Quantcast
Channel: ゴエモンのつぶやき
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

聴覚障害者の支えに 聴導犬訓練士 秋葉圭太郎さん

$
0
0
 二十七歳で脱サラし、聴導犬訓練の世界に飛び込んだ。それから約四年。秋葉圭太郎さん(31)は訓練士として聴導犬デビューを目指し、試行錯誤を続ける。うまくいかず、悔しさが募る日々。ある聴覚障害者の女性の言葉が今も目に焼きつき、支えになっている。それは手話だった。

 《聴導犬と生活して、子どもを産もうと決断できた。人生が変わった》

 女性は四十代の主婦。訓練中にたまたま話を聞いた聴導犬利用者だった。女性は生まれたばかりのわが子に目をやり、ほほ笑んでいた。「本当に幸せな光景だった。それが今も励みになっている」

 秋葉さんは大学卒業後、東京・銀座の広告会社に就職した。毎晩遅くまで働き、企業のポスターや電車の中づり広告を手掛けた。広告はたくさんの人の目に触れ、自身の収入も十分だった。

 ただ、本当にやりたいことは別にあると感じるようになった。「誰かの人生に深く関わる仕事をしたい」。思い切って退社を決め、福祉の仕事を探した。そのころ研修生を募集していたNPO法人「聴導犬普及協会」(ふじみ野市)を知り、門をたたいた。一年間の研修を経て、二十八歳でスタッフに。現在は訓練士兼広報担当として働く。

 聴導犬は、目覚まし時計やインターホンの音に気づくと、聴覚障害者の体に触れて伝える。外出時は、車や自転車が近づいてくるのを教え、銀行や病院では名前の呼び出しも聞き分ける。二〇〇二年施行の身体障害者補助犬法は、スーパーや飲食店などの公共的な施設に盲導犬や介助犬、聴導犬の同伴者の入店を認めるよう義務づけている。

 訓練は犬の生後二〜三カ月に開始。まずは音に興味を持ってもらうことから始める。段階的に音の場所を探したり、人を誘導したりさせ、外出先で落ち着いて行動できるかなど実践的な訓練へ進む。

 聴導犬としてデビューできるまでには約二年かかる。犬種に制限はないが、聴導犬になるのは十匹に三匹ほどという。秋葉さんはこれまで四匹を担当したが、いずれも聴導犬にはなれていない。「先輩訓練士とは力の差がある。経験を積み、犬の気持ちを分かるようにならなきゃだめ」と自らを叱咤(しった)する。

 聴導犬は現在、国内に五十一匹いる。盲導犬に比べ認知度が低く、飲食店などで入店を拒否されるケースや、仕事中の聴導犬を触ろうとしたりする人も少なくない。秋葉さんは訓練の傍ら、学校や地域のイベントで聴導犬のPRにも力を入れる。

 今月か来年一月には、新たな候補犬を迎える予定だという。「聴導犬と聴覚障害者は人生のパートナー。その手伝いができると思うと、大変でもやらなきゃと思えるんです」 (岡本太)

 あきば・けいたろう 千葉県山武市出身、ふじみ野市在住。小学校低学年から、母親が拾ってきた雑種犬を育てたが、聴導犬については「この世界に入るまで知らなかった」。聴導犬普及協会は寄付で運営しており、居酒屋のアルバイトで生計を立てている。仕事とアルバイト以外の時間は手話や法律などの勉強に充てている。


聴導犬のPR犬を連れて歩く秋葉圭太郎さん=ふじみ野市で

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>