厚生労働省は、高齢者や障害者の日常生活を手助けする「介護ロボット」開発支援の拠点施設を2016年度から新設する方針を固めた。介護職は重労働を伴うためロボットの需要は着実に高まっているが、使い勝手などで課題がある。拠点施設に介護の専門職員を配置し、メーカーに対して開発の初期段階から継続的にアドバイスすることで現場の意見を反映させ、操作性の向上などにつなげる考えだ。関連経費を16年度予算の概算要求に盛り込む。
政府は13年の日本再興戦略で、介護ロボット開発の促進を決定。これを受け、厚労省は介護職場での利用やロボット開発に関する相談などを行う「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」を実施している。
しかし、介護ロボットは操作が複雑で、実際の介護職員の動作に合っていないなどと指摘されている。このため、開発初期段階から介護現場や開発メーカーの実情に詳しい専門職員をコーディネーター役として配置。現場のニーズに合ったロボット開発に結び付ける狙いだ。拠点施設は、既存の公的なリハビリテーションセンターなどを想定し、全国に数カ所〜10カ所程度、設ける方針だ。
厚労省の推計では、団塊の世代が75歳以上になる25年度に介護職員が全国で約38万人不足する。介護職員らが加入する労働組合「日本介護クラフトユニオン」が7〜8月に組合員を対象に実施したアンケートでは、57%が腰痛を抱えており、45%が介護ロボットを利用したいと答えた。介護ロボットの普及は介護職場の負担軽減に加え、介護職の慢性的な人手不足の解消策としても期待されている。
介護ロボットは、入浴や排せつ、車椅子に乗せるなど介護する側の仕事を支援したり、歩行や食事、リハビリなど介護される側の自立を助けたりする。新たな成長分野として各メーカーも開発に力を入れている。国内の介護ロボット市場(15年度)は23億円で、20年度には349億円に急拡大するとの民間の試算もある。
毎日新聞 2015年08月22日