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自立生活を送る障害者たち 新たなつながり求めて

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 重度障害者が共同で自立生活を送る「アルゴ」(山口市)のメンバー5人(男性3人、女性2人)は、ほぼ24時間の介護を必要としている。

 彼らの「自立」を支えているのが、ボランティアとヘルパーたちだ。買い物や料理、ゴミ出しなどのほか、食事や入浴、着替えなどの介助を行う。

     ◇

 ボランティアの一人で、山口大学2年の宮原望さんは、大学受験直後に友人に誘われ、軽い気持ちでアルゴを訪れた。「施設っぽいところをイメージしていたので、こんなアパートで暮らしているの? という感じだった」

 初日に大石さんの食事介助をしながら話を聞き、「暇だし続けてみようかな」と思った。「友人の家に遊びに来ているような感覚です。何か頼まれればOKと引き受ける。『してあげている』という感じではありません」と話す。

 山口県立大学社会福祉学部4年の女子学生(21)がアルゴに通うようになったのは1年生の春。知り合いのヘルパーから「大学生の介護ボランティアを募集している人がいるよ」と声をかけられ、友人と2人で訪れたのがきっかけだった。

 それまで障害者と関わったことはなく、「怖いと思ったらいけないと思いながらもすごくドキドキした」と振り返る。

 特に、初めてのトイレ介助は戸惑った。「同性とはいえ下の世話は初めてで抵抗があった」。最初は「手伝わなくては」と気負っていたが、「私は自分が行きたいときにトイレに行く。みんなしたいときにしたいという気持ちは分かるのでだんだん当たり前と思えるようになった」。

 アルゴでの経験があったことで、大学の実習で施設に行ったり、施設で暮らす人と出かけるボランティアに参加したりする際、相手が障害者だと聞いても「抵抗なく付き合えるようになった」という。将来は、高校の福祉科の教諭や福祉施設の職員として働く道も考えている。

 脳性まひで手足の自由が利かない大石勝さん(50)は「トイレ介助とか最初はびっくりしたかもしれんけど、そのうち『おしっこ』と言われれば、『はいはい』という感じになる。逆に専門知識ばかりだと、受け止め切れずにやめてしまう人もいる」と話す。

 私自身、約1年間アルゴに通い、今まで気がつかなかった街の中の小さなバリアーや、介助での悩みなどを具体的に知ることができた。「理解しよう」と思っても、相手のことを知らなければ何を理解すればいいのかも分からない。

     ◇

 だが、ボランティアの数は年々減少している。2000年ごろには、70人近くが出入りしていたが、現在は大学生4、5人ほどにとどまる。大石さんは「昔より大学生に余裕がなくなっている」と言う。

 大石さんによると、以前は大学の食堂に顔を出し、「ごはん食べさせてくれんか」と学生に頼み、食事中の会話を通してアルゴでの介護にも興味を持ってもらうようにしていた。ところが、最近は食堂で勉強していたり、授業があるからと断られたりするケースが増えているのだという。

 重度障害者の「自立」はリスクを伴う。一方、施設などに頼らず、社会とのつながりを維持することで、「共生」への理解は積み重なっていく。「障害者も同じ社会に生きているんだと知ってもらいたい」という大石さんらの思いの実現には、ボランティアら健常者との接点が何より欠かせない。

 高齢化の問題ものしかかる。共同生活を始めたときは20代だったメンバーも今では50代。体力は衰え、若い頃のような活動には限界がある。「活動のあり方を変えていかなくてはいけない。若い障害者も巻き込みたい」と大石さん。先月からはデイサービスにも通い、新たな「接点」づくりの模索を始めている。

写真・図版

学生ボランティアやヘルパーの介助を受けて食事をするアルゴのメンバー

2016年4月4日      朝日新聞デジタル

 

障害者と一緒に汗 スポーツ楽しもう 千葉で小中生にアスリート指導

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 健常者と障害者が一緒にスポーツを楽しむ「アスリート・スポーツ交流会」が三日、千葉市中央区の青葉の森スポーツプラザであった。県内外の小中学生六十五人が参加。五輪やパラリンピックに出場経験のある一流アスリートらの指導で、ハードル走やマラソンなどを楽しんだ。

 短距離は二〇一二年のロンドンパラ五輪の百メートルで、五位に入賞した多川知希選手(30)が指導。デモンストレーションでは健常者の選手と競り合うスピードを見せた。生まれつき右前腕部が短いという多川選手は「今まで健常者と障害者が一緒にスポーツをする機会は少なかった。スポーツは誰でも楽しめるんだと感じてもらえれば」と話した。

 障害者スポーツの体験コーナーもあり、千葉市立北貝塚小の前田航希君(9つ)は陸上競技用車いすに試乗。「想像以上に速い。ブレーキの操作なども楽しい」と笑顔を見せた。

 前田君は未熟児として生まれた影響で運動が苦手で、以前はスポーツが好きではなかった。だがこの日のイベントを主催したシオヤレクリエーションクラブ(SRC、千葉市)の会員となったことをきっかけに、徐々にスポーツを楽しむようになってきたという。

 SRCの塩家吹雪代表(44)は「障害は個性だ。健常者と分けるのではなく、一緒にスポーツを楽しめると伝えたい」と話した。SRCは二〇年の東京五輪・パラ五輪に向け、南関東を中心に同様のイベントを開いていくという。

 

子どもたちと一緒に走る多川選手(手前)

2016年4月4日    東京新聞

パレード 宮崎市で障害者ら200人 差別解消法と県条例施行受け 「やっと出発点」

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 障害者差別解消法と「障がいのある人もない人も共に暮らしやすい宮崎県づくり条例」の1日施行を受けて、障害者や家族らが2日、「だれでも入れるお店にしよう」「差別を知って差別をなくそう」などと声を上げ、宮崎市中心部をパレードした。

  約200人が参加し宮崎山形屋前から県庁前まで歩いた。県電ホールでは記念式典があり、河野俊嗣知事が「宮崎では10年後に全国障害者スポーツ大会が実施される。バリアフリーを率先して進めていく」とあいさつした。

 主催者代表で自身も脳性小児まひによる障害がある永山昌彦さん(61)は「差別解消のスタートラインにやっと立てた。障害者も地域で尊厳をもって生きていけるよう働きかけたい」と語った。またパレードに参加した視覚障害のある桑原靖さん(57)も「宮崎には盲導犬がいると入れない店が多い。そういった状況が変わっていけば」と期待を寄せた。

 法律は障害者への差別的な扱いを禁止し、負担が重すぎない範囲で、必要な配慮を公的機関に義務付け、民間事業者には努力義務を課している。県条例では差別的な扱いの禁止について、福祉や教育などの分野ごとに詳しく定め、相談員や差別解消のための協議会の設置を明記している。

毎日新聞    2016年4月3日

【「技術と障害者」会議にて】 関根 千佳さん

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◆ 世界の常識に追いつけ 
 この原稿を米国・サンディエゴで書いている。31回目を迎えた「テクノロジー(技術)と障害者」会議に参加しているのだ。ロサンゼルスのカリフォルニア州立大学ノースリッジ校が主催し、数年前からサンディエゴで開催されている。私は1993年以降、ほぼ毎年参加している。

