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自立目指す、障害者アーティスト集団 個性で稼ぐ

 福岡空港から車で10分ほど、福岡市博多区ののどかな住宅街に障害福祉サービス事業所、JOY倶楽部がある。ここのアート部門「アトリエブラヴォ」では、知的障害者らが絵画やオブジェなどを商品として作っている。

■13人のアーティスト

 メンバーは13人。週に5日、1日約4時間作品づくりに取り組んでいる。障害は自閉症やダウン症、知的障害など違いがあるが、いずれも個性的な作品を生み出すアーティストだ。

 作業場でメンバーたちを時におだて、時に叱りながら引っ張っているのは、副施設長の原田啓之さんと美術指導員の松尾さちさんの2人。

 松尾さんは作品について技術的なアドバイスをし、締め切りの近いメンバーの尻をたたく。原田さんはアトリエブラヴォのやり手営業マンであり、外の世界との橋渡し役だ。原田さんは「社会人としての自覚を持って依頼主とコミュニケーションをとってほしい」と積極的にメンバーをクライアントに引き合わせる。またライブペイントなどのイベントを積極的に開き、人前に出る機会を多く作っている。

 クライアントたちはユニークな作品のみならず、障害を持ちながらも生き生きと仕事に打ち込むメンバーたちに魅了されている。アトリエブラヴォのファンとなって繰り返し仕事を依頼してくる人や、宣伝マンとなって仕事の仲介をしてくれる人が全国にできている。

 立ち上げてから12年。現在の状況について原田さんは「障害など関係なくなって、クライアントとナチュラルな関係ができてきた」と、活動がビジネスとしてうまく回っていることに自信を深めている。

■珍しい収益面での成功

 全国にある障害者のための就労施設は現在、農業から飲食店、クリーニング工場など多岐にわたる。企業でも自立支援のために障害者の雇用を増やす取り組みが広がっている。
 公益財団法人、日本知的障害者福祉協会(東京・港)の末吉孝徳事務局長は「収益面で成功している例はごくわずかで、利用者が楽しくて豊かな生活を送れるようになるにはほど遠い。アトリエブラヴォの高い給与は本当にすごいこと」と話す。

 アトリエブラヴォのメンバーが月に受け取る給与は約5万円、全国に約8000ある同種の事業所の平均14190円(平成24年度、厚生労働省)を大きく上回る。

 末吉事務局長は「利用者一人ひとりの得意分野を生かしている点が大きな強みになっているのだろう。最近では工場の下請けのような単純作業を障害者にさせる施設は少なくなってきている。アートだけでなく音楽なども、障害者が自立するうえで一つの大きな可能性を秘めているのではないか」と分析している。(

2014/5/6 6:30 日本経済新聞

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