーション介助に伴う「中間支援」や、身体状況に合わせた必要最低限度の支援、そのための環境コーディネートなどを行なっています。また、身体障害者の性の支援の専門書『身体障害者の性活動』(2012年)の発行などを通じて、障害者のセクシュアリティ支援の普及を行ったりしています。昨年、熊篠さんがモデルになった映画「パーフェクト・レボリューション」(リリー・フランキー主演)の公開が話題になったことでも有名です。
ノアールの活動目的は、「性に関する問題を中心に、障害者に様々な情報を提供したり、障害者自らが自己選択・自己決定に基づき自由なライフスタイルを選択することができるように支援する環境や斬新な仕組みを作り、また社会一般の人達の理解・協力を得るための情報発信事業を行うことにより、障害者が真に公平な社会参加を実現し、生きる勇気や希望に満ちた人権生活を確立すること」(ノアール設立趣意より)です。
一方、ホワイトハンズは、健常者の坂爪真吾さんによって2008年に設立され、2011年に一般社団法人化された団体ですが、設立前の2007年に性風俗店としての営業許可を取得しています。
ホワイトハンズは、「新しい性の公共」を掲げ、障害者の性、高齢者の性、不倫、セックスワーク、JKビジネス、童貞・処女、セックスレスの問題など、性にまつわるテーマであればなんでも扱っています。近年、「風俗嬢を福祉に繋ぐ」をテーマに活動する風テラスというプロジェクトが多くのメディアで取り上げられたことでも有名で、セックスワークや、障害者の性に関する著書も出版されています。
ホワイトハンズによる障害者の性の支援では、“射精・勃起機能が正常な”重度身体障害者男性のみを対象に、「女性ケアスタッフ」が手袋をした手で性器を刺激して射精させる(手コキ)「射精介助」の活動をしています。この活動の目的は、「射精介助による、障害者の性に関する尊厳と自立の保護、定期的な射精介助による性機能の健康管理」で、射精介助は、「性的な快感の『最大化』を目的とする介助ではなく、『性機能の健康管理』という目的を達成するための、性的な快感の『最適化』を目的とするケア」だとされています(※5)。
ノアールとホワイトハンズの違いを簡単に説明すると、ノアールは障害者の性の権利に関して“差別撤廃”と5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように)にもとづく支援を目指す障害当事者主体の団体であるのに対し、ホワイトハンズは、障害者を差別する社会のありようは前提とした上で、健常者とは違う障害者(主に異性愛男性)の性の“特別な固有の限定的/部分的権利保障”(エロなし・手コキ射精のみの支援)をする非当事者主体の団体だと言えます。
ノアールには、障害者が健常者と同じような性の権利が保障されない社会編成自体を問い返す視点がありますが、ホワイトハンズは、障害者がエロから排除される社会的必然を前提とした“障害者固有の性の権利”であるため、“差別撤廃”を目的とはしていません。どういうことか、さらに具体的にみてみましょう。
性に関する支援で大事なこと【関係構築とテクノロジーの推奨】
従来、障害者の自立生活を進める運動においては、(1)障害者と介助者との関係やせめぎあいを大事にしてきた面と、(2)たとえばエレベーターや福祉機器など、障害者が介助者を使わずにすむテクノロジーを推奨してきた二つの面があります。これは、障害者と介助者のよりよい関係を模索しつつ、一方で、障害者自身でできる領域を広げるためです(※6)。
ノアールの障害者の性の支援内容は、こうした障害者の自立生活運動のアドボカシーと方向性を同じくしており、なるべく障害者自身の手でマスターベーションをしたり、自助具の利用動作を行なうことを基本姿勢とし、自助具の開発や改良(※7)、環境コーディネートといった「中間支援」を重視しています。
マスターベーションをする環境の整備に関してであれば、「たとえば、マスターベーションはできるがパンツの上げ下ろしができない障害者のパンツの上げ下ろしをする支援、性器のある場所まで手を持っていくことができない障害者の手をその場所まで持っていく支援、性器を握ることはできるけど腕を動かすことができない障害者の腕を動かせる支援など」です(※5)。
性の支援の対象で配慮すること【当事者分断の回避、勃起/射精中心主義からの自由度】
一方、ホワイトハンズのサービスではこうした「脱・手助け幻想」(中間支援)は踏まえず、まず女性ケアスタッフの手コキによる射精介助ありきとなっています。そのため、ノアールのように障害当事者にサービスを合わせるのではなく、ホワイトハンズのサービスに当てはまる障害当事者だけが利用できるというスタイルです。ホワイトハンズは福祉団体の体で活動していますが、このスタイルは、福祉の理念とはむしろ真逆だと言えるのではないでしょうか。
では、ホワイトハンズのサービス対象者はどのようになっているかというと、勃起・射精機能のある脳性まひと神経難病の男性障害者のみに限っていて、勃起や射精が困難な人、またはコントロールが難しい人が多いと言われている脊髄損傷・頚椎損傷、高次脳機能障害の人たちはサービス対象外となっています。しかし実際には勃起や射精機能には個人差があったり、たとえ勃起しにくくても性欲や快感はあったりします。
こうしたサービスのあり方は、勃起と射精機能の正常/不能をめぐる既存のセクシュアリティ観を強化し、障害の種類の中でさらに差別する意識や劣等感、当事者分断を生じやすくします。
当事者分断というのはどういうことかというと、部分的な課題解決や、限定された当事者だけが助かったり認められたりするような解決策をとることで、それによって恩恵を受ける当事者と、そうでない当事者が出てきてしまうということです。そして、このような解決策に賛成するか反対するかの立場で当事者が対立し、分断が起きやすくなってしまうのです。
性の介助者への研修と当事者のニーズ把握が目指すもの【ノーマライゼーションの理解と普及、言語化/非言語化ハラスメント対策】
ノアールでは、介助者への研修や、利用者の身体状況と個々のニーズのアセスメントなどを通じ、既存の障害者観の払拭に努めています。また、障害の種類に関わらず、性規範外の多様な性的欲望・快楽の実現可能性を模索・支援します。
「障害者は手助けしなければならない」という手助け幻想を排除する介助原則の徹底は、介助に関わる人に、障害の社会モデルやノーマライゼーションの実践プロセスを学ばせることで、社会的弱者の弱みにつけ込む金儲け目的の人物や事業を見分ける力を養い、結果、弱者ビジネスの参入を防ぐことにも繋がります。
また、利用者のニーズ把握としてノアールが行う事前のケアプラン作成は、双方向コミュニケーションを充実させています。これは、当事者のニーズを介助者が勝手に自分の解釈で言語化したり、または本来のニーズを言語化せず、ハラスメントになることの防止対策にもなります。
AV視聴等、自慰行為の関連サービスの有無で問われる問題【性の管理度】
なくすべき障害者観、または障害者の性のバリアフリーの障壁の一つとして、「障害者はエロいことをしないし、考えたりしない」という障害者の無辜(むこ)イメージがあります。
ホワイトハンズが、実際は性風俗店として届け出を出している障害者向けのデリヘルでありながら、自らの団体を性風俗店とは言わず、「介護行為」をしている福祉団体というような見せ方で宣伝しているのは、まさにこの障害者の無辜イメージを裏切らない事業展開をしようとするからではないでしょうか。