 世界最大の、障害者を支援するICT(情報通信技術)会議である。世界中から、この分野の研究者や、各国の政策担当者が集まり、技術や法制度の動向を話し合う。グーグルやIBM、フェイスブック、アマゾンなどのICT企業や、支援技術の専門会社、放送通信技術の企業などが、最先端の技術を展示し、研究成果を発表する。

   ---◆---

 初めて参加した日本人は、最初びっくりする。参加者は毎年3千人ほどだが、その大半が障害のある人なのだ。会場を、補助犬ユーザーや電動車いすユーザーが埋め尽くしている。多くのセッションで、手話通訳やパソコン要約筆記などの情報保障が入る。聴覚やディスレキシア(識字障害)への対応も万全だ。

 名刺交換するともっと驚く。当事者の多くが、大学教授や政府高官、企業の役職者や上級エンジニア、ベンチャー企業のトップなのだから。

 ここでは、障害があることは、誇らしい特性なのだ。当事者のニーズを明確に把握できてこそ、革新的な成果が出せる。「ダイバーシティ(多様性)はイノベーション(革新)の源泉」という意識が、徹底している。

 さらにICTの公共調達を、高齢者や障害者が使えるアクセシブル(共用)製品に限るという「リハビリテーション法508条」が86年に制定され、98年には違反した行政担当者を告訴できるように改正された。そのため、あらゆるICT企業は、誰もが使えるユニバーサルデザイン(UD)のものだけを、開発するようになった。そこには、当事者の力が必要だ。障害のある優秀な研究者やエンジニアは、高給で引き抜かれていく場合も多い。

 この状況は米国だけではない。欧州連合(EU)も2015年に同様の法律を制定した。ICT機器のみならず、Webサイトやアプリなどの情報サービスも、障害者に使えないものは作らない、使わないのが先進国の常識なのである。建物や公共交通が全てアクセシブルになったら、車いすユーザーであることが不利益ではなくなるように、全ての情報が各人に使えるUDな形式で提供される世界では、情報障害者という言葉は消えるのである。

   ---◆---

 この会議に日本政府の担当者が参加したことは、残念ながら一度もない。世界各国の公共調達基準が「環境とUDへの配慮」を前提とするようになれば、その法制度を持たない日本の産業界は世界の市場を失うことになると、国は気づいていたのだろうか?

 今年4月1日、ようやく日本でも障害者差別解消法が施行された。公共、民間問わず、障害を理由に人を受け入れないことは許されなくなる。全ての飲食店に盲導犬ユーザーが入れるようになり、全ての大学に車いすユーザーがやってくるだろう。あらゆる議会に情報保障がつくかもしれない。各国の差別禁止法に遅れること20年以上ではあるが、それでも大きな一歩だ。

 だが、この法律でも、情報や製品のユニバーサルデザインに関しては、とても曖昧なままだ。1億総活躍社会というのであれば、その中には障害のある人も含まれるはずだ。解消法の基礎となった国連の障害者権利条約の精神にのっとり、情報分野や製品開発においても、世界の常識に追いつくことを、強く望むものである。

 【略歴】1957年長崎県佐世保市生まれ。九州大法学部卒。81年、日本IBMに入社後、ユニバーサルデザインの重要性を感じ、98年にユーディットを設立。2012年より現職。著書に「スローなユビキタスライフ」など。

関根 千佳(せきね・ちか)さん=同志社大政策学部教授、ユーディット会長


=2016/04/03付 西日本新聞朝刊=

「新宿ターミナル基本ルール」策定 バラバラの案内サイン統一へ

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新宿駅における案内サインの統一や、バリアフリー整備などの具体策をまとめた「新宿ターミナル基本ルール」が発表されました。

デザインや表記がバラバラの案内サイン

 東京都や鉄道会社などで構成する新宿ターミナル協議会は2016年4月1日(金)、新宿の案内サイン統一やバリアフリーに関する整備などの具体策をまとめた「新宿ターミナル基本ルール」を発表しました。

 コンセプトは「わかりやすく、人に優しく、もっと便利なターミナル」。「利用者本位のターミナル」の実現に向けて案内サインの改善、バリアフリーの推進、サービスの向上に取り組むとしています。

 現在、新宿駅で掲げられている路線や出口、現在地などを示す案内サインは、事業者によって表記やデザインがバラバラですが、これを基本ルールに基づいて統一。各言語の表記やピクトグラム(絵文字)が整理されるとともに、文字の大きさやレイアウト、色使いなども揃えられます。

 また、西口地下広場や南口、東口地下通路など駅の主要エリア8カ所を「結節空間」として設定。現在地や目的地の案内サインに反映させることで、利用者が駅構造を概略的に把握できるようにします。

 このほか、おもな乗り換え動線を対象にしたバリアフリー設備の整備や、視覚障害者誘導ブロックの設置を推進。共通マップの継続的な配布や多言語対応も含め、「できることから順次実施していく」としています。

「新宿ターミナル基本ルール」に基づく案内サインのイメージ

2016.04.04   乗りものニュース

お笑い芸人、自身の障害もネタに 客席が凍りつく経験も

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 障害を笑いに変えようと挑戦する人たちがいる。障害が笑えないのはどうしてなのか。障害がある人とない人の間にある壁を問い続ける。

健常者と殴り合い 先入観取り払うため、リングに上がる

 《デブやハゲは笑ってOKで、障害がNGなのはなぜか》

 テレビ朝日で昨年末にあった漫才大会「M―1グランプリ」の放送終了後、こんなツイートが流れた。

 優勝した2人組のトレンディエンジェルはそろって薄毛。その容姿を武器に勝ち上がったのを受けた投稿だ。リツイート(転載)は2千を超えた。

 お笑い芸人のあそどっぐ(37)=本名・阿曽太一、熊本県合志市=は一人暮らしのアパートでパソコンの画面を見つめた。「僕がもっと面白かったら、このツイートもなかったのかなぁ」

 全身の筋力が低下する難病で、顔と左手の親指以外は動かせない。自称「お笑い芸人界初の寝たきり障害者」。ヘルパーの手を借りて横になったまま、毎日、動画投稿サイト「ニコニコ動画」でトークを生放送し、月に1回程度、お笑いライブに出る。

 つかまり立ちした赤ん坊と自分を比べる自虐ネタなど、障害も笑いの素材だ。舞台に立ち始めて2年。ファンもついたが、登場した途端、客席が凍り付く経験はしばしばだ。

 「でも、1人笑うと、それが合図のように笑い声が増える。そんな日は快感。逆に、すべったのに『感動した』って言われた時が一番へこむ」

■「実は僕らの側の問題」

 障害やマイノリティーをテーマにしたNHK・Eテレのバラエティー「バリバラ」。障害者と性を取り上げた番組の収録中、重い脳性まひの男性出演者が吐き捨てた。

 「ぼくら障害者は何だかんだで恋愛の対象に見られてない」

 出演者のやりとりを見つめていたチーフ・プロデューサーの日比野和雅(51)がインカムを通じて司会者に質問させた。「自分より重度の障害者とセックスをしたいか」。男性は悩んだ末、答えた。「できない」

