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見えなくても働ける 通勤もPCも

視覚障害者、特にこれまでは見えていたのに途中で視力を失う中途視覚障害者にとって、会社で働くことは容易ではないと考えられています。
目が見えなくなったことで、退職に追い込まれる働き盛りの人も少なくありません。
しかし、「目が見えなくてもパソコンも使えるし、1人で通勤もできる」。
そう訴えて視覚障害者の雇用を促すガイドブックが完成、先月から配布が始まりました。
作成を手がけたNPOは、「目が見えないのに働けるわけがない」と尻込みしてきた企業の意識を変えるきっかけにしたいとしています。

厚生労働省の統計によると、緑内障や糖尿病など目の病気や事故などで、視覚障害者として新たに障害者手帳を取得する人は毎年13000人以上います。
この中には、働き盛りで目が見えなくなる人も多くいるとみられていますが、視覚障害者はもともと障害者の中でも雇用のハードルが高いのが現状です。
こうした視覚障害者の雇用を促そうと、長年、中途視覚障害者の相談を行ってきたNPO法人「タートル」(東京・新宿区)がガイドブックを作りました。

通勤もパソコン操作も可能

ガイドブックには、視覚障害者にできる仕事や職場復帰の成功例、職場で必要なサポートなどがまとめられています。
企業側がまず懸念するのは、「会社までどうやって安全に通勤してくるのか」「目が見えないのにどんな仕事ができるのか」といったことです。
しかし、視覚障害者向けに作られた専門的な自立訓練や職業訓練を受けることで、つえを使って1人で通勤もできるようになるし、社内でも安全に歩けるようになるといいます。
また意外と知られていないこととして、パソコンの画面を音声で読み上げるソフトを導入して訓練すれば、職場でパソコンの操作やワードやエクセルの使用、電子メールのやり取りもできるようになるということです。
失明したあとでも訓練次第で仕事に必要な技能を身に着けられるため、企業側の懸念は解消できるというのです。
ガイドブックでは、実際にこうした訓練を経て職場復帰した成功例も多くのページを割いて紹介しています。
例えば、大手建設会社で働く福岡県の40歳の男性。
今から10年前、建設工事の現場で鉄パイプが落ちてきて、両目の視力を失いました。
一度は激しく落ち込んだというこの男性。
まず6か月間にわたって歩行と日常生活動作を訓練し、そのあと1年間は音声パソコンの訓練をコツコツ続けました。
こうした努力のかいあって、今は元の会社で工事の資材調達担当の事務職として復帰しているいうことです。
これまでの経験も生かして、パソコンで専門的な書類を作成したり、取引業者と電話やメールで交渉もしており、前向きな男性の仕事ぶりが職場にもよい雰囲気をもたらしていると言います。

どんな仕事が向いているのかを一覧に

また、視覚障害者に向いている仕事を一覧にして企業に提案しています。
例えば、▽ワードやエクセルを使った書類の作成や電話・電子メールのやり取りなどの事務作業。
▽障害があることを活用した障害者雇用の面接やユニバーサルデザインの製品開発。
▽お客さま窓口での電話応対、苦情処理を受ける電話業務などです。

眼科医と産業医の協力も重要

さらに、眼科医と産業医の協力も必要だとしています。
NPOによりますと、目が見えなくなり相談してくる人は40歳代から50歳代と働き盛りの人が多く、こうした人の就労は企業だけでなく周囲が一丸となって支援する必要性を訴えています。
このため、企業の前向きな姿勢に加えて、眼科医と産業医は互いに協力して、どんな工夫をすれば仕事ができそうかを本人とよく話し合って企業側が納得するような「前向きな」診断書を書いたり、職場との橋渡しをしっかりしてほしいとしています。
NPO法人「タートル」の理事の篠島永一さんは「情報通信の発達で、視覚障害者もパソコンを駆使できるようになっている。働き盛りの中途視覚障害者は、これまで培ってきた仕事のノウハウも生かせる強みもあり、企業は初めから働けないと決めつけず、視覚障害者の雇用を前向きに考えてほしい」と話しています。
ガイドブックは1000部用意され、企業やハローワーク、眼科医などに配布されているほか、「タートル」のホームページでも同じ内容を公開し活用を促しています。
問い合わせは03−3351−3208(NPO法人「タートル」)

2014年(平成26年)4月5日[土曜日]NHK

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