つまりホワイトハンズは、ノアールと違い、エロを一切排除したかたちで手コキ射精介助サービスを行なっているというわけです。たとえ利用者が「アダルトビデオの視聴やエロ本の閲覧をしたい」と望んだとしても、(性風俗店であるにも関わらず、)「性的興奮を喚起するものは原則禁止」としています。そのためもちろん、手コキをする女性介助者は服を着たままで裸になることはなく、利用者が体に触れることも禁止しています。エロから障害者を排除するかたちでの射精介助という、“特別支援”、だから福祉フレームの強調となるわけです。
こうして健常者の性のあり方との差別化を図り、エロや性風俗に対する社会的反発・人々の嫌悪感をうまくかわし、“障害者の性の自立や尊厳を守る”、“性機能の低下防止”という普遍的な言葉をまとうことで、実態は障害者の性の自己選択を狭めるかたちであっても事業を行うことができていると言えます。これがあまり大きな人権問題に発展せずにやっていけるのは、まさに私たち、この社会がいかに障害者差別社会であるかの証左です。
ここで、「ホワイトハンズの射精介助を受けた障害当事者が約10年間に667人=1年間に66.7人=ひと月に5~6人(2018年2月8日現在)いるのだから、エロから切り離しても実際のニーズがあるじゃないか」と思われる方もいると思いますが、それだけで結論づけるのには一考の余地があります。
一般的に、男性器を持つ人がマスターベーションをするとき、いつなんどきも最初から性器を手で刺激することに直結する人も中にはいるかもしれませんが、実際にはいろいろな人がいて、「エッチな動画を見たい」「ラブドールや大人のおもちゃを使ってオナニーしたい」「胸を刺激して感じたい」「チャットで興奮したい」など、やり方が各々あり、それはその日の気分で変化もするでしょう。
そう考えると、射精介助を受けたいと思った人は約10年間にたった667人しかいなかったという見方もでき、それ以外のほとんどの人たちは、射精介助のような、性的興奮を喚起するエロ禁止のサービスなんて受けたくないと思っているという見方もできます。
だとすれば、ホワイトハンズのサービスを受けたことがある人は、射精介助以外に他に選択肢がないから仕方なくサービスを受けた人たちなのかもしれず、これを考慮せずに射精介助はニーズがあるというのは問題があります。
女性の性の支援、同性介助原則で配慮すること【セクシュアリティ理解度、ジェンダー平等度】
「性的興奮を喚起するものは原則禁止」を掲げる“性介助の福祉団体”(でありながら届出済の性風俗店)ホワイトハンズが抱える自己矛盾の一つに、同性介助が原則ではないことがあげられます。障害者介助は通常、(セクシュアルオリエンテーションに配慮した)同性介助が基本です(高齢者介護の世界では未だ同性介助が徹底されているわけではありません)。
サービス対象となっている男性障害者に対して、手コキ射精介助をするスタッフも、スタッフ募集の条件も女性に限定されており、ホワイトハンズでは、女ジェンダーの利用はサービス提供に欠かせない要素となっています。
手コキ行為自体は女性にしかできない行為ではないので、ホワイトハンズのサービス提供方針に従えば、女ジェンダーを利用する必然性はないはずですが、ホワイトハンズが女性スタッフによる手コキにこだわるのは、利用者が女性の手コキスタッフのことを性的に見て射精するのはありだという考えからだと推測できます。
このことからも、「性的興奮を喚起するものは原則禁止」という事業の建前が信念でも何でもなく、ただ単にそれが世間の見方に対する過剰な配慮からきており、世間の見方よりも一番配慮するべき障害当事者に無理や我慢を強いることになってしまっていることがうかがえます。
またホワイトハンズは、女性障害者へのサービスはなく、現在検討中として、「女性向けに『分泌介助』(ローションを使用したハンドサービスにより、膣内及び陰部周辺に刺激を与え、『性機能の低下予防』という目的を満たす程度の分量(分量の目安は検討中)の膣液を分泌させるというもの)を考案」しているそうですが、女性障害者から団体への問い合わせがほとんどないことを理由に、「(女性障害者の)当事者は特に苦しんでおらず、周りが勝手に騒いでいるだけ」(※8)との見方を示しています。
一方、ノアールでは、トランスジェンダーなど利用者のセクシュアリティに応じて配慮する旨明記され、性の支援は女性も対象となっています。
女性障害者の性の権利に関しては、男性障害者よりも取り組まれてきていない問題が指摘されて久しいです。この問題は、健常者の女性たちの多くが自分本位の性の楽しみ方ができない問題と表裏です。近年、女性向けAVやレズ風俗ブーム(ヘテロセクシュアル女性客の需要)でようやくその内実が明るみになってきました。
こうした性文化の発展は、女に押し付けられた性規範である、家父長制、異性愛主義、性器・射精中心主義の性文化に無理に合わせることはない、という気づきを女性たちに促しています。女性たちの中のさらにマイノリティの女性たちのセクシュアリティの多様性にとって、ジェンダーニュートラルでユニバーサルデザインのセックスエンターテイメントのコンテンツ需要の可視化はとても重要なのです。
活動のパブリシティのあり方が強化してしまわないように気をつけること【障害者の性の有徴化】
社会の人々にどのようにして、障害者の性の権利や性活動の支援への理解を広めていくかを考えるときに、「社会が当事者の実状や声に合わせていきましょう」という方向性と、「社会に認めてもらえる当事者や支援にしていきましょう」という方向性があると思います。
前者の場合、当事者のニーズと問題提起があって、それに合わせて支援メニューがつくられますが、後者の場合、先に社会に支持される支援メニューをつくり、いかに批判されず、社会に媚びた当事者ニーズにするかという本末転倒なことが起こります。
「社会に支持される障害者の性の権利や性活動の支援」というのは、逆にいうと、「社会に支持されない要素を一切取り除いた障害者の性の権利や性活動の支援」ということになります。社会に支持されない要素とは何かというと、性イメージに付きまとう「いかがわしさ」です。ノアールとホワイトハンズの活動は、この「いかがわしさ」を社会に受け入れさせる闘いをするかどうかで、大きく方向性が分かれています。
ノアールは、「障害者もエッチなこともいかがわしいこともできる、健常者と同じ選択肢がある社会に!」と率直に問いかけ、ホワイトハンズは、「性機能の健康管理が大事で、定期的に射精する障害者ほど社会活動が活発で、自尊感情が高い傾向がある」というエロ以外の“有用性”を用いました。
ホワイトハンズが、ノアールのようにエッチなことを全面に出さずに訴えたのは、「これはエロではないし、いかがわしくない」というパブリックイメージでしか、障害者の性の問題を社会化できないし、公的な制度化(※9)もできないと考えたからでしょう。そうして、批判されない当事者の性のニーズとしての射精介助というわけです。
これにより、ホワイトハンズは「障害者の性の権利のためにすばらしい活動をしている」と、多くの「非当事者」から支持されました。弱者萌えコンテンツばかりをつねに貪るメディアや出版社とは利害が一致し、健常者とは違う「障害者の性」は有徴化されていきました。