 人の根っこにある偽善をえぐり出すのが、日比野のこのときの狙いだった。めざす番組像を「起承転『転』」と表現する。

 1990年の入局から長く福祉番組を制作してきた。障害者が障害にどう向き合い、乗り越えたのか。まじめに伝えようと心がけた結果、逆に「障害者はかわいそう、頑張る、純粋」というイメージを固定化してしまったと思う。

 番組で障害者のお笑いコンテストをしかけた。

 「多くの人が抱く障害者像を覆したかった。障害を自分の特性として笑いに変えられるネタは、障害者の存在に戸惑う健常者を笑う風刺のよう。障害者が抱える問題は実は僕らの側の問題なんだと、ひたすら問いかけていきたい」

■どこか同じ土俵で見られていない

 冒頭のツイートを投稿したのは、乙武洋匡(39)。「かつらの上司を笑いますか。頭髪の場合は、この人を笑っちゃいけないと個別に判断しているのに、障害だけはひとくくりにタブーという現状に違和感があった」。幼少期から障害者と接する体験こそが解決のカギになるとも言った。

 ただ、乙武はその後、週刊新潮が報じた不倫問題で批判を受け、一切の活動を控えている。一方、あそどっぐは報道初日、ニコニコ動画の生放送で乙武の不倫をネタにしたが、翌日にやめた。

 《5人と浮気したなんて、すげえな》

 視聴者から寄せられるコメントに「障害者なのに」という無言の前提を見てしまったからだ。単純に称賛とも受け取れない、どこか同じ土俵で見られていない視線。「知らない者同士、いきなり全部わかって、というのも厳しいのかな」。それはお笑い芸人として、しばらく向き合わなければならない壁なのかもしれない。=敬称略

写真・図版

芸人仲間と舞台に上がるあそどっぐ(手前)=2月21日、福岡市中央区

2016年4月5日  朝日新聞

厚労省vs.経産省で政策を競え!保育のイノベーションに足りない極端な視点

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『週刊文春』の頑張り効果もあり、ここのところ、いかにもワイドショー的なスキャンダルが続出し、マスメディアやネットを賑わしている。年明けの「ベッキー×ゲス乙女不倫」から始まり、「イクメン議員ゲス不倫」、「ショーンK学歴・経歴詐称問題」を挟み、今度は5人の女性と不倫していたという「ゲスの極み乙武」と、今年の流行語は「ゲスで決定!」の勢い。たぶん10年後くらいに2016年を振り返ったら、「あれはゲスな年だった」とか総括されるのかもしれない。

 個人的にはゲスな話題は嫌いではない。そもそもワイドショーやら、週刊誌やら、スポーツ紙などは、「ゲスの極み」を追求するメディアだし、大衆とは、ゲスが大好きな人種なのだ。また、ゲスな話題に人間の本性が表れるという側面もある。しかし、ワイドショーや週刊誌と言っても、そこは仮にもメディアである。ネット民がゲスな話題でゲスに騒ぐのとはワケが違う。メディアにはやはり「メディアの正義」というものがあってしかるべきで、その正義とは「本質を議論する」ということだと思う。その視点から言えば、一連のスキャンダルに関してはあまり本質的な議論がなされていない。

 ショーンK問題の本質については、当連載の第153回記事でも論じたが、今回の乙武氏不倫問題に関しても、ほとんど本質論が議論されていない。

タブー視されてきた「障害者の性」

 乙武氏不倫問題の本質はふたつある。ひとつは「障害者の性」の問題だ。今回の騒動で社会に対して明確になったことは、「障害者だって性欲がある」ということだ。これは言われてみれば当たり前のことだと思うだろうが、実際には日本の障害者支援の文脈では完全に無視されてきた問題である。もうほとんど「障害者には性欲というものがない」という前提で進められてきたと言っても過言ではない。というか、そのような問題を議論すること自体がタブー視されてきたと思う。

 その証拠に、「障害者ネタ」はテレビや新聞などメディアの定番ネタで、障害者支援の団体や取り組みの多くが頻繁に紹介されている。日本テレビの『24時間テレビ』でも数多くの障害者が登場して、彼ら彼女らの奮闘ぶりを称えるVTRを流したりしているが、メディアの中で障害者の性が正面切って取り上げられることはほとんどなかった。

 欧米には障害者の性処理を行なうNPOがあるし、日本にも障害者の性問題に取り組む「ホワイトハンズ」という団体もある。こちらの団体のウェブサイトのメディア掲載履歴を見ると、最近はテレビメディアも障害者の性問題に少しは関心を持つようになってきたようだが、まだまだ一般の認知度も、理解も足りない。

 ゆえに今回の乙武氏不倫問題は、まだまだ理解が足りない障害者の性問題を一気に社会的イシューへと引き上げる千載一遇のチャンスだった。にもかかわらず、メディアもネット民も、乙武氏の性癖の問題に(単なる好奇心として)矮小化するだけだ。

 また、乙武氏自身も、この問題を社会問題へと昇華させる気がないように感じる。乙武氏はこの障害者の性問題のまさに当事者中の当事者なのだから、これを機会にこの問題を広く深く社会で議論するきっかけとなってほしいと思う。だが、これについては後日改めて論じたいと思う。

「妻が母になったから不倫」という男性バイアス

 乙武氏不倫問題のふたつめの本質は、彼自身が発言しているように「妻が母になったから不倫した」問題だ。これは、妻が妊娠中(しかも臨月!)に不倫したことがバレて議員辞職するハメになったイクメン(元)議員の宮崎謙介氏の一件にも通底するが、そもそも「妻が妊娠中の不倫」は妻からすれば最も許せない行為であるし、「妻が母になったから不倫した」、つまり「女性としての魅力がなくなった」というのは、最大の侮辱である。

 乙武氏が釈明の弁の中でこのような言葉を使うこと自体、彼の中に強い「男性バイアス」を感じ取ってしまうのだが、これは彼だけの問題ではない。いまだに日本の男どもにはびこる女性蔑視というか、女性無視のメンタリティの表れである。

 要するに、日本の男どもはいまだに、女性とくに妻に対してリスペクトというものがない。だからこのような発言が出てくるし、こうした発言がそれほど大きな問題とならない(むしろ、よくある話だと納得する男性のほうが多いのではないだろうか)。その証拠に、今回の件では乙武君批判もあれば擁護の発言も多いが、この「妻が母になったから不倫」発言を問題視している発言は少ない。その少ない発言のほとんどは女性からのもので、男性の論客でこの発言問題を大きく取り上げた人間は(少なくとも僕が見た限りでは)ほとんどいない。

 そして、この「妻が母になったから不倫」発言がたいして大きな問題にならないところに、実は日本の「少子化問題の本質」が潜んでいるのだ。日本の少子化問題は、本質がほとんど議論されていない。少子化対策と言えばほとんどの場合、保育園と産休/育休の話題ばかりだ。もちろん、イクメンが増えることも、男性が育休を取ることも大事だ。しかし、イクメン/育休も、女性へのリスペクトが背景になければ形骸化どころか、下手すれば不倫のカモフラージュにさえ利用されることは、ゲス不倫のイクメン(元)議員が証明して見せたではないか。

議論がなされない、保育士の給料が上がらない理由

 また、保育所問題、待機児童問題についても本質的な議論がほとんど出てこない。ご存じのように「保育園落ちた日本死ね!!!」と書かれた匿名ブログがメディアでも話題となり、民主党(当時。現在は民進党)の山尾志桜里議員が衆院予算委員会で取り上げ、安倍総理に厳しく迫ったことも大きなニュースとなった。

