司法と福祉の連携が不可欠
知的障害のために軽微な犯罪を繰り返す「累犯障害者」について、処罰するよりも社会復帰の支援が必要だという意識が広がってきた。
■検察改革がきっかけ■
社会復帰を優先させた検察の捜査・公判事例をまとめた最高検の資料によると、累犯前科がある知的障害者の再犯では、社会福祉施設の受け入れ確約を得て起訴猶予とした。実刑が想定される執行猶予中の窃盗再犯でも、福祉側の協力で居場所を確保し執行猶予を求刑した。
従来の検察では考えられなかった対応だ。前向きな取り組みは評価できる。累犯障害者の再犯防止には、司法と福祉の連携が不可欠なのは明らか。福祉支援を保障し、連携の制度化を急ぐべきだ。
厚生労働省の補助で2006年に発足した社会福祉専門家らによる民間研究班の調査では、対象15刑務所の受刑者計約2万7千人のうち410人が知的障害者(疑い含む)であることが判明。大半は福祉サービスを受けるのに有利な療育手帳すら持っていなかった。
家族などに恵まれた人はその橋渡しで福祉の援助を受けられるが、そうでない人は生きるために軽微な犯罪を繰り返さざるを得なかったということだろうか。
こうした人たちを福祉につなぐ責任は司法にある。そこに検察が気付くきっかけとなったのは、大阪地検特捜部の証拠改ざん隠(いん)蔽(ぺい)事件など相次いだ不祥事だった。
検察改革の一環として最高検が11年に設置した複数の専門委員会に、知的障害者の問題を扱う委員会もあり、福祉関係者らからの意見聴取などで現状を認識した。
■重要な弁護人の役割■
「厳罰=再犯防止」だった検察の意識も変わり始めた。12年には長崎で先駆的に福祉専門家らによる「障がい者審査委員会」が設けられ、容疑者や被告の知的障害の程度、福祉支援の必要性などを審査し、検察もその結果を刑事処分や公判対応の参考にするようになった。審査委はその後、宮城や滋賀にも拡大し、執行猶予の求刑などにつながっている。
司法と福祉の連携には、裁判官や弁護士も大きく関わってくる。特に容疑者・被告に寄り添う立場の弁護人の役割は重要だが、個人差が大きいのが現状。連携を強化するには、まだまだ課題が多い。
まずは累犯障害者の福祉支援を明確に規定することだ。刑事訴訟法に支援保障の条項を盛り込むことなどが考えられる。
具体策では、地域差がある受け皿の整備が急務。累犯障害者を受け入れ、支える施設や団体の充実は行政が責任を持って推進、取りまとめるべきだ。障がい者審査委は各都道府県に設置。判決を出す前に知的障害者の生活環境などを調査する制度を導入し、調査を審査委が担うことも検討に値する。
累犯障害者の存在は社会の責任である。全力で支援することが、社会の利益にもつながるだろう。
宮崎日日新聞- 2013年05月23日
知的障害のために軽微な犯罪を繰り返す「累犯障害者」について、処罰するよりも社会復帰の支援が必要だという意識が広がってきた。
■検察改革がきっかけ■
社会復帰を優先させた検察の捜査・公判事例をまとめた最高検の資料によると、累犯前科がある知的障害者の再犯では、社会福祉施設の受け入れ確約を得て起訴猶予とした。実刑が想定される執行猶予中の窃盗再犯でも、福祉側の協力で居場所を確保し執行猶予を求刑した。
従来の検察では考えられなかった対応だ。前向きな取り組みは評価できる。累犯障害者の再犯防止には、司法と福祉の連携が不可欠なのは明らか。福祉支援を保障し、連携の制度化を急ぐべきだ。
厚生労働省の補助で2006年に発足した社会福祉専門家らによる民間研究班の調査では、対象15刑務所の受刑者計約2万7千人のうち410人が知的障害者(疑い含む)であることが判明。大半は福祉サービスを受けるのに有利な療育手帳すら持っていなかった。
家族などに恵まれた人はその橋渡しで福祉の援助を受けられるが、そうでない人は生きるために軽微な犯罪を繰り返さざるを得なかったということだろうか。
こうした人たちを福祉につなぐ責任は司法にある。そこに検察が気付くきっかけとなったのは、大阪地検特捜部の証拠改ざん隠(いん)蔽(ぺい)事件など相次いだ不祥事だった。
検察改革の一環として最高検が11年に設置した複数の専門委員会に、知的障害者の問題を扱う委員会もあり、福祉関係者らからの意見聴取などで現状を認識した。
■重要な弁護人の役割■
「厳罰=再犯防止」だった検察の意識も変わり始めた。12年には長崎で先駆的に福祉専門家らによる「障がい者審査委員会」が設けられ、容疑者や被告の知的障害の程度、福祉支援の必要性などを審査し、検察もその結果を刑事処分や公判対応の参考にするようになった。審査委はその後、宮城や滋賀にも拡大し、執行猶予の求刑などにつながっている。
司法と福祉の連携には、裁判官や弁護士も大きく関わってくる。特に容疑者・被告に寄り添う立場の弁護人の役割は重要だが、個人差が大きいのが現状。連携を強化するには、まだまだ課題が多い。
まずは累犯障害者の福祉支援を明確に規定することだ。刑事訴訟法に支援保障の条項を盛り込むことなどが考えられる。
具体策では、地域差がある受け皿の整備が急務。累犯障害者を受け入れ、支える施設や団体の充実は行政が責任を持って推進、取りまとめるべきだ。障がい者審査委は各都道府県に設置。判決を出す前に知的障害者の生活環境などを調査する制度を導入し、調査を審査委が担うことも検討に値する。
累犯障害者の存在は社会の責任である。全力で支援することが、社会の利益にもつながるだろう。
宮崎日日新聞- 2013年05月23日