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それゆけ!体験隊:車椅子バスケットボール 障害者と楽しさを共有 /岐阜

 ◇切り返しの技量が大事

 車輪が激しくぶつかり合い、ゴール下で攻防が繰り広げられる−−。車椅子バスケット、通称「イスバス」を知ったのは、高校時代。人気漫画家、井上雄彦さんがイスバス選手を描いた「リアル」を読んだことがきっかけだった。中学時代にバスケットボール部だったこともあるが、単純に一つのスポーツとして興味があった。一昨年岐阜に赴任し、健常者も参加するチーム「岐阜SHINE(シャイン)」を知った。「障害者と健常者がともに楽しめるスポーツを」と、郡上市和良町の池戸義隆さん(36)が97年に設立したチームだ。一度、プライベートで練習に参加した縁もあり、2年ぶりに関市の体育館でイスバスに挑戦した。

 午後5時過ぎに練習が始まった。数十分かけてプッシュ(前進)、ターン(方向転換)、バック(後進)、ストップ(停止)の基本動作を確認する。四つの基本動作を組み合わせてコートを往復した。初めは「ただ速くこげばいい」と考えていたが、四つの基本動作を組み合わせた素早く切り返す技量が試合のパフォーマンスにつながると感じた。気がつくと、車輪をこぎ続けた手のひらが黒くなっていた。

 後半は5対5の試合形式。選手はみんな自由自在にマシンを操る。チームの足を引っぱるのではないか。そんな不安もあったが、空いたスペースを見つけて走り込む感覚が徐々に分かった。2試合目の後半、ゴール下からのシュートで初得点を決めることができた。

 イスバスのルールの特徴は、選手の障害に応じた持ち点制度。障害の軽重で4・5〜1点の持ち点があり、コート上の5人の合計が14点以下でなければならない。チームの司令塔、深見大輔さん(26)は「どんな障害がある人でも出場して活躍するチャンスがある。それがこの競技の素晴らしいところ」と話す。センターを務める山口優平さん(26)は、大学2年のとき、サッカーの試合で左膝を脱臼し靱帯(じんたい)を負傷した。日常生活で車椅子やつえは必要ないが「自分の好みで車椅子の車輪の傾きや椅子の高さなどを調節できるのも、ほかのスポーツにない面白さ」と語る。

 私にとっては2回目のイスバス。思うように車椅子を操れず、初めてシュートを決めた喜びと同時に「もっとうまくなりたい」という悔しさも残った。しかし、健常者にとっても一筋縄ではいかないからこそ、同じコートでボールを追い、楽しさを共有できるのではないか。「障害者スポーツ」というくくりで競技を見るのではなく、実際に体験してみることが、バリアフリーを考える一歩目になると感じた。

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 ■車椅子バスケットボール

 競技用の車椅子に乗ること以外は、ゴールの高さやコートの広さ、ルールは一般のバスケットボールとほぼ同じ。国内では日本車椅子バスケットボール連盟には79チームが登録。近年は健常者の参加が可能な大会もある。7月6、7日には名古屋市で全国ジュニア選抜大会(D−NUGGETS CUP)が開かれる。

毎日新聞 2013年05月26日 地方版

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