 ちなみに、「この匿名ブログを書いたのは熊本県在住のいわゆる“プロ市民”である」との追及がネットで吹き上がった。その一方で、この匿名ブログを取り上げた山尾議員に対しても、『週刊新潮』が「山尾志桜里代議士の奇妙な政治資金」と題し、資金管理団体をめぐる不透明な寄付金問題を特集。さらに、産経新聞などは「地球5周分に匹敵する疑惑のガソリン代」と山尾議員の経費問題を追及する記事も掲載された。

 このように保育問題があらぬ方向へと向かい、ほとんど場外乱闘の様相を呈しているが、その保育問題も「保育士の給料を増やせ」とか「保育関係の予算を増やせ」とか、金の話ばかりだ。もちろん、保育士の給料が上がることは良いことだし、予算が増えることも悪くはない。しかし、保育問題の本質は本当に金の問題だけなのか。

 たとえば、保育士の給料が安いと言われ、安いから離職率が高くて保育士が足りない、だから待機児童が増えるという「文脈の議論」ばかりが横行しているが、本当に保育士の給料は安いのか。安いとすれば、上がらない本当の理由は何か。その議論がほとんどされていない。

 そうした状況の中で、とあるブログがちょっとした話題になっている。「保育園落ちた、日本死ね → 死ぬべきは既得権益のみなさんだったよ」という記事だ。要するに「いまの保育問題の根源は、既得権益者、つまり認可保育園を運営する社会福祉法人にある」という指摘だが、この記事の元ネタとなっているのが2009年11月に掲載された『ダイヤモンド・オンライン』の記事「新規参入は断固阻止!! 保育園業界に巣くう利権の闇」である。

 この記事によれば、認可保育園は、認可外保育園がもらうことのできない巨額の施設整備費を受け取っているだけなく、潤沢な保育費用を補助金としてもらっているという。たとえば東京都の場合、0歳児1人当たりに対して、私立認可保育園で約30万円、公立では約50万円を毎月補助しているそうだ。

 にもかかわらず、なぜ保育士の給料が安いと言われるのか。実態はどうなのか。平成26年度の厚生労働省の賃金構造基本統計調査を元にした、保育士を目指す人のための情報サイト『保育士の仕事』によると、下記のとおりだ。

*以下、保育士を目指す人のための情報サイト『保育士の仕事』掲載記事「保育士の給与・年収」より引用。

◎保育士の平均年収統計
平成26年度の厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均年収は34.7歳で310万円ほどとなっています。

・平均年齢:34.8歳
・勤続年数:7.6年
・労働時間:168時間/月
・超過労働:4時間/月
・月額給与:216,100円
・年間賞与:573,800円
・平均年収:3,167,000円

出典:厚生労働省「平成26年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

 これによると、保育士の平均収入は月収で約21万、年収で約310万円。しかしこの数字は、公立、民間を含め、様々な保育園のケースが含まれていて、世間で言われている保育士の給与実態よりも高いものと思われる。僕が実際に保育士にヒアリングしたケースでも、学校法人や認可保育園であっても給料は月10万円台と聞いている。理屈のうえから言っても、保育士の給与実態はやはり安すぎると思われる。

保育ビジネスに横たわる欠陥

 では、「本来払われるべき給与」と「実態」との乖離はなぜ起きるのか。業界の体質も含めたビジネス構造に何かしらの問題、欠陥があるのではないか。その根本的な問題を明確にしない限り、山尾議員が主張したように、保育士の給与を一律5万円上げたところで根本的な問題解決にはならない。

 たとえば、保育士の給与を上げるためには、「補助金を増やすか、保育料を上げるしかない」と保育問題の専門家は唱える。しかし、保育所というものは基本的にサービス業だ。サービス業のコストは、基本的に場所代と人件費。つまり収入が一定の場合、場所代を減らせば人件費を上げることができる。つまり、保育士の給与問題は「保育園の立地コスト問題」としてもっと論じる必要がある。また、皆さんもご存じのとおり、待機児童問題はとくに東京など都市部で深刻だ。にもかかわらず、都市部のほとんどは立地コストが高い。ここを解決しなければ、保育所問題も抜本的に解決できないだろう。ビジネス構造を変えるのは、そういう本質的な議論をするということだ。

 そのためのひとつの方策としては、「廃校の利用」が考えられる。たとえば、東京23区では2002年から2006年にかけて、52校もの小中学校が廃校となっている。千代田、中央、港、新宿、文京、台東、渋谷の都心部だけでも13校だ。しかし、このレポートを見ても、文科省の「みんなの廃校プロジェクト」の「廃校施設等活用事例リンク集:児童・高齢者などのための福祉施設」のリストを見ても、保育所としての事例は一件のみ。廃校が保育所として積極的に活用されているようにはとても思えない。

 最近も旧都立市ヶ谷商業高校の跡地利用をめぐり、「保育所を!」という地元民の要望を無視して、桝添都知事が韓国人学校を作るために韓国政府に貸与を決めたとして猛烈な抗議活動が起きているが、この一件を見ても、文科省も地方行政も保育所問題の抜本的な解決に取り組んでいるとは思えない。

 問題はその理由だ。学校行政は文科省の管轄で、保育は厚労省の管轄だからなのか。あるいは、前述の『ダイヤモンド・オンライン』記事に加え、保育問題に取り組む一部の人たちから指摘されているような「地方行政と認可保育園(既得権益者)の癒着」が原因なのか。たぶん、原因はひとつではないのだろう。いろいろな権益、権限が重なり合って、保育サービスのイノベーションを阻んでいるのだと思う。

保育行政に必要な 極端で思い切った「視点の変換」

 それを解決する方法は「規制緩和」しかないのだが、保育行政においてはすでに株式会社の参入という規制緩和が行なわれている。しかし、実際にはこの規制緩和策も効果を上げていない。

 その理由については、保育ビジネスを手がけるJPホールディングスの山口洋社長が、『現代ビジネス』のインタビューに対して、待機児童が減らない大きな理由として「社会福祉法人の問題」を述べている。山口氏によれば、待機児童問題が解決しない大きな理由は「社会福祉法人と地方行政が結託して新規参入を阻んでいる」からだという。 

 たとえば、世田谷区は待機児童ワーストなのに株式会社の保育ビジネス参入を認めていないという。これが保育業界の実態だとすれば、保育行政は地方行政の仕事なので、いくら国が規制改革して保育問題を解決しようとしても無駄ということになる。では、どうすればよいのか。

 保育問題の本当の敵が巨大な既得権益だとすれば、それに匹敵する大きな対抗勢力を作ればよい。本来、その対抗勢力とは民間(企業やNPO)なのだが、保育行政に対して民間が無力だとすれば、その対抗勢力は行政の中に作るしかない。たとえば、経産省だ。保育というのは福祉行政でこれは厚労省の仕事だが、「新しい保育ビジネスの育成」という視点で保育問題を考えるというわけだ。「産業の育成」は経産省の仕事なので、経産省が保育ビジネスに関われるように規制改革すればいい。

