手話を使って着物の着付けをする「きもの手話きつけ士」という資格がある。聴覚障害者も気軽に着物を着てほしいとの思いから、自ら聴覚に障害のある名古屋市名東区の着付け講師、西尾啓江さんが考案し、厚生労働省から認定を受けた。
資格は三級から一級までの三段階。三級は喪服、二級は振り袖、一級は十二単(ひとえ)を着付けることができる。西尾さんが所属する小林豊子きもの学院(京都市)が二〇一二年から毎年一回、実技と筆記の試験を実施。同学院で助教授免許以上を取得し、着付け業務を一年以上こなした上、手話講座を受講すると受験資格が得られる。
「きもの手話きつけ士」になると、やはりこの資格の取得を目指す聴覚障害者や健聴者に、手話を通じて着付け技術を教えることができる。また、美容院や斎場などに派遣されることで、聴覚障害者に着付けができる。これまで耳が不自由なのを理由に着付けをあきらめていた人たちが、着物で結婚式や成人式に出席できるようになる。
西尾さんは資格をつくるにあたり、あいさつや着物の部分名、種類、文様など着付けで使う言葉を表現する専用の手話を考案。指文字で一字一字示すよりも、手短に伝えることができるようになった。社会福祉法人全国手話研修センターの日本手話研究所(京都市)からは「新しい手話」として認められた。
西尾さんは洋裁師だった母の影響で着付け講師になった。幼少時から左耳が聞こえなかったが、その後右耳の聴力も弱くなり、右耳に補聴器を着けている。自分で教室を開くとともに、母校でもある名古屋聾学校(千種区)の高等部被服科で着付けを教える。
手話着付けが資格になれば、耳の不自由な子どもたちの自立を後押しできるのではないかと考え、認定を目指して管轄する厚労省に七年間も通った。
着付けに使う手話の写真をまとめた教本も作り、既に県内の小中学校に一冊ずつ配布。知人の援助で二千部増刷し、今年六月には名古屋聾学校に全児童生徒の百十三人分を贈った。市内の図書館にもある。
西尾さんは「本に書かれた手話を理解する人が増え、日本の民族衣装の着物がもっと身近なものになってほしい」と願っている。
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着付けに使う手話をまとめた教本を手にする西尾啓江さん=名古屋市千種区星ケ丘元町で
中日新聞 2014年8月23日
資格は三級から一級までの三段階。三級は喪服、二級は振り袖、一級は十二単(ひとえ)を着付けることができる。西尾さんが所属する小林豊子きもの学院(京都市)が二〇一二年から毎年一回、実技と筆記の試験を実施。同学院で助教授免許以上を取得し、着付け業務を一年以上こなした上、手話講座を受講すると受験資格が得られる。
「きもの手話きつけ士」になると、やはりこの資格の取得を目指す聴覚障害者や健聴者に、手話を通じて着付け技術を教えることができる。また、美容院や斎場などに派遣されることで、聴覚障害者に着付けができる。これまで耳が不自由なのを理由に着付けをあきらめていた人たちが、着物で結婚式や成人式に出席できるようになる。
西尾さんは資格をつくるにあたり、あいさつや着物の部分名、種類、文様など着付けで使う言葉を表現する専用の手話を考案。指文字で一字一字示すよりも、手短に伝えることができるようになった。社会福祉法人全国手話研修センターの日本手話研究所(京都市)からは「新しい手話」として認められた。
西尾さんは洋裁師だった母の影響で着付け講師になった。幼少時から左耳が聞こえなかったが、その後右耳の聴力も弱くなり、右耳に補聴器を着けている。自分で教室を開くとともに、母校でもある名古屋聾学校(千種区)の高等部被服科で着付けを教える。
手話着付けが資格になれば、耳の不自由な子どもたちの自立を後押しできるのではないかと考え、認定を目指して管轄する厚労省に七年間も通った。
着付けに使う手話の写真をまとめた教本も作り、既に県内の小中学校に一冊ずつ配布。知人の援助で二千部増刷し、今年六月には名古屋聾学校に全児童生徒の百十三人分を贈った。市内の図書館にもある。
西尾さんは「本に書かれた手話を理解する人が増え、日本の民族衣装の着物がもっと身近なものになってほしい」と願っている。

着付けに使う手話をまとめた教本を手にする西尾啓江さん=名古屋市千種区星ケ丘元町で
中日新聞 2014年8月23日