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2020年の主役たち:広島からTOKYO五輪へ/5 障害者投てき・皆川理さん /広島

 ◆障害者投てき 広島市職員・皆川理さん(37)=安佐南区

 ◇かっこいい姿を家族に

 希望は、青空に向かっていった。

 「パラリンピックが東京に決まり、いよいよやる気が出てきた」

 視覚障害を持つ投てき種目のアスリート。現在はパラリンピックの正式種目ではないソフトボール投げなどに取り組んでいるが、6年後に照準を合わせ、種目変更に取り組むつもりだ。

 安佐北区出身で、中学から大学まで陸上の短距離選手として活躍した。大学卒業後は地元企業に就職。順調な毎日を送っていた。

 ところが30歳を過ぎた頃、仕事で車を運転中、不意に信号機が視界に入らなくなった。不安を感じて病院で診察を受けると、視界が極端に狭くなる「網膜色素変性症」と診断された。「食欲もなくなり、未来に希望が持てなくなった」と、当時を振り返る。

 失意から立ち直るきっかけは、地元の友人の紹介で妻(39)と出会ったことだった。病院勤務の経験があった妻は、障害に対しての理解が深かった。夫婦間には今、4歳と1歳の男の子2人がいる。将来を考え始めた2011年、市の障害者採用に応募し合格した。職場には電車と徒歩で通っているが、安全に歩くためのつえが欠かせない。

 障害者スポーツを始めたきっかけは、転職後に妻から勧められたためだ。広島市で障害者大会が開かれると聞き、陸上部時代の血が騒いだ。走る際に視界の狭さは恐怖感を生むため、ソフトボール投げで出場。いきなり優勝した。練習すればするほど、記録が伸びていく。成長していく自分に喜びを感じた。

 昨年10月には全国障害者スポーツ大会に出場し、ソフトボール投げと小型のやりを投げる「ジャベリックスロー」で、それぞれ2位になった。長男に銀メダルを見せると、「すごい」とはしゃいだ。

 実力を伸ばしてきたが、パラリンピックに出場することは現実的なものとして受け止めていなかったという。意識が変わったのは東京開催が決まったこと。早朝から起き出して見た開催決定のテレビニュースは、遠い存在を身近な目標へと変えてくれた。開催が決まってからは、練習時間も増やした。仕事を終えて自宅に帰っても筋力トレーニングを欠かさず行う日々だ。

 6年後、次男も物心が付いているだろう。大観衆が見つめる舞台に立つためのハードルは、決して低くはない。だからこそ、挑戦を続けたいと思う。

 「障害に負けない、かっこいい親父(おやじ)の背中を見せたい」家族の声援が背中を押す。

毎日新聞 2014年01月07日 地方版


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