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Channel: ゴエモンのつぶやき
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限りがある「車いすマーク」の駐車場

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自動車の運転免許を取得して3年。
初めて免許の更新へ行ってきました。
有効期限の背景が黄緑色から水色に変わり、写真も新しくなりました。
3年しか経っていないのに、けっこう雰囲気が変わるものですね。
古くなった免許証は、記念にもらって帰ることにしました。
今後、どんな風に歳を重ねていくのか、免許証の写真で追いかけてみたいと思います。
ゴールド免許になるには、もうひと更新! 無事故・無違反、安全運転を心がけます。

ところで、障害のある人などが利用できる駐車場があることをご存知ですか?
車いすマークが書かれた、ちょっと広めのスペースで、障害者等用駐車場といいます。
免許更新で行った運転免許試験場にも、障害者用駐車場はありました。

しかし、すでに軽自動車が止まっていて、空きがありません。
車いすを使っている私は、乗り降りに広いスペースが必要なので、他に止められる場所がないか、ぐるぐると探して回りました。
結局、止められる場所が空いていなかったので、試験場の敷地で路上駐車しました。

日常生活のなかで、広い駐車場がなくて車が止められずに困ることは、少なくありません。
このことに遭遇する度、考えることがあります。
「障害者用駐車場は、誰のために、何のために、あるのだろうか?」

国交省の示す定義に、「車いす使用者だけでなく、身体の機能上の制限を受ける高齢者・障害者等であれば利用することは可能」という文言があります。
障害者用駐車場の利用対象は、障害者、高齢者、傷病者、妊産婦であると、読みとれるでしょう。
とても広範な対象ですが、この人たちは駐車場に対して、異なるニーズをもっているように思います。

・足腰が弱くなってきたので、なるべく便利のいいところに止めたい、高齢者。
・転んで骨折してしまい、すこしの間、松葉杖。近くに止められたら助かるなぁ、傷病者。
・お腹が大きくて、身体が重い。ドアもたくさん開けなきゃいけないし、近くて広いところがいいな、妊産婦。
・車いすの積み降ろしや乗り降りに広いスペースが必要、でも近くなくてもOK、アクティブ車いすユーザー。
・同乗者が車いす、乗り降りの身体的介助もあるし、広くて近いところがいい人。
・障害はあるけど、義手や義足、視覚・聴覚障害。普通の駐車場で大丈夫だよ、という人。
・見た目は健康だけれど、心臓や腎臓、呼吸器疾患などで、つらい。広くなくてもいいから近くに止めたい人。
・知的・精神障害で、止めるところに、こだわりがある人。

ちょっと想像するだけでも、これだけの違いが出てきます。
対象となっている人の中には、障害者用駐車場の“広くて近い”を必要としない人もいそうです。
そうだとしても、けっこうな割合の人が対象となっているように感じました。
現状ではそのすべての受け皿を、数の限られた障害者用駐車場に求めています。
止められなくて困っちゃうという事例が頻発するのは、ある意味、当然のことなのかもしれません。

では、みんながズムーズに駐車場を利用できるようにするためには、どうしたらよいのでしょうか。

一番、簡単なのは、すべての駐車場の幅を広くすることでしょう。
そうすれば、ほぼ解決です。

しかし、私の中では、腑に落ちない点もあります。
駐車場の敷地が限られている中で、すべての幅を広げるとなると、当然、収容台数は減ってしまいます。
所有者にとっては、おそらく収容台数の確保のほうが切実な問題だと推察します。
私自身、駐車場で困っている身ではありますが、それを無視してはいけないと思うのです。
駐車場の所有者の利益と、さまざまな不自由を抱える利用者のニーズと折り合いをつけて、落しどころを探る必要があるのではないでしょうか。

そもそも、そんなに難しい話ではないような気もします。
幅が広くて建物に近い場所に設置されているのが、障害者用駐車場です。
理由は違えども、「本当に必要としている人が、止める」。これが徹底されれば良いだけの話です。
障害者用駐車場の存在意義に立ち返れば、単純明快かつ至極当然のことと言えるでしょう。

けれども、必要ではないのに便利だから止めちゃおう人もいるのが現状です。
その人たちは、きっと、駐車場に記された車いすマークの意味を考える、心の余裕すらないのだろうと想像しつつ、そこに悪意がないことを願います。
とくに、気になるのは、小さい子供を連れている、あきらかなに健康そうな家族の姿です。
子供たちは、親の姿を見て育っていきます。
自動車を運転している親御さんには、子供のお手本になるような行動をとってほしいなぁと思います。

障害者用駐車場の在り方――。
何度も考えているのですが、いまだに明確な答えが出せずにいます。
いろいろな答えがあると思うけれど、みんなが気持ちよく駐車場を使えるようになるといいなぁ。

樋口彩夏 (ひぐち・あやか)


1989年、東京生まれ。埼玉・福岡育ち。いつも外を走り回っていたお転婆娘が、14歳・中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症しました。
抗がん剤、重粒子線、移植などの治療を終えたものの副作用や後遺症のために9年間、入退院の繰り返し。その影響で下半身不随となり、車椅子で生活をしています。「普通の生活」に戻りつつある今、「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に模索を続けています。

朝日新聞 .介護 障害 高齢者 子ども エッセイ QOL .

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