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「福祉」がテーマの海の施設?障害者が働く”渚の交番”

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猛暑が続き、海水浴シーズンのまっただ中です。今年も大勢の人が、海水浴を楽しんでいることでしょう。しかし、海というのは楽しいだけの場所ではありません。毎年のように水難事故が発生してしまいます。主に、そうした海のトラブルを防ぐため、先月、福井県の海岸に従来とはまったく異なる形で、多くの海水浴客の安全を見守る「渚の交番」がオープンしました。その取材のために、7月25日に、小浜市のビーチに行ってきました。

福井県小浜市は、琵琶湖よりも少し西側に位置し、日本海に面しています。その海は、非常に奇麗なので、京都の人などに人気の海水浴場がいくつもあるそうです。また、オバマ大統領と読み方が同じであることから、市民はオバマ氏を積極的に応援しています。現在も、町を歩いていると、写真のようにオバマ氏のポスターなどを見かけます。アメリカ大統領選挙の際に、その町の様子をニュースなど見かけた人も多くいるでしょう。

さて、今回、取材に訪れた小浜市のビーチは、鯉川シーサイドパークと言います。加斗という非常にのどかな雰囲気のJRの駅から、歩いて15分ほどの場所にあり、車がなくても行ける、便利な場所にあるビーチです。今回、そのビーチに「渚の交番」という施設がオープンしました。

海と人との“つながり”を作り出す渚の交番とは!?

渚の交番とは、日本財団が“海と人とのつながり”を作り出すために行っているプロジェクトで、海に関連した活動を行う団体・個人の交流を促進するための拠点を、全国の海岸に整備していっています。渚の交番では、具体的に次の様な事が行われます。

1、海だけでなく、地域のパトロール
海辺だけでなく、周辺の住民の安心・安全を守る活動。

2、地域の人が集まる事の出来る場所づくり
地元の住民が、ちょっと立ち寄って井戸端会議や町内会の集会などが出来る場所。

3、夏だけでなく、通年の海のパトロール
ライフセーバーと協力し、夏だけでなく一年中、浜辺の利用者の安全を確保。

4、地域を元気にするイベントの開催
それぞれの地域の文化などに根ざしたイベントを、地元の団体などと企画•運営

5、海辺の環境保護
海の生物の保護などを行う団体とともに、海辺の環境を守る活動を実施

6、様々なマリンスポーツ教室の開催
サーフィン、ビーチバレー、スキューバダイビングなどの体験教室を開催。海の楽しさを伝える。

また、渚の交番は、地域に根ざした交流の拠点となることに非常に力を入れています。そのため、それぞれの地域の特色にあわせて渚の交番をカスタマイズしています。例えば、宮崎の渚の交番は観光に、サーファーなどが多い御前崎では、スポーツ教室などの教育に力を入れています。そして、今回取材に行った小浜市の渚の交番は、福祉がテーマになっていたのですが、これは海との組み合わせとしては非常に意外なものでした。

渚の交番を通じて、障害者の雇用を生み出す

福祉といっても、幅広い活動がありますが、小浜市の渚の交番は、知的障害者と海をつなげることに力を入れています。しかし、渚の交番の活動内容を見ると、とても知的障害者の方が出来る仕事ではないのではないかと困惑すると思います。なぜ知的障害者と海という意外な組み合わせのコンセプトを追求出来るのかというと、小浜市の渚の交番が、日本財団と地元の福祉団、そして様々な地元の団体と提携して運営されているからです。それでも、まだ障害者が渚の交番に、どのように関わっているのか想像もできないと思うので、具体的に見ていきましょう。

この小浜市でも活動をしている社会福祉法人に、”コミュニティーネットワークふくい”があります。この団体は、知的障害者の就労に非常に力をいれており、現在275名の障害者と雇用契約を結んでいる日本最大の就労系の福祉法人です。渚の交番は、この社会福祉法人と雇用契約を結んでいる知的障害者の方々が働く場所としての機能を持っており、彼らが常駐する形で運営されています。