 いわば、従来からある厚労省主導の保育行政に、経産省主導の保育ビジネスをぶつける。どちらが保育問題を本当に解決できるか競わせる。競争はイノベーションの源泉だ。保育ビジネスにもイノベーションが必要だとすれば、どこかで強力な競争原理を導入する必要はあるだろう。

 そのために政府は2000年に規制改革して、株式会社が保育ビジネスに参入できるようにしたはずなのだが、15年経ってもこの問題は解決できなかった。もうこの規制改革は失敗したということなのだから、改革のためには「さらなる改革」が必要だろう。それは単に補助金を増やすことではないはずだ。

 僕の周辺にも、保育問題に取り組み、保育の新しいイノベーションを起こそうとする若き社会起業家がたくさんいる。そのような人間の情熱も力も、いまの業界の体質や行政が活かせないのであれば、それを活かせる新しい行政が必要だろう。経産省の例は単なる思いつきだが、しかし、それくらい極端で思い切った「視点の変換」がこの国の保育には必要なのだと思う。

2016年4月5日   ダイヤモンド・オンライン

厚労省vs.経産省で政策を競え!保育のイノベーションに足りない極端な視点

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『週刊文春』の頑張り効果もあり、ここのところ、いかにもワイドショー的なスキャンダルが続出し、マスメディアやネットを賑わしている。年明けの「ベッキー×ゲス乙女不倫」から始まり、「イクメン議員ゲス不倫」、「ショーンK学歴・経歴詐称問題」を挟み、今度は5人の女性と不倫していたという「ゲスの極み乙武」と、今年の流行語は「ゲスで決定!」の勢い。たぶん10年後くらいに2016年を振り返ったら、「あれはゲスな年だった」とか総括されるのかもしれない。

 個人的にはゲスな話題は嫌いではない。そもそもワイドショーやら、週刊誌やら、スポーツ紙などは、「ゲスの極み」を追求するメディアだし、大衆とは、ゲスが大好きな人種なのだ。また、ゲスな話題に人間の本性が表れるという側面もある。しかし、ワイドショーや週刊誌と言っても、そこは仮にもメディアである。ネット民がゲスな話題でゲスに騒ぐのとはワケが違う。メディアにはやはり「メディアの正義」というものがあってしかるべきで、その正義とは「本質を議論する」ということだと思う。その視点から言えば、一連のスキャンダルに関してはあまり本質的な議論がなされていない。

 ショーンK問題の本質については、当連載の第153回記事でも論じたが、今回の乙武氏不倫問題に関しても、ほとんど本質論が議論されていない。

タブー視されてきた「障害者の性」

 乙武氏不倫問題の本質はふたつある。ひとつは「障害者の性」の問題だ。今回の騒動で社会に対して明確になったことは、「障害者だって性欲がある」ということだ。これは言われてみれば当たり前のことだと思うだろうが、実際には日本の障害者支援の文脈では完全に無視されてきた問題である。もうほとんど「障害者には性欲というものがない」という前提で進められてきたと言っても過言ではない。というか、そのような問題を議論すること自体がタブー視されてきたと思う。

 その証拠に、「障害者ネタ」はテレビや新聞などメディアの定番ネタで、障害者支援の団体や取り組みの多くが頻繁に紹介されている。日本テレビの『24時間テレビ』でも数多くの障害者が登場して、彼ら彼女らの奮闘ぶりを称えるVTRを流したりしているが、メディアの中で障害者の性が正面切って取り上げられることはほとんどなかった。

 欧米には障害者の性処理を行なうNPOがあるし、日本にも障害者の性問題に取り組む「ホワイトハンズ」という団体もある。こちらの団体のウェブサイトのメディア掲載履歴を見ると、最近はテレビメディアも障害者の性問題に少しは関心を持つようになってきたようだが、まだまだ一般の認知度も、理解も足りない。

 ゆえに今回の乙武氏不倫問題は、まだまだ理解が足りない障害者の性問題を一気に社会的イシューへと引き上げる千載一遇のチャンスだった。にもかかわらず、メディアもネット民も、乙武氏の性癖の問題に(単なる好奇心として)矮小化するだけだ。

 また、乙武氏自身も、この問題を社会問題へと昇華させる気がないように感じる。乙武氏はこの障害者の性問題のまさに当事者中の当事者なのだから、これを機会にこの問題を広く深く社会で議論するきっかけとなってほしいと思う。だが、これについては後日改めて論じたいと思う。

「妻が母になったから不倫」という男性バイアス

 乙武氏不倫問題のふたつめの本質は、彼自身が発言しているように「妻が母になったから不倫した」問題だ。これは、妻が妊娠中(しかも臨月!)に不倫したことがバレて議員辞職するハメになったイクメン(元)議員の宮崎謙介氏の一件にも通底するが、そもそも「妻が妊娠中の不倫」は妻からすれば最も許せない行為であるし、「妻が母になったから不倫した」、つまり「女性としての魅力がなくなった」というのは、最大の侮辱である。

 乙武氏が釈明の弁の中でこのような言葉を使うこと自体、彼の中に強い「男性バイアス」を感じ取ってしまうのだが、これは彼だけの問題ではない。いまだに日本の男どもにはびこる女性蔑視というか、女性無視のメンタリティの表れである。

 要するに、日本の男どもはいまだに、女性とくに妻に対してリスペクトというものがない。だからこのような発言が出てくるし、こうした発言がそれほど大きな問題とならない(むしろ、よくある話だと納得する男性のほうが多いのではないだろうか)。その証拠に、今回の件では乙武君批判もあれば擁護の発言も多いが、この「妻が母になったから不倫」発言を問題視している発言は少ない。その少ない発言のほとんどは女性からのもので、男性の論客でこの発言問題を大きく取り上げた人間は(少なくとも僕が見た限りでは)ほとんどいない。

 そして、この「妻が母になったから不倫」発言がたいして大きな問題にならないところに、実は日本の「少子化問題の本質」が潜んでいるのだ。日本の少子化問題は、本質がほとんど議論されていない。少子化対策と言えばほとんどの場合、保育園と産休/育休の話題ばかりだ。もちろん、イクメンが増えることも、男性が育休を取ることも大事だ。しかし、イクメン/育休も、女性へのリスペクトが背景になければ形骸化どころか、下手すれば不倫のカモフラージュにさえ利用されることは、ゲス不倫のイクメン(元)議員が証明して見せたではないか。

議論がなされない、保育士の給料が上がらない理由

 また、保育所問題、待機児童問題についても本質的な議論がほとんど出てこない。ご存じのように「保育園落ちた日本死ね!!!」と書かれた匿名ブログがメディアでも話題となり、民主党(当時。現在は民進党)の山尾志桜里議員が衆院予算委員会で取り上げ、安倍総理に厳しく迫ったことも大きなニュースとなった。

 ちなみに、「この匿名ブログを書いたのは熊本県在住のいわゆる“プロ市民”である」との追及がネットで吹き上がった。その一方で、この匿名ブログを取り上げた山尾議員に対しても、『週刊新潮』が「山尾志桜里代議士の奇妙な政治資金」と題し、資金管理団体をめぐる不透明な寄付金問題を特集。さらに、産経新聞などは「地球5周分に匹敵する疑惑のガソリン代」と山尾議員の経費問題を追及する記事も掲載された。

