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「手話交番」20年 警視庁、中野には女性警官も

 東京都内では、六カ所の交番で手話対応ができる警察官が活動している。この「手話交番」を警視庁が設置してから、今年で二十年。五月には女性警察官が勤務する手話交番もスタートした。二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向け、バリアフリー面でも「おもてなし」を充実させたい考えだ。

 環七沿いにある中野区の野方一丁目交番。入り口に「手話交番」の看板が掛かる。「耳の不自由な人にも積極的に立ち寄ってほしい」。挿絵付きの指さし会話帳と、筆談用の紙をとじた自作のファイルを手に、藤川千枝子巡査長(24)が笑顔で話す。

 両親が聴覚障害者という藤川巡査長は四月、警視庁の手話技能検定二級に合格した。二級は、日常会話はもちろん、被害届の受理など警察の仕事で手話を活用できるレベルだ。

 手話は両親を見ていて、物心がつくころには何となく覚えたという。警察官になると、上司の勧めもあり検定に臨んだ。

 警視庁は一九九〇年代から検定を実施。〇一年からは年二回、手話の実務講習も行っている。二級を取得した警察官は約三百人、手話で事情聴取などができる一級は約七十人。二級以上の警察官がいる手話交番は野方一丁目のほか、芝四丁目(港区)、蓮根(板橋区)、中台(同)、下北沢(世田谷区)、平尾(稲城市)だ。

 野方署では署独自の取り組みとして、藤川巡査長が中心となり自前の教材を作成。朝の勤務時間前などに、同僚や後輩らが手話を学んでいる。警視庁地域総務課は「東京五輪・パラリンピックでは、多くの人が集まる。手話ができる警察官が増え、手話交番が広がればいい」と取り組みを促している。

◆新人・実習生に独自講習

 耳の不自由な人をめぐっては、川崎市中原区で二〇一一年七月、交通事故に巻き込まれた聴覚障害のある女性が、駆け付けた警察官に手話通訳者の派遣を再三求めたのに、取り合ってもらえないまま実況見分が行われたケースがある。

 人身事故が一時、物損事故として処理された。警察官の理解不足が招いたとみられ、全日本ろうあ連盟(東京都新宿区)は一一年九月、交通事故や申請手続きなどで、聴覚障害者に適切に対応するよう警察庁に文書で要請した。

 この問題を受け、中原署は川崎市聴覚障害者情報文化センターに協力を要請。一一年度から研修の一環として、新任警察官がセンター職員から直接、簡単な手話や筆談などの講習を受ける独自の取り組みを進めている。

 一三年度からは、署で研修する警察学校の実習生にも対象を広げた。署の担当者は「手話で対応できることにはならないが、意識を高めることで、聴覚障害者の方と距離も縮まる」と狙いを説明する。

 手話通訳事業の制度化などに取り組む都内の聴覚障害者の女性(39)は「警察学校での授業に聴覚障害者への実演対応を取り入れるなど、実効的な取り組みも進めてほしい」と注文する。

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「あいさつ」の手話を示しながら「耳の不自由な人にも積極的に立ち寄ってほしい」と話す藤川千枝子巡査長。手前は自作のファイル=東京都中野区で

2014年6月25日 夕刊 東京新聞

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