もちろん、知的障害者の方々が出来る仕事というのは限られています。そのため、第一の仕事は、高齢者の方などと一緒になって、渚の交番に常駐することです。海の安全を守る上で、“誰かしら人が渚の交番”にいるのかどうかは非常に重要であり、周囲の安全は大きく変わります。その上で、例えば、安全管理のためなら、地元のライフセーバーの方に渚の交番に来てもらうことで海のパトロールを行います。他にも、障害者の方が中心になって、ビーチの駐車場の管理や、洗車のサービスなどを行います。このように、様々な団体とコラボレーションを行う形で、様々な渚の交番の機能を、無理なく運営しているのです。

しかし、これだけでは人数的に限られた障害者の方々にしか活躍してもらう事は出来ません。なので、さまざまな工夫を凝らして、障害者の方々が働けるイベントが作られています。例えば、ビーチを運営していると、必ずゴミが大きな問題となります。また、このビーチは自然が豊かで、砂浜以外の部分には緑がたくさん残っているため、雑草も生えすぎると問題となります。そこで、通年で運営されている渚の交番では、ゴミ拾いや草むしりのイベントなどを企画し、数多くの障害者の方々に活躍してもらいます。そういった形で、常勤雇用ではないものの、障害者の方々の仕事を作り出しているのです。

多様な収益源を持ち、ビジネスモデルも盤石
さて、雇用というのは、労働者に賃金を支払う必要があります。現在、世間ではブラック企業問題が大変注目されているように、労働に対して十分なお金を支払えるビジネスを運営するというのは非常に大変なことです。小浜市の渚の交番がどうなっているのかに注目すると、“ブラック化”を心配する必要の無い、無理のない予算管理が行われていました。

障害者の方々の賃金は、コミュニティーネットワークふくいに対する補助金、または寄付金などで賄われています。他にも、この渚の交番は、駐車場の管理や、イベントといった独自の収益源を持っています。駐車場管理の場合は、所有者である小浜市から管理•委託料を受け取っています。ゴミ拾いや草むしりというビーチのためのイベントにも、所有者である小浜市から予算が出ています。その他にも、必ずしも障害者の人が中心になっているわけではないものの、渚の交番には塩作りのできる施設やソーラー発電の設備があります。また、地元の食材を生かした飲食の販売も出来るようになっており、こうした様々な事業からも収益が発生しているのです。

障害者が活躍した記念式典

そんな渚の交番のオープンの記念式典には、小浜市長、日本財団の方々など、多くの関係者が参加していました。参加者の中でも、特に印象的だったのが知的障害者の方々です。記念式典には、数十名の知的障害者の方々が出席しており、福祉施設の方の指導を受けながらではありますが、大きな問題もなく式典を見学していました。また、障害者の方々の出し物があり、私はそれを見て、自分の障害者に対する無知ぶりを反省しました。

この記念式典には、島根県のいわみ福祉法人”いわみ福祉芸能クラブ”の方々によって、写真にあるような「石見神楽」という演目が上演されました。これを演じているのもすべて、知的障害者の方々です。非常に堂々とした演技•演奏で、言われなければ障害者の方々がやっていると気づかない程のレベルの高さがありました。

私は予定さえあえば、今でも舞台に出演する事が多々あります。なので、大勢の観客を退屈させないパフォーマンスを行うことは、我々健常者でも非常に難しいことを知っています。今回の障害者の方々の演技の裏には大変な量の稽古があると手に取るように分かります。障害者の方々の努力、そして、指導をされている方の力を非常に強く感じました。

障害者の人が働ける場を増やそう

現在の日本においては、どうしても障害者の方、特に知的障害者の方というのは日陰の存在になってしまっています。例えば、アメリカの人気ドラマ、gleeには、ダウン症の女優が二名も登場します。そして、彼女たちの演技は非常にナチュラルで、健常者の俳優でも、彼女たちよりも”大根役者”が大勢いることは否定できないでしょう。しかし、日本のテレビにおいては、知的障害に限らず障害のある人の役は健常者が演じます。なので、知的障害者の俳優を日本のテレビで見かけたことはありません。

これを別の角度から見てみると、日本人は知的障害者の人がやった方がよい仕事ですら、健常者がやっているといえます。その理由の一つとして、知的障害者も労働者であるとは考えていない人が多いのだと思います。恥ずかしながら、今回の取材をするまで、私も知的障害の方は、その一部が特殊なアート分野などで活躍されているぐらいで、普通の労働は出来ないのだろうという印象を持っていました。

