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Channel: ゴエモンのつぶやき
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北陸ひと模様:障害者の自立生活センター代表・吉田知栄美さん /福井

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◇意思伝え、自ら環境変える−−吉田知栄美さん

 障害者自立活動先進国のアメリカで学んだ経験を基に、2002年に県内唯一の自立生活センターの創設に携わった。先天性の脊髄(せきずい)性筋萎縮症で、重度の障害がある。今は、障害者の自立生活支援や情報提供、企業や大学での講演活動をしている。

 渡米したのは、県立大の大学院生時代。00年8月に、「東海北陸車いす・市民交流集会」の運営に参加し、「自立生活の拠点を作りたい」と感じたのがきっかけだった。1年間休学して、セントルイスとシカゴの自立生活センターで計10カ月間、インターンシップとして相談業務にあたった。

 セントルイスの所長の言葉が印象に残る。「環境を変えれば、その人が感じる障害は軽くも重くもなる。だから私は環境を変える」

 環境は、自分の意思を伝えることで変わると感じたことがある。リフト付きタクシーを予約した時のこと。タクシー会社からリフトの故障を理由に直前で解約された。泣き寝入りしそうになると、センター職員から「しっかり意思を通すべきだ」と言われた。後日、リフトが故障しても別の方法でタクシーを利用できることになった。

 帰国後、友人らと自立生活センターを作った。障害者を支援しながら、バスや鉄道の会社と話し合いを重ね、意見を述べてきた。福井市の部会にも参加し、政策提言している。

 子供の頃、両親は小学校の普通学級へ通わせようとした。だが、学校側に「次にいつ障害者が入学するかわからず、設備のために予算がつけられない」と断られ、中学も地域の学校へは進めなかった。

 養護学校(現・特別支援学校)へ入ったが、「健常者に負けないように頑張れ」と思われている気がして、自らを否定し続けた。転機は「頑張らなくてもいい。自分を認めてあげたら」という先生の言葉。肩の荷が下りた。大学では、学園祭をしたり、夜遅くまで遊んだり、旅行をしたり。「普通の生活」を楽しんだ。

 現在は、重度障害者約15人の自立生活を支援する。生活の主体である当事者の意思を尊重する。また、1年に2度、特別支援学校の生徒らから、「本屋へ行きたい」などの要望を聴いて、「初体験」を支える。「地域で障害者の顔が見えることが大切。社会の中に障害者を取り込み、障害者と健常者が共生することで互いに認め合う関係ができていく」

 ■人物略歴

 越前市生まれ。県立大大学院経済・経営学研究科を修了後、2002年に自立生活センター「Com−Support Project」(0776・25・1057)=福井市宝永2=を友人らと創設。09年から代表。

毎日新聞 2014年08月03日 地方版

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