東日本大震災などの経験を踏まえ、災害時に配慮が必要な高齢者や障害者ら(要配慮者)を受け入れる福祉避難所の指定件数は増えているが、昨年4月に起きた熊本地震では多くの要配慮者が福祉避難所に入れず、一般の避難所で過酷な生活を余儀なくされた。専門家は「高齢者をケアする医師や看護師などの人手をどう確保するかが重要だ」と指摘する。
「通所施設や地域福祉センターは災害が起きて福祉避難所になると、24時間対応が必要になり、圧倒的に人手が不足する」。同志社大の立木茂雄教授(福祉防災学)はこう指摘する。
福祉避難所には医師、看護師のほか、栄養士、リハビリの専門家、ソーシャルワーカーなど多くのスタッフが不可欠だ。熊本地震では多くの施設が被災した上、人手不足も重なり開設できない福祉避難所が多かった。立木教授は「場所が指定されてもスタッフがいなければ機能しない。東日本大震災で仙台市などの福祉避難所の運営が比較的うまくいったのは、全国からスタッフが集まってきたからだ」と話す。
立木教授は熊本地震の発生直後から現地入りし、調査した。福祉避難所に一般の被災者が押し寄せて要配慮者が入れず、要配慮者に周辺自治体にある旅館やホテルに避難を促しても地元を離れたがらない人が多かった。一方、一般の避難所でも要配慮者のスペースを設けた所もあった。
立木教授は「一般の指定避難所で専門のスタッフを確保し、要配慮者をケアする方が現実的だということが熊本地震の教訓ではないか。国や自治体は昨年4月施行の障害者差別解消法で障害者らへの合理的な配慮が義務付けられていることを意識して対策に取り組む必要がある」と指摘した。
2017年05月06日 西日本新聞