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精神障害者の雇用義務 働きやすい環境整備急ぎたい

 企業への精神障害者の雇用義務づけを柱とする改正障害者雇用促進法が成立した。企業の準備期間も考慮し、義務化は5年後の2018年4月からとなる。
 就労希望が増えている精神障害者の自立や社会進出を促すのが狙いだ。企業が雇うべき障害者の範囲を身体障害者から知的障害者にも広げた1998年以来の大幅改正となる。
 障害者の雇用機会拡大につながるものとして期待は大きい。雇用増に向けた企業努力はもちろんだが、国も企業が障害者を受け入れやすいような支援策の充実を急ぎたい。
 改正法は、事業主に障害者への差別を禁止し、障害の特性に配慮した施設の整備や、援助者の配置なども義務づけた。
 企業には障害者を受け入れる準備のための知識習得と理解が欠かせない。厚労省は2016年4月までに、差別や配慮の具体例を列挙したガイドラインの策定方針を示している。働きやすい職場環境づくりには、あくまで企業に過酷な負担とならない範囲で、厳しめの指針設定が望まれよう。
 昨年の民間企業に勤務する障害者は約38万人。全国のハローワークを利用した就職は6万8000人と、過去最多を更新した。法定雇用率は4月から引き上げられ2.0%になった。これを見越した企業が採用活動を活発化させたとみられている。だが、法定雇用率達成企業は半数にも満たないのが実態だ。
 求人は最近、特に精神障害者向けが増えたものの、実際の採用につながらないケースが多いという。精神障害者は好不調の波が激しく、企業はきめ細かくその状態をつかんだうえでの柔軟な職場づくりをする必要があるからだ。ただし、適切な支援があれば就労可能だということをしっかりと認識しておきたい。
 国は、試用期間中の人件費の一部を助成する現行のトライアル雇用期間の延長など制度拡充策を具体化すべきだ。障害特性に合う仕事の見極めに資する制度で、障害者にとっても企業で実際に働いて、課題の掌握や克服に取り組むことは意義があろう。
 さらに、障害者の意向を企業につなぐ人材の育成・拡充や日常生活の支援、体調を維持して仕事を続けるための医療体制の整備充実なども図りたい。
 こうした環境が整えば、企業も雇用に前向きになりやすい。企業も法定雇用数不足分の納付金を納めるからそれで事足れりではいくまい。障害者もともに社会を支える一員だということを忘れてはならない。障害の有無にかかわりなく地域で暮らせる共生社会に近づける努力を、企業も国も惜しんではならない。

愛媛新聞-2013年06月21日(金)


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