一方、障害者団体や障害者コミュニティの中でホワイトハンズを知る人は少なく、「名前は知っているけど、どんな団体でどんなサービスをしているのかはよく知らない」と言う人がすごく多いのです。ホワイトハンズが当事者のニーズではなく、「社会に受け入れられる当事者ニーズ」に合わせてきたからです。
ここで、昨年の障害学会シンポジウムに参加していたある障害当事者の意見を紹介したいと思います。
「今までの障害者の性の権利の普遍的な議論や理念にもとづいた取り組みの積み重ねで切り開いてきたこのフィールドは、ホワイトハンズというブルドーザーによって、一気に更地にされた。そして、そのブルドーザーの尻馬に乗っかった人たちが今もたくさんいる」。
3.当事者のためと言いながら、支援者のためになってないか
最後に、ホワイトハンズがなぜ今まであまり問題になってこなかったのか、あるいはなぜ障害者の性の権利がこんなに進展しにくいのかについて書いておきたいと思います。
端的に言ってそれは障害者差別の問題と、セクシュアルライツが普及していないという問題の両輪が支えています。
前段で述べた、「いかがわしさ」を取り除くかたちでしか性に関することが社会に受け入れられないという問題を社会に問題提起するには、当事者が「いかがわしい性の享楽を認めよ」と言わなければいけません。ここからしてすでに当事者にとってハードルが高くなります。
いったい誰が、「もっと性活動の選択肢が増えるべきだ」と、顔と名前を出して言う勇気があるでしょうか。そのような勇気のある当事者はまだまだ少数派です。なぜなら乗り越えなければならないハードルと闘う対象が大きくて多すぎる。ましてや女性の当事者であれば、女性差別も加わって、「女なのにエッチに興味があるなんて、ハシタナイ」といった目で見られるでしょう。
一人暮らしをしたりして自立生活をしている障害者が多くなったといっても、自立生活センターに関わっていれば、女性障害者の仲間や女性の介助者、運動の支援者など、まわりの目を気にしないわけにはいきません。程度の差は地域にも拠りますが、障害者運動をしている人たちの中で、女性解放運動への理解や関わりがある人は多く、その中でも、性労働者のことを「救済されるべき気の毒な人々」と捉える人たちがたくさんいます。
そういう人間関係の環境で生きている人にとっては、性的サービスを受けたいとか買いたいと口にすること自体がタブーになるそうです。「性的サービスをする側の人権のことを一体どう考えているのか」と言われて糾弾されるからです(※10)。そうして罪悪感も内面化されます。障害者の性の問題が進展しないことについて、よく、「障害当事者から性に関する問題提起がないから」ということが言われますが、それにはこういった背景もあると考えられます。
このため、福祉ベースではない健常者同様の性の権利を求める障害者たちは、セックスワーカーの運動に希望を見出し、彼女/彼らにコンタクトをとり、連帯するようになるというのが世界的にみられる光景です(※11)。なぜなら、セックスワーカーもまた、「いかがわしい仕事」「働く人の人権が損なわれる仕事」「社会の犠牲者がする仕事」として社会に認めてもらえないことで闘っているコミュニティだからです。
セックスワーカーと障害者、互いの権利について社会的理解を求める連帯をすることで、「あなたの性活動を悪く思う必要はない」というメッセージを、それぞれの仲間の当事者たちに届け、少しでも勇気づけたいという思いで一緒に運動するのです。
そうすると今度は、セックスワーカー団体が、「セックスワークの仕事の社会的理解を得るために、障害者の性を利用しているのではないか」という批判を受けます。
このように、社会の私たちがやっていかなければいけないことというのは、障害者コミュニティの中での、セクシュアルライツやセックスワーカーの人権・差別についての理解の促進と、セックスワーカーコミュニティの中での、障害者の人権・差別についての理解の促進ということになります。同時に、今あるセックスワークにおけるさまざまな人権問題や労働問題も解決していかなければいけないということです。
もちろんこれは、セックスワークにおけるさまざまな諸問題が解決しなければ、障害者への性的サービスの選択肢を広げる事はできないという意味ではありません。セックスワーク/ワーカーに向けられる批判=資本主義の矛盾を一気に解消するような、「クリアな」セックスワーク/ワーカーということを追求しすぎると、今度はかえって新自由主義的な発想・路線に走るというのが近年の流行でつねなので、問題解消の愚直な取り組みとパラレルに進めていくしかないということです。
しかしながら、この点においてもホワイトハンズは、障害者への性的サービスの選択肢(※12)を広げ、社会の人々からセックスワークへの理解を得るためにも、批判されないセックスワーク/ワーカーというものをつくろうと6年前から政策提言をしています。
つまり、障害者の性のための射精介助と同様に、「社会から一切批判されないセックスワーク/ワーカーの条件を満たせば、風俗は人々に受け入れられる」という発想で、セックスワーカーの認証制度をつくろうという構想です。
具体的には、セックスワーカーの条件を、高卒以上の21歳~35歳以下とし、大学以上を優先採用、借金・精神疾患・服薬履歴のある人、売れなさそうな女性はあらかじめ不採用、ギャラは月給制にし、勤続3年以上は働かせない、さらに今ある風俗店の総量を50~100店舗に規制し、顧客もライセンス制にするというシロモノです(※13)。
ここ2、3年、ホワイトハンズが力を入れている、「風俗と福祉をつなぐ」風テラスという、風俗の現場にソーシャルワーカーなどが出向くアウトリーチ活動は、風俗に働きに来るべきではなかった人とそうでない人を振るい分けしていくことが必要だと人々に思わせるようなパブリシティとアプローチに見え、まさにこの構想の足掛かりとして懸念に足る事態となっています。
その象徴的な喧伝が、「知的障害者、精神障害者、発達障害、精神疾患の人などが風俗で働いている」とメディアや講演会で強調するセンセーショナルな煽りで、風俗に対する選民思想的な手立ての発想を駆り立てるのには十分なプロモーションとなっています(※14)。これがセックスワーカー認証制度に向けた伏線、風俗再編に繋がるロードマップとして、どれだけの人が先見性を持って見れているのでしょうか。
ホワイトハンズが提唱するような、社会から批判・心配される要素をすべてなくした完璧なセックスワーク/ワーカーになれば、障害者も誰もが何のおとがめもなく、のびのびと性サービスを利用することができるようになるのでしょうか。このような社会や人々の理解を得る努力を続けるお百度参りは、いつまで、どこまで続けなければいけないのでしょうか。
近年、社会規範による抑圧を受けるマイノリティの運動全般に共通する傾向として、人々にマイノリティについて理解してもらうことを目指しすぎるのはもう古いという認識が広がっています。時代は、「理解しあえないことを理解しあう」ということが大事、という流れになってきています。感性のある人々は、不可解とか異常行動に見えることをどう理解可能なものに書き換えるかという問題設定から降りているのです。
ただ問題は、障害者の性のことに関しても、セックスワーカーの問題にしても、議論や活動に関心を持つ人が少な過ぎることです。この記事を読んで少しでも関心を持ってくれたら、SNSなどでできれば感想を添えてシェアしてほしいと思います。そして、性と多様性をテーマに繋がっていけたらうれしいです。