 このように保育問題があらぬ方向へと向かい、ほとんど場外乱闘の様相を呈しているが、その保育問題も「保育士の給料を増やせ」とか「保育関係の予算を増やせ」とか、金の話ばかりだ。もちろん、保育士の給料が上がることは良いことだし、予算が増えることも悪くはない。しかし、保育問題の本質は本当に金の問題だけなのか。

 たとえば、保育士の給料が安いと言われ、安いから離職率が高くて保育士が足りない、だから待機児童が増えるという「文脈の議論」ばかりが横行しているが、本当に保育士の給料は安いのか。安いとすれば、上がらない本当の理由は何か。その議論がほとんどされていない。

 そうした状況の中で、とあるブログがちょっとした話題になっている。「保育園落ちた、日本死ね → 死ぬべきは既得権益のみなさんだったよ」という記事だ。要するに「いまの保育問題の根源は、既得権益者、つまり認可保育園を運営する社会福祉法人にある」という指摘だが、この記事の元ネタとなっているのが2009年11月に掲載された『ダイヤモンド・オンライン』の記事「新規参入は断固阻止!! 保育園業界に巣くう利権の闇」である。

 この記事によれば、認可保育園は、認可外保育園がもらうことのできない巨額の施設整備費を受け取っているだけなく、潤沢な保育費用を補助金としてもらっているという。たとえば東京都の場合、0歳児1人当たりに対して、私立認可保育園で約30万円、公立では約50万円を毎月補助しているそうだ。

 にもかかわらず、なぜ保育士の給料が安いと言われるのか。実態はどうなのか。平成26年度の厚生労働省の賃金構造基本統計調査を元にした、保育士を目指す人のための情報サイト『保育士の仕事』によると、下記のとおりだ。

*以下、保育士を目指す人のための情報サイト『保育士の仕事』掲載記事「保育士の給与・年収」より引用。

◎保育士の平均年収統計
平成26年度の厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均年収は34.7歳で310万円ほどとなっています。

・平均年齢:34.8歳
・勤続年数:7.6年
・労働時間:168時間/月
・超過労働:4時間/月
・月額給与:216,100円
・年間賞与:573,800円
・平均年収:3,167,000円

出典:厚生労働省「平成26年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

 これによると、保育士の平均収入は月収で約21万、年収で約310万円。しかしこの数字は、公立、民間を含め、様々な保育園のケースが含まれていて、世間で言われている保育士の給与実態よりも高いものと思われる。僕が実際に保育士にヒアリングしたケースでも、学校法人や認可保育園であっても給料は月10万円台と聞いている。理屈のうえから言っても、保育士の給与実態はやはり安すぎると思われる。

保育ビジネスに横たわる欠陥

 では、「本来払われるべき給与」と「実態」との乖離はなぜ起きるのか。業界の体質も含めたビジネス構造に何かしらの問題、欠陥があるのではないか。その根本的な問題を明確にしない限り、山尾議員が主張したように、保育士の給与を一律5万円上げたところで根本的な問題解決にはならない。

 たとえば、保育士の給与を上げるためには、「補助金を増やすか、保育料を上げるしかない」と保育問題の専門家は唱える。しかし、保育所というものは基本的にサービス業だ。サービス業のコストは、基本的に場所代と人件費。つまり収入が一定の場合、場所代を減らせば人件費を上げることができる。つまり、保育士の給与問題は「保育園の立地コスト問題」としてもっと論じる必要がある。また、皆さんもご存じのとおり、待機児童問題はとくに東京など都市部で深刻だ。にもかかわらず、都市部のほとんどは立地コストが高い。ここを解決しなければ、保育所問題も抜本的に解決できないだろう。ビジネス構造を変えるのは、そういう本質的な議論をするということだ。

 そのためのひとつの方策としては、「廃校の利用」が考えられる。たとえば、東京23区では2002年から2006年にかけて、52校もの小中学校が廃校となっている。千代田、中央、港、新宿、文京、台東、渋谷の都心部だけでも13校だ。しかし、このレポートを見ても、文科省の「みんなの廃校プロジェクト」の「廃校施設等活用事例リンク集:児童・高齢者などのための福祉施設」のリストを見ても、保育所としての事例は一件のみ。廃校が保育所として積極的に活用されているようにはとても思えない。

 最近も旧都立市ヶ谷商業高校の跡地利用をめぐり、「保育所を!」という地元民の要望を無視して、桝添都知事が韓国人学校を作るために韓国政府に貸与を決めたとして猛烈な抗議活動が起きているが、この一件を見ても、文科省も地方行政も保育所問題の抜本的な解決に取り組んでいるとは思えない。

 問題はその理由だ。学校行政は文科省の管轄で、保育は厚労省の管轄だからなのか。あるいは、前述の『ダイヤモンド・オンライン』記事に加え、保育問題に取り組む一部の人たちから指摘されているような「地方行政と認可保育園(既得権益者)の癒着」が原因なのか。たぶん、原因はひとつではないのだろう。いろいろな権益、権限が重なり合って、保育サービスのイノベーションを阻んでいるのだと思う。

保育行政に必要な 極端で思い切った「視点の変換」

 それを解決する方法は「規制緩和」しかないのだが、保育行政においてはすでに株式会社の参入という規制緩和が行なわれている。しかし、実際にはこの規制緩和策も効果を上げていない。

 その理由については、保育ビジネスを手がけるJPホールディングスの山口洋社長が、『現代ビジネス』のインタビューに対して、待機児童が減らない大きな理由として「社会福祉法人の問題」を述べている。山口氏によれば、待機児童問題が解決しない大きな理由は「社会福祉法人と地方行政が結託して新規参入を阻んでいる」からだという。 

 たとえば、世田谷区は待機児童ワーストなのに株式会社の保育ビジネス参入を認めていないという。これが保育業界の実態だとすれば、保育行政は地方行政の仕事なので、いくら国が規制改革して保育問題を解決しようとしても無駄ということになる。では、どうすればよいのか。

 保育問題の本当の敵が巨大な既得権益だとすれば、それに匹敵する大きな対抗勢力を作ればよい。本来、その対抗勢力とは民間(企業やNPO)なのだが、保育行政に対して民間が無力だとすれば、その対抗勢力は行政の中に作るしかない。たとえば、経産省だ。保育というのは福祉行政でこれは厚労省の仕事だが、「新しい保育ビジネスの育成」という視点で保育問題を考えるというわけだ。「産業の育成」は経産省の仕事なので、経産省が保育ビジネスに関われるように規制改革すればいい。

 いわば、従来からある厚労省主導の保育行政に、経産省主導の保育ビジネスをぶつける。どちらが保育問題を本当に解決できるか競わせる。競争はイノベーションの源泉だ。保育ビジネスにもイノベーションが必要だとすれば、どこかで強力な競争原理を導入する必要はあるだろう。

 そのために政府は2000年に規制改革して、株式会社が保育ビジネスに参入できるようにしたはずなのだが、15年経ってもこの問題は解決できなかった。もうこの規制改革は失敗したということなのだから、改革のためには「さらなる改革」が必要だろう。それは単に補助金を増やすことではないはずだ。

