障害のある人への差別の禁止などを盛り込んだ障害者差別解消法が施行されて1日で半年です。NHKが全国の自治体に調査した結果、障害者などから寄せられた相談は1000件を超え、このうち自治体が指導や助言をしたケースが74件あることがわかりました。
ことし4月に施行された障害者差別解消法は、国や自治体、事業者に対し、障害を理由とする差別を禁止するとともに障害者への合理的な配慮を求めています。NHKは先月、全国の都道府県と県庁所在地、それに政令指定都市と東京23区の合わせて121自治体を対象にアンケート調査を行い、すべての自治体から回答を得ました。
このうち、障害者差別解消法の成立を受けて始めた取り組みがあるか聞いたところ、121すべての自治体が「ある」と回答しました。具体的には、最も多かったのが「職員の対応要領を策定した」が92%にあたる111の自治体、「職員研修の強化」が88%にあたる107の自治体、民間と連携して対策を検討する「協議会の設置」が67%にあたる81の自治体、「専門の相談窓口の設置」が59%にあたる71の自治体でした。
また、障害者やその家族、事業者などから相談を受けたことがあるか聞いたところ、全体の81%にあたる98の自治体が「ある」と回答し、相談件数は合わせて1092件に上りました。さらに、全体の31%にあたる38の自治体が、障害者への配慮に欠けるなどとして、事業者などに合わせて74件の指導や助言を行っていました。
具体的には、車いすを理由に旅館での宿泊予約を断られたという相談を受けて旅館組合に対して助言を行ったケースや、盲導犬を連れての入店を拒否されたという相談で従業員の対応を徹底するよう事業者に依頼したケースなどがありました。
アンケートには、このほか、「今の法律には具体的な判断基準が示されておらず、自治体や事業者によって対応が異なることが懸念される」とか、「法律のさらなる周知や啓発が重要だ」といった意見も寄せられていました。
障害者福祉に詳しい立教大学の平野方紹教授は「法律の施行によって障害者が声を上げていいんだと思えるようになったことは大きな意義がある。一方で、相談は氷山の一角で、法律の理念が先行していて、現実が追いついていない。もっと市民や事業者などに法律を知ってもらい、当事者が声を上げやすい環境を作ることが必要だ」と指摘しています。
東京・世田谷区 相談は50件このうち、東京・世田谷区では、障害者への差別に関する相談を受け付ける専門の窓口を設けて、職員2人で対応しています。ことし8月までに障害者やその家族などから50件の相談や問い合わせが寄せられました。
ことし4月に粗大ごみの回収をファックスで申し込もうとした聴覚に障害のある80代の男性が、区の委託業者から「電話かメールでなければ受けられない」と断られたということです。また、同じ4月に電動車いすを利用している50代の男性からは「飲食店に入店しようとしたが、店側から多忙で人手が足りないと断られた」という内容の相談を受けたということです。区は、いずれのケースも業者や店の経営者にパンフレットを配布するなどして法の趣旨に理解を求めたということです。
世田谷区障害施策推進課の片桐誠課長は「法律は出来たが、障害者との接点が少なく、どう対応していいのかわからない事業者などもあり、まだ定着はしていないと思う。相談窓口や啓発活動を地道に続け、一歩ずつ理解してもらえるように取り組んでいきたい」と話しています。
10月1日 NHK