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Channel: ゴエモンのつぶやき
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両手を腰にあて、ピアノの伴奏に合わせて…

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 両手を腰にあて、ピアノの伴奏に合わせてリズムを取る。「右足を出して、左足出すと……歩ける!」。お笑いコンビCOWCOWの「あたりまえ体操」というネタだ。千葉県主催の障害者虐待防止研修会では参加者全員が毎回この体操をする▲スプーンをうまく使えない障害者がいる。では、なぜ私たちは使えるのか、母は考えた。スプーンでご飯を口に入れ、歯や唇でご飯がこぼれないようにして、スプーンの角度を変えながら引く。意外に複雑な動作をしているのだ▲息子は靴(くつ)もうまく履(は)けない。私たちは靴の中に足を入れる時、自然と足先をすぼめながら少しねじっている。あらゆる日常動作は微妙に身体や神経を使わないとスムーズにならない。あたりまえにやっていることが難しいのだ▲「よくこの脳の状態で生きている。僕の子だったら恐ろしくて見られない」と息子のCT(コンピューター断層撮影)の画像を見た医師に言われた。「素人でよかったわ。知識がないから怖くないもの」。その母も、イライラすることがある。汗だくで下着が丸まってうまく着られない。つい、ポカッ。悲しそうな瞳で見つめられた▲どんなやさしい人にも虐待につながりかねない魔の瞬間がある。あなたにとってあたりまえのことは、私にもあたりまえとは限らない。たとえ親子でも相手のあたりまえが見えなくなる時がある▲研修では、あたりまえ体操の後、約200人の福祉職員が少人数に分かれてグループ討議をする。記録係は障害者の母たちだ。発言は一切なし。いずれは親が先にゆくのだ。わが子を託す若い世代の言葉を母たちはじっと聞いている。

毎日新聞 2013年02月03日 東京朝刊

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