「弱い立場の人たちのためにつくった団体。力になれる限り、頑張りたい」。NPO法人として県内で初めて職業紹介事業を始めた「埼玉就業支援システム」(さいたま市北区)。五月で設立から十年を迎える。理事長の佐々木広司さん(67)を中心に、リストラされた中高年や障害者らの就業支援を続けてきた。
佐々木さんもリストラ経験者。五十五歳の時、約三十年務めた外資系の電子部品メーカーを早期退職した。「社会貢献のような活動をしたいと思っていたので、気持ちの切り替えは早かった」。ショックだったのは、同時期に辞めた同僚たちが再就職に苦しむ姿だった。
「退職後、一カ月ほど旅行して帰ってきたら、誰も就職できないでいる。声もかからない」。憤慨した。そこで「力になれれば」と、職業紹介会社に就職した。だが「営利主義で、若い人が優先される。中高年や障害者に時間をかけ、きめ細かく対応するのは難しい」。元同僚や友人に呼び掛け、「リストラ従業員のサポートを考える会」を結成。職業紹介会社を退社し、考える会を発展させる形でNPO法人を立ち上げた。
スタッフは現在五人で、ほとんどが六十代。企業からの紹介手数料が収入だが「無給でボランティアの状態」だ。職を求める登録者は約七百人になる。モットーは「登録者とじっくり話し合い、一緒に『やりたい仕事』を考えていく。紹介後も企業、登録者双方から改善してほしい点や悩みを聞き、しっかりフォローアップする」。
求人・求職のミスマッチに悩むが、「信頼関係を築くのが大切」という。パソコン関連会社をリストラ後、貴金属関係の店に就職し、店長になった五十代の男性もいる。「最初は『できない』と言っていたが、人間性を見て『あなたならできる』と話した。今は『やりがいがある』と言ってくれる。うれしいですね」
二月に県の雇用創出事業を活用し、上尾市に「コミュニティカフェ希望」をオープンした。スタッフ五人を雇用。若者を含め、就職活動中の人が気軽に立ち寄り、情報交換や相談できる場として利用してもらう考えだ。求人票を掲示し、パソコン講習も予定する。
就職に悩む人に「挑戦する気持ちを失わないで。希望業種はあるだろうが『それ以外はできない』と考えず、多くのことを勉強して」とエールを送る。企業には「中高年や障害者も会社の力になる。個性や立場を踏まえ、能力をどうやって生かせるか見つけるのが経営者や管理者の仕事。もっと人を育ててほしい」と注文した。 (石井宏昌)
<ささき・ひろし> 蓮田市在住。大手電子部品メーカーの県内拠点を早期退職。2004年にNPO法人・埼玉就業支援システムを設立。05年に有料職業紹介事業者として国の認可を受ける。支援システム=電048(653)3501=の開所は原則平日の午前10時〜午後4時(時間外や土日・祝日の対応は要相談)。コミュニティカフェ希望=電048(783)4148=は午前8時半〜午後9時半(年末年始は休み)。
2014年3月31日 東京新聞
佐々木さんもリストラ経験者。五十五歳の時、約三十年務めた外資系の電子部品メーカーを早期退職した。「社会貢献のような活動をしたいと思っていたので、気持ちの切り替えは早かった」。ショックだったのは、同時期に辞めた同僚たちが再就職に苦しむ姿だった。
「退職後、一カ月ほど旅行して帰ってきたら、誰も就職できないでいる。声もかからない」。憤慨した。そこで「力になれれば」と、職業紹介会社に就職した。だが「営利主義で、若い人が優先される。中高年や障害者に時間をかけ、きめ細かく対応するのは難しい」。元同僚や友人に呼び掛け、「リストラ従業員のサポートを考える会」を結成。職業紹介会社を退社し、考える会を発展させる形でNPO法人を立ち上げた。
スタッフは現在五人で、ほとんどが六十代。企業からの紹介手数料が収入だが「無給でボランティアの状態」だ。職を求める登録者は約七百人になる。モットーは「登録者とじっくり話し合い、一緒に『やりたい仕事』を考えていく。紹介後も企業、登録者双方から改善してほしい点や悩みを聞き、しっかりフォローアップする」。
求人・求職のミスマッチに悩むが、「信頼関係を築くのが大切」という。パソコン関連会社をリストラ後、貴金属関係の店に就職し、店長になった五十代の男性もいる。「最初は『できない』と言っていたが、人間性を見て『あなたならできる』と話した。今は『やりがいがある』と言ってくれる。うれしいですね」
二月に県の雇用創出事業を活用し、上尾市に「コミュニティカフェ希望」をオープンした。スタッフ五人を雇用。若者を含め、就職活動中の人が気軽に立ち寄り、情報交換や相談できる場として利用してもらう考えだ。求人票を掲示し、パソコン講習も予定する。
就職に悩む人に「挑戦する気持ちを失わないで。希望業種はあるだろうが『それ以外はできない』と考えず、多くのことを勉強して」とエールを送る。企業には「中高年や障害者も会社の力になる。個性や立場を踏まえ、能力をどうやって生かせるか見つけるのが経営者や管理者の仕事。もっと人を育ててほしい」と注文した。 (石井宏昌)
<ささき・ひろし> 蓮田市在住。大手電子部品メーカーの県内拠点を早期退職。2004年にNPO法人・埼玉就業支援システムを設立。05年に有料職業紹介事業者として国の認可を受ける。支援システム=電048(653)3501=の開所は原則平日の午前10時〜午後4時(時間外や土日・祝日の対応は要相談)。コミュニティカフェ希望=電048(783)4148=は午前8時半〜午後9時半(年末年始は休み)。
2014年3月31日 東京新聞