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Channel: ゴエモンのつぶやき
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精神医療改革

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 厚生労働省の検討会は、精神科病院の長期入院者の退院を促すため、病棟の「居住系施設」への転換を条件付きで容認し、報告書をまとめた。だが、退院した患者が引き続き、病院で暮らすことにつながるため、「単なる看板の掛け替え」「病院が患者を囲い込み、精神障害者の隔離を続けるだけ」と根強い反対がある。問題の根は深い。地域で安心して暮らせる施策こそ整える必要がある。

 病院に入院している精神障害者は全国で32万人。「長期」と位置づけられる1年以上が20万人を占める。うち6万5千人は10年以上になる。長期入院者の6割強は統合失調症の患者で、認知症患者も2割強を占めている。病床数では経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国平均の4倍と突出しており、「脱施設化」が遅れている。

 在宅で療養できるのに、多くの患者が病院生活を送っている。長い入院で患者は生活力と意欲が低下し、地域生活への移行が困難になる場合も少なくない。長すぎる入院は人権侵害との指摘もある。

 国は2004年になって、入院中心の医療を改める方針を示したが、法的な位置づけがなく、改革は進まなかった。

 欧米の精神科病院は公立が主体だが、日本はほぼ9割が民間経営という事情を抱えている。病院はベッドが空くと収入が減るため、退院支援にあまり積極的にならない傾向があるといわれる。

 そこで厚労省の検討会で浮上したのが、「病棟をグループホームなど居住系施設に変えれば、ベッド数と入院患者数を減らせる」という考え方だ。福祉関係の検討会委員の提案が認められた。

 委員からは「施設に変わることで外部の福祉事業者が入り込みやすくなり、医療現場に変化が期待できる」という意見もあった。だが、病院敷地内で「居住」することは、地域で暮らすこととは異なる。日弁連や障害者団体は「精神障害者を地域から分離する政策を存続させるだけ」と反対を表明した。

 厚労省が今春、精神科の長期入院患者を対象にした調査では、希望退院先として賃貸住宅やグループホームなどを挙げた人のうち、「病院敷地内なら退院したくない」という人が6割弱を占めた。やはり患者が確実に地域社会に戻れるような制度を整備すべきだ。

 佐賀県によると、県内で精神科病床に入院している推計患者数は3900人(2011年10月の厚労省調査)。このうち、受け入れ条件が整えば退院可能な推計患者数は737人となっている。退院しても家族のもとに住めない人はグループホームが受け皿の一つとなる。精神障害者に特化したグループホームは県内で22カ所。少しずつ増えてはいるが、単身生活者を受け入れるアパートも少なく、地域の居住施設はまだまだ足りない。

 訪問診療や相談、就労支援などを含め、退院した患者を地域で支える体制の整備をもっと促したい。

 加えて、地域生活を支える医療で病院経営が成り立つモデルを国が示し、病院がその方向へ移れるような支援が必要だ。精神障害者の地域生活が困難な背景には社会の偏見もある。町中で暮らせる施策を進めるには国民の意識改革も求められている。

2014年08月25日 07時50分 佐賀新聞

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