(※1)私はそのときの報告をFacebookに投稿し、コメント欄にもたくさんの反響があったのでご覧ください。
障害学会シンポジウム 1 テーマ「障害、介助、セックスワーク」のFBレポート
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=10155663493584404&id=720854403
(※2)田畑雄吉「性のノーマライゼーションに向けて―言葉の定義を説明し、一般社会に理解してもらえるように」、玉垣努・熊篠慶彦編『身体障害者の性活動』(三輪書店、2012年、147頁)
(※3)・倉本智明編『セクシュアリティの障害学』(明石書店、2005年)
・石川准・倉本智明編著『障害学の主張』(明石書店、2002年)
・河原正実・谷口明広「『正常位』はだれが決めた?」、障害者の生と性の研究会『障害者が恋愛と性を語り始めた』(かもがわ出版、1994年、197頁)
・安積遊歩著『癒しのセクシー・トリップ―わたしは車イスの私が好き!』(太郎次郎社、1993年)
・熊谷晋一郎・熊篠慶彦ほか出演「障害者と性 ~共生社会のタブー~」日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2017の分科会、2017年11月18日、東京国際フォーラム)
(※4)「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(2002年厚労省翻訳)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0805-1.html
(※5)草山太郎「障害者への性的支援のあり方を考える 特定非営利活動法人ノアールの理念と活動を中心に」(2017年10月28日、障害学会シンポジウムで発表された草山氏の報告資料7頁)
http://maedat.com/jsds2017/program/symposium_1/
(※6)渡邉琢『介助者たちは、どう生きていくのか』(生活書院、2011年、206-207頁)
(※7)ノアールの性的自助具のプロトタイプ
http://www.npo-noir.com/?page_id=304
(※8)NEWSポストセブン「『性介護』NPO 女性向けサービスないのはニーズがないため」(2012年6月27日)
http://www.news-postseven.com/archives/20120627_119234.html(※9)ホワイトハンズ坂爪真吾blog「【2218日目】厚生労働省障害福祉課で、「障害者の性と生殖に関する権利の保障」に関する提言をしました」
http://blog.peachcare.jp/?day=20140415
(※10)「でも、ぼくたちはやりたい!―ソープランドに出かける障害者たち『2「メインストリーム」論争』」、障害者の生と性の研究会『障害者が恋愛と性を語り始めた』(かもがわ出版、1994年、143頁)によると、「討論会を企画したスタッフ側は、議論がソープ、あるいは売買春の是非に偏り、本来のねらいであった障害者の性はどうあるべきか、こんなふうに悩んでいるのにどうすればいいのか、というテーマから離れがちだった」という。
(※11)・台湾のセックスワーカー支援団体・日日春關懷互助協會(COSWAS)と障害者の連帯についてのレポート「セックスワーカーは場所を要求する! アジアセックスワーカーアクションワークショップ2015報告書」(SWASH発行、2016年)
http://swashweb.sakura.ne.jp/file/taipeiworkshop2015.pdf
・豪のセックスワーカー団体タッチング・ベースで、障害者にも健常者にも性的サービスを提供するセックスワーカーのドキュメンタリー映画「スカーレットロード」。自主上映会開催希望のお問い合わせはSWASHまで。公式パンフレットのダウンロード版も近日案内予定。
https://www.youtube.com/watch?v=meLvRr4fTBQ
(※12)要友紀子「『射精介助があるから解決』ではない!」(2017年10月28日、障害学会シンポジウムで発表した要の報告資料5頁)
http://maedat.com/jsds2017/wp-content/uploads/2017/09/171028symposium_1_要.pdf
(※13)「SEXWORK3.0」ホワイトハンズ発行、セックスワークサミット2012資料
(※15)「性風俗の世界を、司法と福祉の光で照らす『風テラス』」
https://inumimi.papy.co.jp/inmm/sc/kiji/1-1107739-84/
その他参考にした書籍、団体、映画、講演、レポート、関係省庁の資料等
・草山太郎(2011)障害者の性的サービスについて考える:ホワイトハンズの理念とサービスの検討をとおして 追手門学院大学社会学部紀要 5巻 1-21
http://www.i-repository.net/il/meta_pub/G0000145OTEMON_402110303
・結城康博、米村美奈、武子愛、後藤宰人著『福祉は『性』とどう向き合うか 障害者・高齢者の恋愛・結婚』(ミネルヴァ書房、2018年)
・「熊篠慶彦さん(2)きれいごとでごまかさず、取り組む…NPO法人設立」(ヨミドクター、2015年8月10日)
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20150810-OYTEW55116/
・障害者の性に関するスペインのドキュメンタリー映画「Yes, We Fuck!」(2015 年。日本語字幕版貸出お問い合わせは関西クィア映画祭事務局まで)
http://kansai-qff.org/2017/works/yeswefuck.html・「松沢呉一のビバノンライフ 連載 – ホワイトハンズの何が問題か」の記事アーカイブ
・『身体障害者の性活動』(玉垣努・熊篠慶彦編、2012年、三輪書店)
・『知的(発達)障害のある人の自立生活・セクシュアリティ<EPOこころでわかる支援者エンパワメントセミナー>』(エンパワメント・プランニング協会発行、2013年)
・えりか(元デリヘル嬢)著『障害者向けデリヘルで働くということ』(SWASH発行、2017年、ドキュメンタリー映画「スカーレットロード」日本版公式パンフレット所収、近日ダウンロード版発行予定)http://swashweb.sakura.ne.jp/node/166
・知的障害のある若者と性教育に関するシャーロッタ・ローフグレン・モーテンセンさん(マルメ大学)の講演「I want to do it right!(みんなと同じようにちゃんとやりたい!)」(2017年10月15日、日本性科学会第37 回学術集会)
・第22回関西性教育研修セミナー報告「スウェーデンとフィンランドに学ぶ、知的障害児者への性の教育と支援・専門家養成」(関西性教育研修セミナー実行委員会、現代性教育研究ジャーナル2018年1月15日発行)
http://www.jase.faje.or.jp/jigyo/journal/seikyoiku_journal_201801.pdf
・立命館大学生存学研究センター・立岩真也氏(製作責任者)作成ページ、「障害者と性・関連文献等」
http://www.arsvi.com/d/d00s.htm
