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障害者と働く… 法定雇用率引き上げ、変わる現場

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 4月から企業に義務づけられる障害者の雇用率(法定雇用率)が1.8%から2.0%に引き上げられた。対象企業も従業員56人以上から50以上に拡大した。ただ、雇用の意欲があっても「どんな仕事ができるのか分からない」と二の足を踏む企業も多い。障害者ができる仕事は何か――。障害とともに働く現場を追った。

■「できる」強み生かす

 障害のために「できない」ことを探すのではなく、「できる」ことに強みを見いだし、障害者を雇用しようとする動きが広がっている。

 「2020年までに障害者1千人を雇用し、給料25万円を払う」。3年前にそう宣言した情報通信会社「アイエスエフネット」(東京・港)グループの渡辺幸義代表(49)は今、「5年前倒しして2年後には達成できる」と自信を見せる。現在グループ全体で月10人ペースで障害者を採用、障害がある社員は3月で300人に達した。


障害者の接遇セミナーで「まずは障害を知ることが大事」と語った垣内俊哉さん(右)(大阪市北区)
 例えば、同グループが08年に設立したアイエスエフネットハーモニー(東京・中野)。

 根気がある知的障害者には携帯電話やパソコンの検証作業、コミュニケーションが苦手な発達障害者にはシステム開発の補助作業――。同社は各障害者に合わせて業務内容を広げ、設立2年で黒字を達成した。渡辺代表は「障害者が特長を生かせる仕事をつくり出すのが自分の役割だ」と話す。

 障害者を積極的に雇用している大企業も。空調機器大手のダイキン工業は、大阪府と同府摂津市の出資を受けて第三セクター「ダイキンサンライズ摂津」(大阪府摂津市)を1993年に設立、現在は約100人の障害者が働く。

 同社は障害者雇用促進法に基づいて厚生労働省が認可する特例子会社。障害に合わせた勤務体系が可能で、うつ病で過去に退職経験がある女性社員は「毎日決まった時間に退社できるよう配慮してもらっている」。同社の応武善郎社長(72)は「働く環境が障害ならば、その環境を変えればいい」と強調する。

 全社員に占める障害者の割合が7%超と大企業で最も高い、衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング。柳井正会長兼社長が98年に「1店舗1人の障害者を採用する」との方針を示した結果だ。同社の担当者は今こう話す。「障害者と一緒に働くことが普通になった」




■「知ってもらう」が第一

 障害者の就労実態を知る機会が少なく、採用をためらう企業も多い。その「溝」を埋めようと、採用したい企業側と働きたい障害者を結びつけるセミナーが相次いで開かれている。

 「障害者はどんな作業ができるのか」「どう接すればいいのか」

 パソナハートフル(東京・千代田)が1月に大阪市内で開いた「障害者雇用支援セミナー」には経営者や人事担当者ら約60人が参加した。4月からの法定雇用率の引き上げで障害者雇用への関心は高いものの、戸惑う声が相次いだ。

 同社は人材派遣大手パソナの障害者雇用の特例子会社で、従業員約200人の9割は障害者だ。深沢旬子社長は「障害者を雇いたいと考える企業は急増しているが、二の足を踏む経営者が多い」と残念がる。「そうした企業には1〜2週間、障害者の実習を受け入れるよう進言している」と深沢社長。実際に職場実習から就労につながる場合が最も多いという。

 障害者側から積極的に働き掛けるケースも。知的障害者の就労を目指して2006年に開校した大阪府立たまがわ高等支援学校(東大阪市)では、教諭が就労を前提とした実習先を戸別訪問で開拓している。

 3年間で約2千社を訪れ、約160社から実習の承諾を得た。毎年の卒業生約60人の就職率は8〜9割超と高い。同校進路指導部の倉木暁子教諭は「企業側に生徒が持つ障害の特性を知ってもらうことが大切だ」と強調する。

 「歩けないことが障害ではなく、段差などの環境が障害をつくっている」。3月上旬、大阪市内でのセミナーで、バリアフリー関連事業を手掛けるミライロ(大阪市淀川区)の垣内俊哉社長(23)は企業の人事担当者ら約40人を前に力説した。垣内社長は生まれながら骨がもろく折れやすい「骨形成不全症」という病気で車椅子生活を送る。立命館大の学生だった10年に同社を設立した。

 垣内社長は「障害者の目線で生み出された価値は健常者も含めたすべての人の価値につながる」と強調、企業が障害者の雇用などを通じてバリアフリーの商品開発に取り組むことも期待する。

■雇用と経営、両立に挑む

 障害者雇用と経営は両立できるのか。最低賃金を確保し、障害者の自立を促すため就労支援施設などが「経営」に挑戦する動きが出ている。

 「ごはん大盛りで」。3月上旬、福井県坂井市の市立丸岡南中学校の食堂。昼すぎ、おなかをすかせた生徒らが食堂にどっと押し寄せ、カウンターではエプロン姿の男女7人が料理を盛り付けていく。7人は社会福祉法人「コミュニティーネットワークふくい」(福井市)の知的障害者だ。

 同法人が配膳の業務委託を受けた2006年4月当初は、保護者から「障害者に調理はできるのか」との声も上がったが、今では実績が認められ近隣の小学校の給食も請け負う。もともとは知的障害者の親が集まる任意団体だった同法人。副理事長の市橋和広さん(66)は「障害者が仕事を通じて喜びを感じ、税金を払う社会の一員にもなってほしい」と願う。

 現在、雇用契約を結び「社員」と呼んでいる障害者約210人への平均賃金は月約8万円で、就労支援施設の全国平均を約1万円上回る。市橋さんは「税制面などで優遇されている社会福祉法人から脱却し、民間と競合できる経営感覚を持った組織にしていきたい」と意気込む。

 「お熱いので気をつけて下さい」。東日本大震災の傷痕が残る岩手県宮古市。沿岸の堤防に近いカレー店「カリー亭」のホールでは中川寿一さん(23)が接客し、厨房では工藤竜樹さん(27)がナンを焼く。2人は知的障害者だ。

 「健常者の半分しかできないとしても、半分はできるんだ」と経営者の小幡勉さん(64)。カレー店は接客対応が減るバイキング形式にし、金額はレジで打ちやすい「大人888円」「子ども666円」にするなどの工夫もした。

 系列の焼鳥店と合わせスタッフ計11人のうち7人が障害者。両店で年間計約5千万円の売り上げがあり、障害者にも最低賃金以上を支払っているという。

 障害者雇用を促進する厚生労働省の「就労継続支援事業」として認可を受けるため、昨年3月には運営主体を有限会社からNPO法人に衣替えした。この認可により雇用契約を結んでいる障害者1人に1日約6千円の補助金が入るようになった。「障害者はもう雇えないと断ってきたけど、事業展開で新たな受け入れもできる」と小幡さん。

 ただ、補助を受けても愛知県内のあるNPO法人の代表理事が「経営は厳しく、自己資金をつぎ込んでいる」と明かすように障害者雇用と経営の両立は容易ではない。小幡さんはこう言う。「障害の程度は一人ひとり違う。働く能力のない障害者には『支える場』が必要だが、働く能力のある障害者には『できる仕事』の仕組みを考えていかなければならない」


中学生に給食を配膳する事業所で働く障害者たち(福井県坂井市)

日本経済新聞-2013/4/16 2:06

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