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等しく生きる:障害者条例制定へ/4 「失語症」 救急隊員も無理解 /茨城

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 ◇「命にかかわる問題」

 龍ケ崎市の自宅居間で、赤嶺愛子さんは夫智さん(60)と並んで座り、ゆっくりと新聞を読み上げた。「(駐日大使の)ケネディ、分かる? こんなに大きくなって」。夫は妻の言葉にうなづく。失語症を患う智さんはひらがなやカタカナが分からなくなったため、新聞などを読んであげることが日課になった。

 智さんは2001年9月、脳の動脈瘤(りゅう)の手術後、脳梗塞(こうそく)となり、意識不明に陥った。1カ月後、意識は回復したものの、脳に障害を負い、失語症と右半身まひが残った。失語症は脳の言語中枢が損傷し、言語活動が困難になる障害。症状は十人十色で、智さんは相手の話を理解できるが、ほんのわずかしか自分の意思を伝えられない。

 退院後、会話が成立せず、家族の会話がなくなった。愛子さんの姿を見て、愛犬の名前「華(はな)」と呼び、子どもの名前も間違えてしまう。自身も誤りには気付いているが訂正できず、イライラしている。当時、小4〜高1の子ども3人も父を避けるようになった。愛子さんは「死にたいと思った」。

 さらに、愛子さんを悩ませたのが、社会の無理解だ。智さんは12年6月、胸をトントンとたたきながら起きてきた。愛子さんは心臓発作を疑い、119番。到着した救急隊員にも、智さんは「胸が苦しい」としか答えることができない。愛子さんが「夫は失語症です」と伝えたところ、救急隊員は「失語症って何ですか?」。予期せぬ返事に耳を疑った。

 うまく症状を伝えられなければ、適切な治療を受けられない。愛子さんは「命にかかわる問題。少なくとも公共機関や医療関係者は理解してほしい」と訴えた上で、「今は社会のすべてが障害になっている。条例をきっかけに失語症を知ってもらい、手を貸してくれる人を増やしたい」。条例制定をきっかけに理解が深まってほしいと強く願っている。

毎日新聞 2014年03月07日 地方版

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