知のネットワーク – S Y N O D O S – 要友紀子 / SWASH代表
平昌(ピョンチャン)冬季パラリンピックにアルペンスキー日本チームのスタッフとして参加したスキーインストラクターのさくら市氏家、会社員山森信子(やまもりのぶこ)さん(40)が23日、下野新聞社を訪れ、金1個を含む計6個のメダルを獲得したチームの活躍を振り返った。「障害者スポーツへの関心が高まっている今こそ、裾野を広げたい」と意気込んでいる。
山森さんは、2010年バンクーバー、14年ソチの過去2大会もチームスタッフとして現地に赴いた。選手と共にスタート地点に立って緊張を和らげたり、鼓舞する言葉を送ったりして、チームはバンクーバー7個、ソチ5個のメダルに輝いた。
平昌大会ではチームの総務・広報担当として、主に国内外からのメディア対応を担った。「過去2大会に比べてメディアの数が圧倒的に増えた」と障害者スポーツへの関心の高まりを実感したという。
チームは選手9人、スタッフ9人で臨んだ。中でも村岡桃佳(むらおかももか)選手は、金1、銀2、銅2の計5個と日本選手団全体のメダル(10個)の半分を獲得する快進撃。「日頃の努力と、ハートの強さが光った」と振り返る。
三重県玉城町佐田の「身障者就労センター 上々」が運営する「さんておーる食堂」で今月から、町民のつどい場として昨年12月に試験的に開設された「健康マージャン ロン」が本格始動した。障害のある同センター利用者がスタッフとして参加し、町民と交流。相互理解を深めて共生する新たな居場所として、期待を集めている。
同町では町地域包括支援室が中心となり、平成27年に地域ケア会議・居場所部会を発足。町民が楽しく集える場所として、同町田丸に「たまきのつどい場『協(かなう)』」を開設した。
昨年からは男性が参加しやすい第2の居場所づくりに取り組み、脳の活性化や認知症予防に効果があるとされる健康マージャンに着目。同部会のメンバーで同センターの上田大輔さん(35)が施設を会場にしてはと提案し、食堂の休業日の活用が決まった。
運営は今月から同センターが担当。「賭けない・飲まない・吸わない」をモットーに、毎週月曜日午前10時―午後3時に「ロン」を開く。町内在住、在勤者が対象で会費は1日100円。
当初から、同センター利用者の木本隼季さん(26)もスタッフとして参加。「みんなが声を掛けてくれるのでうれしい」と話す。初めは緊張から失敗もあったが自分なりに考えて対応を工夫し、月曜日はいつもより30分早く出勤して準備や受け付けなどを手伝う。
23日は約25人がマージャンを楽しんだ。初心者にはベテランのマージャン愛好家が優しく指導し、点数順にメンバーを入れ替えてたくさんの人と接する機会をつくる。
町内在住の70代男性は「認知症予防で来ているがあっという間に時間が過ぎる」、90代男性は「月曜日が待ち遠しい」、70代女性は「いろんな人と友達になれる」とにっこり。上田さんは「健康マージャンをきっかけに障害者や高齢者が分け隔てなく交わりながら共生していければ」と話していた。
問い合わせは同センター=電話0596(64)8955=へ。
【健康マージャンを楽しむ参加者らと「ロン」の運営を手伝う木本さん(正面奥)
2018年4月25日 47NEWS
精神障害者らを受け入れている長野市地域活動支援センター「とがくししょうまの家」(長野市戸隠豊岡)の指定管理者に今月、地元住民らが作ったNPO法人がなった。一時、指定管理者が見つからず、閉鎖も検討されていたが、運営が続けられることになった。
同施設は1995年に旧戸隠村が開設。戸隠地区や周辺地区の精神障害者や知的障害者10人が利用登録している。利用者は社会参加や復帰に向け、他者と交流する場にしたり、職員のサポートを受けながら、高齢者施設や公衆トイレなどの清掃を請け負ったりするなどしている。この施設は3月まで長野市の社会福祉法人が指定管理者になっていた。しかし、市街地から職員の通勤が困難などとして、今春の契約を更新しないことにした。市は昨年、指定管理者を募集したが、応募はなく、利用者を別の施設に移して閉鎖するか、直接運営するかを模索していた。
この状況を市から聞かされていた戸隠地区出身で保健師の橋詰ゆき枝さん(71)=長野市県町=は「施設が閉鎖されれば利用者が通えなくなり、引きこもりになるかもしれない」と、地元住民らと昨年11月にNPO法人「とがくししょうま」を設立。指定管理者を引き受けた。
旧戸隠村時代、施設の設置に関わっていた橋詰さんは「この施設があるから1人暮らしできている障害者もいる」と必要性を訴える。施設が地域の中にあることで「近所の人が利用者の様子を施設に教えてくれることもあり、症状の悪化を防げる」と語る。
職員の高齢化や活動資金など課題は残っている。しかし、今後は認知症患者の受け入れやグループホーム、地域住民との交流会など事業を広げる予定だ。「いろいろな障害の人が来られる場所にしたい。地域の人にももっと来てもらいたい」と呼びかけている。
【ガン・クリスティーナ】毎日新聞 2018年4月24日
災害時の支援は、それを最も必要とする人をまず優先するべきだろう。だが、必ずしもそうではなかったことが熊本地震で明らかになった。本紙連載「あの時何が 被災地障害者センター編」は、被災した障害者に「格差」が生じ、支援の網の目からこぼれ落ちていた実態を伝えている。その背景には障害に対する無知や無理解、誤解があり、それが偏見や差別、無関心につながったようだ。
熊本地震では、避難所の通路の段差や多目的トイレなどの未整備が、障害者やお年寄りらの障壁となった事例が数多く見られた。さらに、被災者への画一的な平等主義も障害者にとって高いハードルとなったとの指摘がある。
精神障害や発達障害がある人は、騒々しい環境や集団行動になじめず、苦痛を感じることがある。このため避難所で食料や支援物資を受け取る行列に並べず、代わりに並んだ家族が「並んだ人の分しか渡せない」と言われたケースも少なくなかったという。
地震避難という過酷な状況の中で、われ先にと必要以上の物資を受け取ろうとする事例もあり、避難所を公平に運営する上でルール徹底を求めざるを得なかった側面もあるだろう。しかし、障害者に対する無理解や理解不足から、適切な支援が及ばない状況を生んでしまった面も否めない。
そうした状況に直面するのを恐れて、自家用車や損壊した自宅にとどまった障害者やその家族も多かった。県内避難者はピーク時18万3882人とされているが、これは指定避難所での集計にすぎない。行政は、車中泊を余儀なくされた障害者など社会的弱者にしっかり目を向け、多様な避難動向の把握と救援の方策を真剣に検討すべきだろう。
障害者の暮らしにくさを解消する支援を実現するには、「合理的配慮」が必要とされる。例えば避難所での情報提供時、アナウンスだけでなく掲示や筆談、手話通訳などを用いることは聴覚障害者への合理的配慮につながる。
障害者差別解消法は、費用や人手がかかり過ぎない範囲で設備やサービス提供の方法などを整える合理的配慮を、国や自治体に義務付け、民間事業者にも努力義務として求めている。県も「障害のある人もない人も共に生きる熊本づくり条例」を施行しているが、熊本地震で合理的配慮が反映されたとは言い難い。応急仮設住宅の整備についても、室内の段差や入り口の狭さなど、車椅子利用者への配慮を欠くと批判されたことを重く受け止めるべきだろう。