しかし、渚の交番の式典に参加していた知的障害者の方々を見る限り、もちろん、健常者の指導者は必要ではありますが、色々な仕事が出来ると思いました。また、”いわみ福祉芸能クラブ”の演技を見た時は、gleeの知的障害者の女優が特殊な能力を持っているので なく、訓練•練習をしっかりと行えば、障害者の方々にも様々な可能性があるのだというのを一瞬で理解できました。

そういう観点からみると、渚の交番は2つの良い面を持っていると思います。1つめは、障害者本人が労働によって賃金を得ることです。そして、二つ目は大勢の人の集まる所で障害者が働くことで、障害者の本当の能力を多くの人に認めてもらえるということです。特に2の役割が、非常に重要だと思います。なぜなら、渚の交番での仕事のほとんどが地域住民や海に来たお客さんと障害者の方が関わる仕事だからです。

そして、海に来るお客さんというのは、ランダムであり、障害者の方にあらかじめ理解があるから来ているという人はほとんどいないでしょう。すると、本来、障害者の方と接する縁がないような方でも、渚の交番をきっかけに、障害者への理解が深まる可能性があります。知的障害者と海という、初めて聞くと関連性がまったく想像できない事柄が合わさったからこそできた、すばらしい企画だと思いました。

地域社会と渚の交番

この日本財団の行っている渚の交番という企画は、そのカスタマイズ性が非常に興味深いと思いました。小浜市においては福祉と組合わさったことにより、想像できない形で障害者たちの活躍の場が出来ました。海で囲まれた日本には、全国に様々なビーチがあります。そして、そのビーチごとに特色があり、その地域で活動している団体もまったく違います。日本財団は、これからも日本全国で渚の交番を次々にオープンさせていくそうですが、それぞれの地域にあった形にカスタマイズされ、我々の想像を超えた”渚の交番”がデビューしていくのだと思います。

今までは、どちらかというと、全国で均一のサービスを提供することを国も民間も目指していたのではないでしょうか。そのため、そうした均一的なサービスは、もう全国に大分そろってしまいました。日本全国に絶対に存在しなければならないデフォルトのサービスで、新たに必要な物というのは、ほとんどないように思います。それにも関わらず、国が中心となって全国で同じような公共事業を行い、地元住民からも納税者からも批判を浴びるという事例もしばしば見受けられます。

だからこそ、今後は日本財団が行う”渚の交番”のような形の事業が、モデルになっていくのではないかと今回取材を通じて思いました。というのも、それぞれの地元に必要な施設•サービスを地元の力だけで用意するのは、非常に大変で実現へのハードルが非常に高いように思われるからです。しかし、渚の交番のように、ある程度のフォーマットが既に固まっている物を、地元に合う形でカスタマイズするのは割とスムーズに行くのではないでしょうか。

これは、ひょっとすると、フランチャイズで運営されているコンビニに近い物があるかもしれません。コンビニオーナーは、出店地域に応じて店を独自にカスタマイズしていきます。例えば、都会のオフィス街のコンビニなら、朝食、昼食、おにぎりなどに力を入れる必要があるでしょう。地方の海岸近くのコンビニなら、駐車場やトイレも重要ですし、花火やバーベキュー用のガスボンベ、日焼け止めやサンダルなどの品揃えも重要になってくるかもしれません。そして、FC本部は、そういうカスタマイズのデータなどを集計し、どういう地域では、どんな商品が喜ばれるのかということを把握した上で、新たなサービスを開発しています。

これと同じ様に、日本全国に、それぞれの地域に合うようにカスタマイズされた渚の交番が登場することで、日本財団には、どういう地域にどのようなサービスが必要なのかということが見えてくるはずです。それによって、また次々と予想もしない形で、世の中に役立つ”渚の交番”がオープンしていくことでしょう。今回、私が知的障害者の方々も仕事を持つべきだと認識が変わったように、こうした活動を続けることで、日本の常識が良い方向に変わっていくという事例も多く生まれるはずです。

(取材協力:日本財団) 渡辺龍太 2014年08月19日 06:31 BLOGOS

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