阪神大震災時のけがで障害を負った「震災障害者」と家族らが十九日、東日本大震災の被災地である宮城県庁を訪れ、職員に体験を語った。予期せぬ天災でハンディを背負いながら、行政から救いの手を受けられず、二重の苦しみを味わった当事者たちは、同じ悲劇を繰り返さないよう訴えた。
訪問したのは、倒れたピアノで頭を打ち、高次脳機能障害が残った城戸(きど)洋子さん(33)と母美智子さん(60)=神戸市北区=や、倒壊した自宅の下敷きとなり、右脚などに障害を負った岡田一男さん(72)=同中央区=と支援者。
美智子さんは「当時は行政のエールがなく、つらい孤独感と闘わなければならなかった。専門窓口があればどんなに救われたか」と指摘。「東日本大震災でけがをして大変な思いをしている人が、孤独な思いをしなくてすむようにして」と語気を強めた。
岡田さんも「『あの時、死んどったらよかった』という言葉を(震災障害者に)使わせないような心配りを」と話した。震災障害者を支援するNPO法人「よろず相談室」(神戸市)理事長の牧秀一さん(63)は、東北と阪神の震災障害者が交流するための支援などを要望した。
県側は、職員ら二十四人が傍聴。障害福祉課の山下浩之課長補佐は「阪神の震災障害者の体験を直接聞いたのは初めて。何ができるのかを検討していきたい」と話した。

震災障害者への支援を訴える城戸美智子さん(手前)=宮城県庁で
東京新聞-2013年2月20日 朝刊