障害者イコール福祉避難所という思い込みも、障害者を身近な避難所から排除しかねない。収容人数が限られる福祉避難所が本来受け入れるべき重度障害者を支援するには、一般の避難所が障害の有無にかかわらず広く地域住民を受け入れるのが望ましい。合理的配慮の発想が多くの被災者を支援する土台となるはずだ。熊本地震の経験を、障害の有無を問わない共生社会の実現に生かしたい。
4月24日 熊本日日新聞
「障害と死因が明確に関連するとは言えない」「プライバシーの保護のため」。難病「骨形成不全症」を抱え障害者枠で採用された県教育委員会の女性(当時42歳)が長時間労働の末職場で倒れ1月に死亡した問題で、死因などを調べてきた第三者委員会の委員たちは24日、報告書公表後の記者会見で、障害の事実を非公表とした理由をそう説明した。障害者雇用促進法に基づく障害者への配慮があったのかについても「そういう観点で調べていない」と一蹴。障害に対する調査の消極性が浮き彫りとなった。
障害者雇用促進法は雇用主に対し、「障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない」と規定している。第三者委から調査報告書を受け取った池田幸博教育長は、県が女性に対し合理的な配慮をしていたか問われると、「障害者という質問に関しては控えさせていただく」とプライバシーを理由に返答を拒否。「一般的に、個々の(障害の)状況を見ながら通勤・超過勤務への配慮などが必要だと思う」と述べ、「障害の有無にかかわらず、(年)1000時間を超える長時間労働をしてしまったことは(県教委として)反省しなければいけない」とうなだれた。
県教委では2002年にも、最大月約128時間の残業を強いられた男性職員が自ら命を絶ち、公務災害と認定されていた。遺族らからは「再発防止を求めてきたのに生かされていない」と怒りの声が上がっている。
池田教育長は「改善してきたつもりだったが、結果的に今回の事件が起こってしまった」と弁解。「また改めて改善案を練り直したい」と述べた。
平哲也会長(元県弁護士会長)も記者会見で、障害への配慮不足が死を招いた可能性について問われると「(障害者にとって)負荷にならなかったということではない。なんとも答えづらい」と言葉をにごした。第三者委は、報告書はあくまで女性の勤務実態とその背景を明らかにしたもので、「死との因果関係については調査中」だとのスタンスを取っている。
第三者委は、女性が所属していた高校教育課全体の「業務の絶対量」が多かったとも指摘。労働時間の管理が不十分だったとも指摘した。
「第三者調査委員会」の調査結果(骨子)・女性の時間外労働は17年11月に142時間、12月に154時間
・休日出勤率は17年11月で80%、12月で81.8%
・くも膜下出血に関連することが明らかな障害、既往症、現在の病気、症状は見当たらなかった
・係の職員はそれぞれ担当業務をこなすことで手いっぱいの状態
・女性より時間外労働の多い職員がいたため女性が目立つ存在でなかった
・パワハラの事実は認められなかったが職場環境からくる重圧を感じていた可能性
・仕事ぶりは堅実、丁寧、きちょうめん。消極的評価は上司からも同僚からも皆無
・女性は県の健康相談で業務量が多いと指摘、異動希望も出し続けていた
おことわり県は亡くなった職員が障害者であることを公表していませんが、毎日新聞は、今回のケースを考える上で欠かせない事実であると判断し、個別に遺族の了解を得た上で報道しています。
毎日新聞 2018年4月25日
知的障害や発達障害がある中高生向けの放課後等デイサービス「みらせんジュニア熱田教室」が今月、名古屋市熱田区でオープンした。企業から受注した内職の就労学習に特化したサービス内容は、県内初の試みという。運営にあたるNPO法人「障がい者みらい創造センター」の竹内亜沙美理事長(34)は「障害がある子どもたちが社会で活躍し、豊かな人生を送る手伝いをしたい」と語る。
自然光が差し込む明るい教室で、十五歳の利用者が道路標識部品の組み立て作業を終えた。「できました!」。作業の報告、連絡、相談は自発的に行うのがルール。教室のスタッフに検品を受ける表情は誇らしげだ。
利用時間の大半を占める就労学習では、提携する企業から継続的に受注した部品の組み立てや梱包(こんぽう)、データ入力作業を行う。手順や完成度、納期は発注元の企業が設定し、リアルな労働環境を体感できる。
現在は障害者雇用を考えている名古屋市内の四社と連携。工賃は受け取らないが、納品した部品は実際に工事現場などで使用される。「どこの道路で使われるかな」と仕事の先を想像し、人の役に立つ喜びを感じることも学習の一環だ。
三月まで同市立南養護学校で教諭をしていた竹内さんは、以前から卒業生の就労を気に掛けていた。市教委によると市内の特別支援学校(知的障害)普通科の昨年度卒業生百九十二人のうち、一般企業に就職したのは二十八人だけ。障害が軽度の場合、障害者年金は支給されない可能性があり、生計を立てられなければ生活保護を申請することになる。将来の不安について保護者から相談を受けることも多かった。
「非常に高い作業能力がある。戦力として社会に送り出したい」と竹内さん。二〇一五年から企業向けの講演活動を始め、障害者が活躍する職場づくりの提案や助言を行う中で、企業から「育成に時間がかかる」との声が上がった。
学校と実社会では、周囲が支援に割ける人手も時間も差がある。変化に適応するには、中高生のうちから自立に向けて準備をして慣れていくことが重要だと感じ、NPOを設立し、「手助けなし」の本格的な作業を体験して学べるデイサービスを開校することにした。教室の備品の多くは竹内さんの考えに賛同する企業から寄贈された。
現在の利用者は十人。今後は提携先を増やし、教室で力を付けた利用者の就職につなげていく。
(中村玲菜)
<放課後等デイサービス> 児童福祉法に基づき、小中高校に就学している障害者を対象に放課後や夏休みなど長期休暇中、生活能力向上のための訓練を継続的に提供する場。県障害福祉課によると、2017年4月時点で県内には769カ所あり、定員総数は7357人。市町村の「受給者証」の発行を受ければ、障害者手帳がなくても利用できる。料金はサービス費の1割負担だが、所得状況に応じた負担上限額が設定されている。
<みらせんジュニア熱田教室> 知的障害・発達障害がある中高生が対象で、利用時間は平日午前11時半~午後5時半と、土曜・祝日の午前10時~午後4時。日曜定休。定員25人。送迎なし。(問)同教室=052(887)4993
学校と実社会では、周囲が支援に割ける人手も時間も差がある。変化に適応するには、中高生のうちから自立に向けて準備をして慣れていくことが重要だと感じ、NPOを設立し、「手助けなし」の本格的な作業を体験して学べるデイサービスを開校することにした。教室の備品の多くは竹内さんの考えに賛同する企業から寄贈された。
現在の利用者は十人。今後は提携先を増やし、教室で力を付けた利用者の就職につなげていく。
<放課後等デイサービス> 児童福祉法に基づき、小中高校に就学している障害者を対象に放課後や夏休みなど長期休暇中、生活能力向上のための訓練を継続的に提供する場。県障害福祉課によると、2017年4月時点で県内には769カ所あり、定員総数は7357人。市町村の「受給者証」の発行を受ければ、障害者手帳がなくても利用できる。料金はサービス費の1割負担だが、所得状況に応じた負担上限額が設定されている。
