認知症や知的障害などで判断力が不十分なため成年後見人を付けた人が、今回の参院選から投票ができるようになった。
後見制度を利用すると自動的に失われてきた選挙権と被選挙権が、公職選挙法の改正で認められたからだ。対象となるのは全国で約13万6千人、道内で約5400人に上る。
憲法はすべての成人に選挙権を保障している。政治参加の道が開かれたのは当然で、改正はむしろ遅きに失した感がある。
権利を回復したとはいえ、支障なく1票を投じることができなければ意味がない。総務省や選挙管理委員会は制度改正の周知を徹底するとともに、投票が円滑に行われるよう環境整備を急ぐべきだ。
成年後見人は親族や第三者が後見人となり、本人に代わって財産を守る制度だ。2000年の発足当初から、その利用者が選挙権を喪失するのは筋違いとの指摘が多かった。
東京地裁が3月に「公選法の規定は違憲」と判断した。改正は原告らに大きな希望を与えたに違いない。
新制度を定着させるうえでも、不正が生じることのないよう対策の強化が求められる。
かつて病院や老人ホームの職員が入所者に特定候補への投票を働きかける事件が相次いで起きた。
改正公選法は、こうした施設での不在者投票について職員が無断で投票しないよう、新たに第三者の外部立会人を配置する努力義務を施設に課した。妥当な措置と言えよう。
だが、各選管は施設任せにしてはならない。明るい選挙推進委員や選挙業務に精通している職員OBなどに呼びかけて、立会人確保に万全を期してほしい。
投票所で代理投票をする際も、代筆役は選管職員ら市町村職員などに限定された。
どの候補に投票したいのか、本人の意思を確認するのが難しいケースもあるだろう。粘り強く聞き取る努力はもちろん、総務省や選管は現場からの問い合わせに丁寧に対応しなければならない。
法成立から2カ月も経過しておらず、態勢が十分とは言えまい。各選管は選挙後に課題や成果を洗い出し、教訓を次に生かす必要がある。
今回、選挙権を回復したのは政治の救いの手を最も必要としている人たちだ。候補者もわかりやすい言葉で政策を訴える工夫が欠かせない。
多様な声を政策に反映させることこそが、暮らしやすい社会を築く礎となる。さらに多くの障害者が投票に加われるよう、政治参加の道筋を一層強固にしたい。
北海道新聞-(7月6日)
後見制度を利用すると自動的に失われてきた選挙権と被選挙権が、公職選挙法の改正で認められたからだ。対象となるのは全国で約13万6千人、道内で約5400人に上る。
憲法はすべての成人に選挙権を保障している。政治参加の道が開かれたのは当然で、改正はむしろ遅きに失した感がある。
権利を回復したとはいえ、支障なく1票を投じることができなければ意味がない。総務省や選挙管理委員会は制度改正の周知を徹底するとともに、投票が円滑に行われるよう環境整備を急ぐべきだ。
成年後見人は親族や第三者が後見人となり、本人に代わって財産を守る制度だ。2000年の発足当初から、その利用者が選挙権を喪失するのは筋違いとの指摘が多かった。
東京地裁が3月に「公選法の規定は違憲」と判断した。改正は原告らに大きな希望を与えたに違いない。
新制度を定着させるうえでも、不正が生じることのないよう対策の強化が求められる。
かつて病院や老人ホームの職員が入所者に特定候補への投票を働きかける事件が相次いで起きた。
改正公選法は、こうした施設での不在者投票について職員が無断で投票しないよう、新たに第三者の外部立会人を配置する努力義務を施設に課した。妥当な措置と言えよう。
だが、各選管は施設任せにしてはならない。明るい選挙推進委員や選挙業務に精通している職員OBなどに呼びかけて、立会人確保に万全を期してほしい。
投票所で代理投票をする際も、代筆役は選管職員ら市町村職員などに限定された。
どの候補に投票したいのか、本人の意思を確認するのが難しいケースもあるだろう。粘り強く聞き取る努力はもちろん、総務省や選管は現場からの問い合わせに丁寧に対応しなければならない。
法成立から2カ月も経過しておらず、態勢が十分とは言えまい。各選管は選挙後に課題や成果を洗い出し、教訓を次に生かす必要がある。
今回、選挙権を回復したのは政治の救いの手を最も必要としている人たちだ。候補者もわかりやすい言葉で政策を訴える工夫が欠かせない。
多様な声を政策に反映させることこそが、暮らしやすい社会を築く礎となる。さらに多くの障害者が投票に加われるよう、政治参加の道筋を一層強固にしたい。
北海道新聞-(7月6日)