 僕の周辺にも、保育問題に取り組み、保育の新しいイノベーションを起こそうとする若き社会起業家がたくさんいる。そのような人間の情熱も力も、いまの業界の体質や行政が活かせないのであれば、それを活かせる新しい行政が必要だろう。経産省の例は単なる思いつきだが、しかし、それくらい極端で思い切った「視点の変換」がこの国の保育には必要なのだと思う。

2016年4月5日   ダイヤモンド・オンライン


障がい者サッカー魅力十分

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 障害者サッカーの7団体を統括する日本障がい者サッカー連盟が1日、日本協会(JFA)の加盟団体として発足した。これまでは独立していた障害者サッカーだが、統括団体の設立に加え、協会の加盟団体となることで、どのような変化が起こるのだろうか。

 「サッカーなら、どんな障害も超えられる」-。新連盟の発足に際し、こんなキャッチフレーズが書かれた横断幕が会見場に掲出されていた。新連盟を構成するのは、それぞれ障がいの内容に応じて競技規則に違いが見られる、7つの競技団体だ。

 足や腕に切断障がいを持つ人が行う7人制サッカーである『アンプティサッカー』、脳の損傷によって運動障害がある人が行う『CPサッカー(脳性まひ者7人制サッカー)』、精神障がいがある人がフットサルのルールで行う『ソーシャルフットボール』、知的障がいがある人が行う11人制サッカーである『知的障がい者サッカー』、自立した歩行ができない障害を持つ選手が電動車椅子に乗ってプレーする『電動車椅子サッカー』、視覚障がいのある人が行う5人制サッカーで、全盲のブラインドサッカーはパラリンピック種目でもある『視覚障がい者サッカー』、聴覚障がいのある人が行い、デフサッカーとも呼ばれる『聴覚障がい者サッカー』、以上の7つとなっている。

 恥ずかしながら、これほど多くの障がい者サッカー競技があることに対して知識がなかったが、各団体の紹介映像などを見ると、本当に大きな驚きがあった。目が見えないとは思えないプレー、音が聞こえないとは思えないプレー、片足が切断されているとは思えないプレーなどにあふれていた。さらにどの競技の選手も、日本代表というカテゴリーまでに登り詰めている選手は1人のアスリートとして自らを高め、勝利を追求する姿勢が伝わってきたこと。それぞれの状態に応じて参加できる競技があり、その中には世界大会につながるものもある。連盟が掲げる「サッカーなら、どんな障害も超えられる」という言葉は、もう大げさなキャッチフレーズには聞こえなくなった。

 この日の設立会見に出席した各競技の選手が、周囲に求めるものはさまざまだ。「自分たちがやっているサッカーの魅力を知ってほしい」、「一般社会に対して障がい者に対する理解が深まって欲しい」、「深く考えず、ハンディがあっても同じ人間がこんなことをやっているんだな、と見てほしい」。競技や障がいそのものの認知度を高めるため、各選手は懸命に自らの競技をPRしていた。

 今回、日本協会の加盟団体となったことで大きな希望も生まれた。日本代表ユニホームの統一化だ。これまではそれぞれ独立した競技団体だったため、各団体の代表チームは、男子のA代表を中心としたサッカー日本代表のユニホームとは違うもので試合に出ていた。もちろん日の丸を背負うという意義は着ているものによって変わるものではない。ただ、ブラジル国籍を有しており、過去にはブラジル代表にも入った経験を持つエンヒッキ松茂良ジアス(アンプティサッカー)は、こう言い切る。「18歳の時、ブラジル代表に入ってA代表(セレソン)と同じユニホームを着た。これは本当に気持ちが変わるんです」。日本協会の田嶋幸三会長は「既にA代表と同じユニホームを着られないかという話は進めている。さまざまな問題をクリアして実現したい」と語れば、日本障がい者サッカー連盟の北沢豪会長も「各団体の契約などの問題もある。そういったものも尊重しながらだが、ベストなのは日本中が一つになれるユニホームを選手もサポーターも着られれば」と見通しを語った。

 2020年には東京五輪・パラリンピックも控えるが、新連盟の北沢会長は「2020に向けた活動もあるが、大切なのは、日常を変えること。そのきっかけがサッカーであれば」。魅力と可能性にあふれる障がい者サッカーを、応援していきたい。

日本障がい者サッカー連盟が発足した(左から4人目は北沢豪会長)

日本障がい者サッカー連盟が発足した(左から4人目は北沢豪会長)

2016/04/05   デイリースポーツ

新事業所完成 障害者いきいき就労

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 仙台市宮城野区の社会福祉法人「仙萩の杜ぴぁ」は2日、運営する障害者就労事業所の移転に伴う開所式を、同市青葉区の福祉プラザで行った。利用者ら約90人が出席し、新施設で元気よく働くことを誓った。
 ぴぁは1日、若林区遠見塚から宮城野区日の出町に事業所を移転。弁当や魚介のくん製をつくり、販売している。佐藤耀代理事長は「施設が大きくなり、生産数を増やしていきたい」と話した。
 ぴぁは昨年11月、NPO法人「福祉ネットABC」を母体に設立。現在、NPO法人は県庁18階で「レストランぴぁ」を運営している。

開所式で合唱を披露する施設利用者ら

2016年04月05日  河北新報


障害者が惣菜配達 新事業に300万円融資

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 日本政策金融公庫仙台支店は、配達型社員食堂事業を今春始める一般社団法人「ぶれいん・ゆにーくす」(仙台市)に300万円を融資した。起業家支援に取り組む一般社団法人MAKOTO(マコト、仙台市)と連携した融資制度の活用第1号。
 ぶれいん・ゆにーくすは自閉症や発達障害がある人の就労や生活を支援する団体。新事業は、企業の職場などに冷蔵庫と電子レンジを一体化した機器を置き、総菜を定期的に届ける。配達業務は障害者が担う。
 融資を踏まえ、マコトは独自のクラウドファンディング「チャレンジスター」で不特定多数の人から資金を募集し、より厚みのある資金供給を目指す。

2016年04月05日   河北新報

進化競う「サイバスロン」 技術で挑む障害者の国際競技会

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 ロボット技術などを応用した高度な義手や義足、車いすなどを用いて、身体障害者が競技に挑む国際大会「サイバスロン」が今秋、スイスで初めて開かれる。日本からも大学やベンチャー企業の研究者が参加を予定。高齢者や障害者の普段の暮らしを支える製品への応用も見すえ、開発に取り組んでいる。

特集:チャレンジド

 ■今年秋に初開催 スイス・チューリヒで

 選手が座るシートを水平に保ったまま、電動車いすが大きな段差や斜面を乗り越えていく。四つの車輪それぞれに取り付けたセンサーが、路面の状態を検知して姿勢をコントロール。乗った人はレバーを動かして前後左右に進む。

 和歌山市の和歌山大で中嶋秀朗教授(ロボット工学)が開発中の電動車いす。11チームが大会に参加登録している電動車いすレース部門に出場予定だ。

 競技のコースには、階段や段差、傾斜といった障害物がある。「悪路を進んでも不安感はない。素晴らしい仕上がり」と、選手として乗る予定の伊藤智也さん(52)は語る。

 伊藤さんは元車いすランナーで北京パラリンピック金メダリストでもある。「車いすで生活していて一番困るのが悪路。建物などのバリアフリー化が進んでいるが、乗り物でバリアフリー化しようという発想が素晴らしい」