<みらせんジュニア熱田教室> 知的障害・発達障害がある中高生が対象で、利用時間は平日午前11時半~午後5時半と、土曜・祝日の午前10時~午後4時。日曜定休。定員25人。送迎なし。(問)同教室=052(887)4993
2018年4月25日 中日新聞
“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。 初めてできた彼氏に家のことを聞かれた私は、いつもの笑顔が消えて言葉が詰まってしまいました。
彼と過ごす時間は特別同じバイト先で働く、4つほど歳の離れた定時制に通う彼。大きなバイクで学校まで迎えに来てくれて、そのまま彼の家で過ごしたり、バイト先のお店まで送ってもらったり。自宅からすぐの距離に住んでいたこともあり、私たちは毎日のように会っていました。
彼は、校内の様子は知らないし、私の同級生とも特に接点はない。この距離感が、私にとっては気が楽だったので、普段学校の友人や家庭内では見せることのない、素直に甘えられる “本当の自分” に戻ることができていました。
「家族について教えてよ」しかし、行く場所といえば常に彼の実家。私の実家は、友だちですらあがったことがありませんでした。兄が家にいるので、むやみに人を連れていって兄が安易に話しかけたりすることがイヤだったからです。
高校生にもなれば、友だちと “お泊まり会” もよくあると思いますが、私の家には1回も呼んだことはありませんし、来て欲しくもありませんでした。とはいえ、1年以上も交際していれば、彼は「なぜ心音は自分を実家に招くことを嫌がるのか」、知りたがるようになったのです。
「俺は実家に呼んでいるし、両親や兄弟にも心音のことを紹介してるのに……」と不満そうな顔を見せては、「まあ、いいけどさ」と半分諦めモード。「お父さんが厳しいから、彼氏がいるのは秘密にしたいんだ〜」と、適当に理由を言っては心の中で「お願い、触れないで」と叫んでいました。
「俺の兄も、精神安定剤飲んでたよ」けれども、なんで私がそんなに実家がイヤなのか、ふとしたタイミングで言ったことがありました。「実は、私のお兄ちゃんずっと家にいるの」と。詳しくは告げず、「心の病気があって、家にいるんだ」とだけ説明したのです。
彼の反応は、「そうなんだ、もっと早く話してよ〜。そんな気にすることじゃないよ。俺の兄も、前精神安定剤飲んでたし」という言葉。少しだけ安心したと同時に、「でも彼のお兄さんは、ちゃんと働いてるじゃん」。
正直、精神安定剤を飲んでいたり、精神科にカウンセリングを受けたりという人は、表立って言わないだけで、多くいると思います。障害者手帳を持つまでは至らなくても、心のバランスを保つことが難しく、仕事をしながら精神科に通っている人は決して珍しい話ではありません。でも、私の兄は、働くなんて到底無理。会話でさえも成立させるのが難しいのですから。同じように心の病を抱えていても、彼の兄と私の兄では、雲泥の差がある……。彼との認識のズレに心がチクチク痛みました。
……「やっぱり、実家に来ることはやめて欲しいな」という言葉しか出てきませんでした。
通院していた病院先でその頃、近所の精神科に通院していた兄は、病院で開かれるデイサービスやイベントにも参加していました。病院に通っている患者はもちろん他にもいます。気さくに人とコミュニケーションしたがる人、自分の殻にこもって人とは接したくない人、家族とは話すけど医師には口を閉ざす人。さまざまな人々がいました。
兄は、家から歩いてすぐだったその精神科に、診察やデイサービス以外にも勝手に足を運ぶようになっていきました。そこで、“ある問題”を起こしてしまいます。
心音(ここね) — 2018.4.25
福岡県久留米市の障害者就労移行支援事業所の所長だった40代の男性が昨年、事業所に通う知的障害のある女性(20)にわいせつな行為をしたとして、市は25日、事業所の運営会社を障害者総合支援法に基づき文書で指導した。市はわいせつな行為が性的虐待にあたると判断した。
市によると、女性は昨年の秋から冬にかけて、事業所で所長から調理実習中に胸を触られたり、訓練時間内にホテルでわいせつな行為をされたりした。女性は、調理の仕事に就こうと昨年夏から事業所に通っていた。市は「障害福祉サービス事業所として不適切」とし、虐待防止の体制づくりや研修実施などを盛り込んだ改善報告書の提出を運営会社に求めた。
運営会社は問題のあった事業所を20日に閉鎖した。
毎日新聞 2018年4月26日
障害者らへの不妊手術を定めた旧優生保護法が存在していた1980年に法の対象外なのに自らの判断で子宮の摘出手術を受けた脳性まひの女性が当時の思いを証言した。富山市の中村薫さん(60)。「優生思想に洗脳されていた」と語り「手術しなければ子どもを産めたかも」と悔やむ。
8歳で石川県内の障害者施設に入所。13歳の時に初潮を迎えたが、自分で処置できず、介助する職員に嫌な顔をされた。「赤ん坊も産めんくせにこんなもんあったって、しゃあない」。毎月のように聞かされた。「障害者に生理はあってはいけないものだ」と信じ込み、22歳の時、自ら希望して子宮摘出手術を受けた。
1人暮らしをする自宅で取材に応じる中村薫さん
(4月25日 信濃毎日新聞 )
井上氏「視覚障害者向け支援を」
参院外交防衛委員会は19日、視覚や身体の障害などで読書が困難な人の図書利用を促進する「マラケシュ条約」の承認案を全会一致で可決しました。
日本共産党の井上哲士議員は採決に先立つ質疑で、視覚障害者向けの図書は途上国で1%、先進国でも7~8%しかなく、「読書の飢餓」状態だと言われているとして、国の取り組みを質問。河野太郎外相は「条約締結を契機に、国際的な協力を一層進展させていきたい」と答弁しました。
井上氏は、国会図書館を中心とした全国の図書館のネットワーク化推進の必要性を強調。パソコンでダウンロードできるサービスの拡充や、視覚障害者情報総合ネットワークの「サピエ図書館」への支援を求めました。
羽入佐和子国立国会図書館長は、点字、録音の計約28万タイトルがダウンロード可能で、大学図書館が視覚障害のある学生のために製作したデータの収集などの取り組みをさらに促進したいと答弁。厚生労働省の宮嵜雅則障害保健福祉部長は、サピエへの補助を続けるとともに、サピエの安定的運営のために公共図書館の加入促進に努めたいと答えました。
また井上氏は点字、音声、拡大図書などに変換できるテキストデータの普及促進を要請。外務省の小泉勉参事官は「関係各省に働きかけたい」と応じました。
2018年4月26日 しんぶん赤旗
筑波大付属視覚特別支援学校(東京都文京区)の石崎喜治教諭(63)が、理科教育で著しい成果を上げた教員を表彰する「第49回東レ理科教育賞」で入賞した。視覚障害のある中学生に対する「光の実験」が評価された。
石崎さんは、光の明るさを音の高低に変換する「感光器」を利用。光源から出た光の進路に感光器を置く。生徒はピンを動かしながら、光が遮られて音が変化する位置を探し、下に敷いた紙に穴を開けていく。その穴をつなげば、直進する光の様子を指で触って確認できる。「生まれながら目が見えない生徒は、この実験で初めて光の直進を経験できる」と語る。同校に赴任したのは1984年。当時は視覚障害者向けの物理実験は少なかったが、「生徒と対話しながら一つ一つ実験を考えてきた」。工夫を重ね、今では中学の物理分野で、できない実験はほとんどないという。大学で物理を専攻する卒業生もおり、「これからも新しい実験をつくっていきたい」と意気込む。
毎日新聞 2018年4月26日
