長崎県島原市の障害者支援施設「島原療護センター」の入所者に暴行を加え、重傷を負わせたとして、傷害罪で起訴された元職員、金子修被告(29)(島原市有明町)の初公判が19日、長崎地裁で開かれる。
同センターは6年前、金子被告の暴行を把握しながら県に報告しておらず、事件発覚の遅れや、職員による日常的な虐待を放置することにつながった。
金子被告は2007年12月、下半身が不自由で、記憶障害もある男性(76)の右腕を数回殴り、骨折する重傷を負わせたとして、昨年12月に逮捕、起訴された。08年7月にも別の入所者の脇腹を殴り、肋骨(ろっこつ)を折る重傷を負わせたとして、1月に追起訴された。
事件は、昨年7月に男性が鼻の骨を折ったことを知った長男(47)が不審に思い、施設側に介護や看護の記録開示を求めたことが発覚のきっかけとなった。
00年以降、男性は6回の骨折を含む76回のけがを負っていたことが記録されており、長男は県警に通報。金子被告以外の職員や元職員も入所者に暴行を加えていたことが明らかになり、県警は15日までに男女6人を傷害容疑などで長崎地検に書類送検した。県警は07年頃から、同センターで300件以上の虐待が日常的に行われていたとみている。
施設側が開示した記録以外にも、長男は、金子被告が07年12月に「男性がかみつこうとしたので殴った」と記述した介護記録を入手した。厚生労働省の省令では、入所者がけがをした場合、県や家族に報告するよう施設に義務づけているが、同センターは金子被告から報告を受けながら県に伝えず、家族にも「原因は分からない」と説明していた。
一方、県監査指導課は県内1028か所の障害者福祉施設について、少なくとも2年に一度は監査を行っているが、一部の入所者の介護状況などを調べるにとどまっている。同課は「時間の制約上、全ての入所者の状況確認はできない。施設側が隠そうとすれば、虐待を確認するのは難しい」と話す。
同センターを運営する諫早市の社会福祉法人「幸生会」は事件発覚後、弁護士や他の施設の関係者による検証委員会を設け、虐待が行われた経緯などを調べている。
長崎純心大の松永公隆教授(現代福祉学科)は「第三者が定期的に入所者全員の様子をチェックするような仕組みが必要」と指摘。男性の長男は「施設の運営などの問題が真摯(しんし)に見直され、入所者が安心して暮らせるようになってほしい」と訴えている。
(2013年2月19日 読売新聞)
同センターは6年前、金子被告の暴行を把握しながら県に報告しておらず、事件発覚の遅れや、職員による日常的な虐待を放置することにつながった。
金子被告は2007年12月、下半身が不自由で、記憶障害もある男性(76)の右腕を数回殴り、骨折する重傷を負わせたとして、昨年12月に逮捕、起訴された。08年7月にも別の入所者の脇腹を殴り、肋骨(ろっこつ)を折る重傷を負わせたとして、1月に追起訴された。
事件は、昨年7月に男性が鼻の骨を折ったことを知った長男(47)が不審に思い、施設側に介護や看護の記録開示を求めたことが発覚のきっかけとなった。
00年以降、男性は6回の骨折を含む76回のけがを負っていたことが記録されており、長男は県警に通報。金子被告以外の職員や元職員も入所者に暴行を加えていたことが明らかになり、県警は15日までに男女6人を傷害容疑などで長崎地検に書類送検した。県警は07年頃から、同センターで300件以上の虐待が日常的に行われていたとみている。
施設側が開示した記録以外にも、長男は、金子被告が07年12月に「男性がかみつこうとしたので殴った」と記述した介護記録を入手した。厚生労働省の省令では、入所者がけがをした場合、県や家族に報告するよう施設に義務づけているが、同センターは金子被告から報告を受けながら県に伝えず、家族にも「原因は分からない」と説明していた。
一方、県監査指導課は県内1028か所の障害者福祉施設について、少なくとも2年に一度は監査を行っているが、一部の入所者の介護状況などを調べるにとどまっている。同課は「時間の制約上、全ての入所者の状況確認はできない。施設側が隠そうとすれば、虐待を確認するのは難しい」と話す。
同センターを運営する諫早市の社会福祉法人「幸生会」は事件発覚後、弁護士や他の施設の関係者による検証委員会を設け、虐待が行われた経緯などを調べている。
長崎純心大の松永公隆教授(現代福祉学科)は「第三者が定期的に入所者全員の様子をチェックするような仕組みが必要」と指摘。男性の長男は「施設の運営などの問題が真摯(しんし)に見直され、入所者が安心して暮らせるようになってほしい」と訴えている。
(2013年2月19日 読売新聞)