家族や福祉施設の職員らから暴力や暴言などの虐待を受けた障害者が、昨年10月からの半年間に全国で1505人に上ることが厚生労働省のまとめで分かった。死亡者も3人いた。
昨年10月に施行された障害者虐待防止法は、虐待の可能性に気づいた人に自治体への通報を義務づけた。今回施行後初めて集計結果を公表した。
障害者は虐待を受けても外部に訴えにくく、被害が表面化しづらいことを考えれば、公表された被害は「氷山の一角」とみるべきだろう。国や自治体は相談窓口の一層の充実を図る必要がある。
鹿児島県内では家庭での被害が9件、施設内2件の計11件が認定された。「障害年金を渡さない」などの経済虐待が6件、身体的虐待2件、怒鳴るなどの心理的虐待1件だった。
全国では、親やきょうだいによる虐待が全体の9割近くを占めた。家庭内は身体的虐待が最多の790件、日常の世話をしない「放棄・放置」が277件だった。福祉施設などでは「身体」40件のほか、差別的言動などが42件、性的虐待も10件に上り、被害は深刻である。
気になるのは施設内での虐待だ。900件を超える相談・通報を受けたにもかかわらず、認定は1割に満たない。証拠が見つからず断定できなかった例があり、全容把握にはほど遠いといえる。
施設は部外者が虐待に気づきにくく「密室化」する傾向がある。被害を食い止めるには、第三者がふだんから施設の運営に目配りすることが必要だろう。福祉団体などとの連携を求めたい。
虐待防止法施行に伴い、自治体に通報窓口の設置が義務化された。県内でも市町村・地区34カ所と県に設置された。緊急事態には職員が立ち入り調査や一時保護も行うようになったのは評価できる。
しかし、職員体制など課題は少なくない。知的障害者と家族の全国組織「全日本手をつなぐ育成会」の調査によると、専任職員だけの自治体は3月末時点で4%にすぎない。職員数も3割が2人以下という。
県障害福祉課によると、県内の窓口も市町村の事務職員の兼務が大半だ。財政難で人員増は難しくても、研修によって専門性を高めることはできる。人材育成に力を入れ、窓口の体制強化を図っていかなければならない。
虐待の早期発見には、地域社会が積極的に関わっていくことが欠かせない。障害者が安心して暮らせるよう、一人一人が考え行動することが重要である。
南日本新聞-( 11/23 付 )
昨年10月に施行された障害者虐待防止法は、虐待の可能性に気づいた人に自治体への通報を義務づけた。今回施行後初めて集計結果を公表した。
障害者は虐待を受けても外部に訴えにくく、被害が表面化しづらいことを考えれば、公表された被害は「氷山の一角」とみるべきだろう。国や自治体は相談窓口の一層の充実を図る必要がある。
鹿児島県内では家庭での被害が9件、施設内2件の計11件が認定された。「障害年金を渡さない」などの経済虐待が6件、身体的虐待2件、怒鳴るなどの心理的虐待1件だった。
全国では、親やきょうだいによる虐待が全体の9割近くを占めた。家庭内は身体的虐待が最多の790件、日常の世話をしない「放棄・放置」が277件だった。福祉施設などでは「身体」40件のほか、差別的言動などが42件、性的虐待も10件に上り、被害は深刻である。
気になるのは施設内での虐待だ。900件を超える相談・通報を受けたにもかかわらず、認定は1割に満たない。証拠が見つからず断定できなかった例があり、全容把握にはほど遠いといえる。
施設は部外者が虐待に気づきにくく「密室化」する傾向がある。被害を食い止めるには、第三者がふだんから施設の運営に目配りすることが必要だろう。福祉団体などとの連携を求めたい。
虐待防止法施行に伴い、自治体に通報窓口の設置が義務化された。県内でも市町村・地区34カ所と県に設置された。緊急事態には職員が立ち入り調査や一時保護も行うようになったのは評価できる。
しかし、職員体制など課題は少なくない。知的障害者と家族の全国組織「全日本手をつなぐ育成会」の調査によると、専任職員だけの自治体は3月末時点で4%にすぎない。職員数も3割が2人以下という。
県障害福祉課によると、県内の窓口も市町村の事務職員の兼務が大半だ。財政難で人員増は難しくても、研修によって専門性を高めることはできる。人材育成に力を入れ、窓口の体制強化を図っていかなければならない。
虐待の早期発見には、地域社会が積極的に関わっていくことが欠かせない。障害者が安心して暮らせるよう、一人一人が考え行動することが重要である。
南日本新聞-( 11/23 付 )