Quantcast
Channel: ゴエモンのつぶやき
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

一歩一歩の成長見守る

$
0
0
 福井県敦賀市に、新しい福祉のあり方に挑戦している施設がある。一軒家を改装した、グループホームのような福祉サポート施設「ワンシード」。

 「福祉を必要とする人が制度に合わせるのではなく、その人のための福祉をつくりたい」と、開設者で社会福祉士の吉田こずえさん(63)は言う。

 利用者は、小学校低学年から七十代のお年寄りまで四十人余。主に知的障害などハンディのある人を受け入れるほか、社会的に困っている人のニーズに柔軟に応えるのがモットーだ。母子・父子家庭の子どもや介護が必要なお年寄りを、家族が求める時間帯や期間に合わせて預かったり、引きこもりの若者の自立を支援したり。

 障害や心の病、家庭の事情、社会的な挫折などを抱えた、さまざまな人が集う。多様な人との出会いがあるから、利用者は自分の役割や居場所を見つけやすくなる。

 知的障害のある五十代の女性は、学童保育で子どもたちが来るのを楽しみにしている。「子どもたちの遊びを見守るのが私の役割。ここではいろんな人に出会えて、一日が楽しいです」と、恥ずかしそうに笑う。

 午前十時を過ぎ、皆で昼食の準備にかかる。ニンジンを刻む、ジャガイモの皮をむく。多少の時間はかかるが、一人一人ができることを、できるだけやる。吉田さんは彼らの成長の一歩、また一歩を見逃さない。

 重度の知的障害のある伯母との縁で、吉田さんは高校時代に福祉の道を選んだ。日本福祉大を卒業後、精神科病院のソーシャルワーカーを経て敦賀市職員となり、その後、障害者の支援に約三十年間携わった。

 最も悩まされたのは、福祉制度の枠組みで対応しにくいケース。公的支援である以上、サービスの画一化や利用の線引きは、ある程度避けられない。その結果、福祉施設の利用が制限され、家族の仕事の事情や、本人の急な病気などによる緊急時の対応が、おざなりになる。「個別の悩みを聞いても、何もできないもどかしさがあった」と振り返る。

 二〇〇五年、がんになった夫の看病のために市職員を辞した。福祉にかける妻の良き理解者だった夫は、まもなく亡くなった。その少し前、一つの言葉を残した。「あんたやったら何でもできる。悔いのない人生を送りなさい」。〇九年、蓄えたお金を元手に、志を共にする仲間と、現在の法人を設立した。

 十一人のスタッフを回し、ボランティアの協力も得ながら、利用者の送迎から事務処理までこなす多忙な毎日が続く。そんな中でも、いつも心にあるのは「皆、一人の人間として、ステップアップを続けてほしい」ということ。それは障害のある利用者に限らず、施設にかかわる全員のテーマだ。「皆と一緒に私自身、まだまだ向上したいんだもの」


障害のある人たちと一緒に昼食を作る吉田こずえさん(右)。さまざまな事情を抱えた人が集って、互いに成長し合う福祉を目指す=福井県敦賀市で

中日新聞 : 2014年1月8日

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>