障害のある人が運動を楽しめる環境をつくる「障がいスポーツ地域コーディネーター」の委嘱状交付式が25日、愛媛県松山市道後町2丁目の県身体障がい者福祉センターであり、委嘱された東中南予の女性3人が抱負を語った。
2017年に愛媛で初めて開催された全国障害者スポーツ大会後も、障害者スポーツの裾野拡大や選手育成に取り組もうと、県が新たに設置。各地域の特別支援学校などを拠点に、在校生や卒業生、地域の障害者が参加する交流会や競技会を定期的に開く。
就任したのは上島町の地域おこし協力隊を務める大西美穂さん(38)=上島町弓削引野▽元県身体障がい者福祉センター職員の田丸優実さん(30)=伊予市下吾川▽総合型地域スポーツクラブ「楽スポGOやわたはまスポーツクラブ」会長の西田千景さん(66)=八幡浜市郷―の3人。
県障がい者スポーツ協会の仙波隆三会長が委嘱状を手渡し「各地の障がい者スポーツ指導員などと協力し活発に活動してほしい」とあいさつ。西田さんは「障害のある方たちが楽しく、居心地のいいと思える場所にしていきたい」と意気込んだ。
仙波隆三県障がい者スポーツ協会長(右)から委嘱状を受け取る地域コーディネーター
2018年4月25日(水)(愛媛新聞)
武蔵野銀行は25日、障害者の雇用促進を目的に設置した新会社「むさしのハーモニー」が18日付で厚生労働省から特例子会社に認定されたと発表した。4月に障害者2人を新たに採用し、要件を満たした。県内金融機関で特例子会社の認定を取得したのは初めて。
特例子会社の従業員は親会社に雇われているとみなして雇用率を計算できる。同行本体の4月時点の障害者雇用率は2.21%で、特例子会社も含めると2.4%になる。民間企業の法定雇用率は2.2%。
むさしのハーモニーは2017年5月設立で、主に同行が発注する名刺印刷やデータ入力などを手掛けている。
2018/4/26 日本経済新聞
『精神障害者雇用のABC』(山口創生:編著)星和書店より刊行
精神障害者の雇用義務化によって多くの企業が抱える悩みに応える。
精神障害の特徴の説明や関連する法律を、支援者や雇用者がその経験をもとに紹介する。はじめての精神障害者雇用にもこれで安心の一冊。
精神障害者の雇用に取り組む企業の経営者や採用に携わる人事関係者、同僚として精神障害者と一緒に働くすべての人たち、雇用を支援する支援者に向けて、企業と精神障害者の双方に利益のある働き方を提案する一冊。2018年4月より障害者雇用促進法における法定雇用率を決める際に、精神障害者の人数も考慮されるようになる中、精神障害者雇用を成功に導く人材戦略や様々な精神疾患の特徴、雇用に関する法律・制度・合理的配慮、支援者の活用方法などを、支援者や雇用者が自身の実体験をもとに詳細に解説。精神障害者雇用が今後大きく進むことが予想される中、精神障害を正しく理解し、様々な課題を解決して企業と精神障害者が二人三脚で働くための方策を示す。
精神障害者雇用のABC
編著:山口創生
定価:本体2300円+税
ISBN:ISBN978-4-7911-0980-7
ページ数:240ページ
サイズ: 四六判
出版社:星和書店
■目次
第1章 精神障害者雇用と企業からみた人財戦略
第2章 精神障害と各疾患の特徴
第3章 障害の特徴と個人差の理解
第4章 雇用に関する法律・制度
第5章 障害者雇用促進法と合理的配慮
第6章 精神障害者の雇用手順
第7章 障害者雇用におけるキャリア展開
第8章 支援者を活用するには
第9章 実際の雇用・支援:支援者から見た事例
第10章 企業からの質問・疑問
■編著者紹介
山口創生(やまぐち そうせい)
2003年,日本福祉大学社会福祉学部卒業。その後、大阪府立大学社会福祉学研究科およびロンドン大学キングス・カレッジ・ロンドンにて修士号、大阪府立大学人間社会学研究科にて博士号を取得。現在、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所地域・司法精神医療研究部精神保健サービス評価研究室長。専門は地域精神科医療保健福祉サービスの評価であり、特に精神障害者に対する就労支援を主たる研究テーマとしている。
◆書籍の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社 星和書店 http://www.seiwa-pb.co.jp// 4月発表・同社プレスリースより転載)
2019年の全国障害者スポーツ大会「いきいき茨城ゆめ大会」で、聴覚障害者に選手を支援するボランティアを担ってもらおうと、県は25日、養成講座を筑波技術大学(つくば市)で始めた。全国初の取り組みで、県はより選手団に寄り添ったサポートができると期待している。
全国障害者スポーツ大会では、「選手団サポートボランティア」が、選手団に同行し、介助、誘導、交流を行う。茨城大会では、県内の学生を中心に800人を目標にボランティアを募る予定で、県は、国内で唯一、視覚、聴覚障害があることを入学の条件にする同大にも協力を呼びかけた。
同大の障害者高等教育研究支援センターの中島幸則准教授は「サポートを受ける側だった学生が、サポートする側になることで、これからに役立つ何かに気づいてほしい」と話す。
県障害者スポーツ大会課の斉藤正光課長補佐も「障害を持つ学生がボランティアに参加することで、選手団と手話で直接会話できるなど、よりスムーズな対応ができる」と期待を寄せる。
この日の講座には、同大産業技術学部の2、3年生約40人が出席。県の大会概要や競技の説明を大学職員が手話で同時通訳した。ボランティアに興味があったという2年生(19)は「普段は他の障害者と関わることがないので、様々な人と接して視野を広げたい」と話した。
選手団サポートボランティア養成の協力校は、同大を含め大学・短大11校、看護・福祉系の専門学校6校の計17校。既に約900人が受講を希望しており、今後、協力校で養成講座が行われる。県によると、19年10月12日に開幕する茨城大会では、ほかにも、運営3500人、手話や筆談を行う情報支援600人の計4900人のボランティアが必要という。
大会公式テーマソングに合わせて手話をする学生ら
2018年04月26日 Copyright © The Yomiuri Shimbun県視覚障害者協会は本や雑誌などを点訳、音訳するボランティアの養成講習会の参加者を募集している。担当者は「初心者でも基本はマスターできる」と幅広い応募を呼びかけている。
同協会は1970年代から、書籍などを点字に翻訳する点訳と、書籍の文章や写真などの情報を声で伝える音訳のボランティアの養成講習会を実施。参加者は半年間の講習を受けた後、県点訳友の会といしかわ音訳の会に所属し活動する。視覚障害者からのリクエストがあれば、手紙などの翻訳や対面朗読サービスなども請け負う。同協会の講習を受けて活動している点訳者は3月末現在で113人、音訳者は92人。担当者は「ボランティアの中には、知識が全くなかった人もいる。最初は先輩と組んで訳すので、言葉が好きだったり興味のある人は参加してみてほしい」としている。
対象は県内在住・在勤の18歳以上。会場は県視覚障害者情報文化センター(金沢市芳斉1)、参加無料。講習は全24回で、点訳が5月16日~10月31日の毎週水曜午後1時半~同3時半、音訳が5月18日~11月2日の毎週金曜の同時間帯。参加申し込みはいずれも5月9日必着。問い合わせは県視覚障害者協会(076・222・8781)
毎日新聞 2018年4月27日