ログイン前の続き 中嶋教授の目標はずばり優勝だ。「いい成績を出せれば、さらに多くの出会いが生まれ、よりよい製品になる」と期待する。

 サイバスロンはコンピューターなどを意味する「サイバー」と競技を意味する「アスロン」の造語とされる。人力が主体のパラリンピックと違い、コンピューター制御した機械が人間の動きを補うのが特徴だ。

 大会は10月にスイスのチューリヒで開かれる。スイス連邦工科大のリハビリロボットの研究者らが企画、技術の進歩や障害者の社会参加を促すのが狙い。障害物コースや、脳波でコンピューターゲームを操作する競技など6部門あり、主催者のウェブサイトによると、現在欧米やアジアからのべ70チームが参加を予定している。

 強化義手の部門に出場予定の電気通信大の研究者らが立ち上げたベンチャー企業「メルティンMMI」(東京都渋谷区)。開発中の特殊な義手は、筋肉が収縮する際に生じる微弱な電気をセンサーで読み取り、モーターで義手を動かす。

 研究開発を担当する粕谷昌宏さん(28)が前腕部の3カ所にセンサーをつけて手を握ると、義手も同じ形をした。パソコンにはあらかじめ粕谷さんの手の動きと、それに伴う電気の変化の波形が登録されている。

 大会では義手を装着した選手が荷物を移動させたり、洗濯ばさみで布をひもにとめたりするコースに挑む。伊藤寿美夫社長(49)は「より小型化も進め、金メダルを目指したい」。

 ■日常生活への応用に期待

 出場チームには、大会に向けた技術開発を日常生活で使う製品に生かしたいという思いがある。

 強化義足部門に参加予定のベンチャー企業「サイボーグ」(東京都渋谷区)の遠藤謙社長(37)は、後輩が骨肉腫で足を切断したことをきっかけに義足の研究を始め、同社を2年前に立ち上げた。大会用の研究も生かし、動きが自然で壊れにくく、軽量で安価な義足の開発を目指す。

 和歌山大の中嶋教授も、高齢化が進むなか、道路の段差など身近にある障害物を乗り越えられる、新しい乗り物の開発が目標だ。

 一方、サイバスロンと同様に、技術とスポーツを融合させる試みは国内でも始まっている。昨夏、ロボット研究者やゲームデザイナーらが「超人スポーツ協会」を設立。新しいスポーツを考案し、4年後の世界大会開催が目標だ。

 協会の共同代表の稲見昌彦・東京大教授(人間拡張工学)は「サイバスロンがロボット研究者と障害者らの出会いのきっかけになって欲しい。F1の技術が大衆車に生かされたように、スポーツで使われた最先端のテクノロジーが社会に還元されればいい」と願う。

 写真・図版

朝日新聞デジタル   2016年4月5日 

障害者の活躍促す社会に

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 公的機関や民間事業者に対して、障害者への不当な差別を禁止する「障害者差別解消法」が4月から施行された。

 安倍政権は時あたかも「一億総活躍社会」の実現を掲げる。法施行を機に障害の有無に関係なく、個人が持てる能力を生かし、社会に参加し、活躍できる環境づくりを進めたい。周知が進んでいるとも言い難いので、政府は法の趣旨の徹底も図ってもらいたい。

 この法律は、日本政府が国連の「障害者権利条約」を締結するに当たって必要との位置づけで制定された。障害者であるというだけで、正当な理由もなく、サービスの提供や入学などを拒否する差別的な扱いを禁じている。

 車いすでの移動の手助けをしたり、筆談や点字でコミュニケーションしたりする配慮なども必要とした。これらの配慮については国や地方公共団体は義務とし、民間事業者は努力義務とした。

 また、同時に施行された「改正障害者雇用促進法」では募集、採用、賃金など雇用面での不当な差別禁止が定められた。車いすの人のための机の高さの調節など働きやすい職場をつくる配慮は、民間事業者でも義務とされた。

 法律は、事業者などにとって過度の負担となるような配慮まで求めているわけではない。障害者の状況、能力などをよく理解したうえで、事業者と障害者が互いによく話し合い、最も適切な解を求めていくことが大切になる。今後は形だけの配慮に終わらぬよう、地域で監視していく仕組みの強化なども求められるだろう。

 障害者雇用を進める企業からは「それまであうんの呼吸で進めていた仕事を障害者にわかりやすい形に図式化したところ、健常者のミスも減った」といった声も出ている。障害者がかかわることで、予想以上の利益がもたらされる可能性もあり得る。

 障害者を差別しない社会は、だれもが暮らしやすい社会だともいえる。堅苦しく考えず、前向きに取り組んでいきたい。

2016/4/5   日本経済新聞

車いすなど障害者支援身近に 岩手大会実行委が周知

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 本県開催の第16回全国障害者スポーツ大会まで5日で200日となった。県実行委は映像資料「障がい者サポートのポイント」を制作してホームページ(HP)などで公開し、大会関係者のほか多くの県民が全国から訪れる選手や観戦者らに「何かお手伝いすることはありますか」と進んで声を掛けられる意識の醸成を図っている。

 映像は約30分。声の掛け方や車いすの押し方、障害者のための各種マークの解説のほか、肢体不自由、視覚、知的など障害の種別ごとに困りやすいポイントや、手の差し伸べ方などを紹介した。県社会福祉協議会や県内の障害者団体などの協力を得て内容を吟味し、出演もしてもらった。

 大会HPに索引があり、DVDの貸し出しも可能。宿泊施設や公共交通機関を含めた大会関係者向けの研修などでの活用も見込む。

【写真=映像資料「障がい者サポートのポイント」の2場面】

(2016/04/05)  岩手日報

改正公選法 成立…駅・商業施設に投票所 今夏参院選から

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 国政選挙や地方選挙の投票日に、駅やショッピングセンターなどの「共通投票所」で投票できるようにする改正公職選挙法が6日午前、参院本会議で自民、民進、公明党などの賛成多数で可決、成立した。6月19日に施行され、選挙権年齢の18歳以上への引き下げとともに、国政選挙では夏の参院選から適用される見通しだ。

期日前、時間延長も

 現行制度では、有権者は投票日に近所の学校や公民館など選挙管理委員会が指定した一つの投票所でしか投票できない。改正法施行後は、駅や大型商業施設など多くの人が集まり利便性が高い場所に、自治体の判断で共通投票所を設置することが可能になる。その自治体に住む有権者は、指定の投票所か共通投票所のどちらかで投票する。必要があれば自治体の区域外に共通投票所を置くことも認める。衆院選で、一つの市が複数の小選挙区に分かれている場合、有権者は同じ共通投票所で投票できる。何カ所設けるかは自治体が決める。

 自治体は各投票所を通信回線で結び、二重投票などの不正やミスを防止する。共通投票所は期日前投票では既に認められており、各地の大学などに開設された例がある。

 期日前投票について原則午前8時半から午後8時までの投票時間を、各自治体が最長で午前6時半から午後10時まで広げることを認める。

 有権者が投票所に連れて行くことができるのは現在、幼児と「やむを得ない事情があると投票管理者が認めた者」に限られているが、18歳未満の同伴を可能にする。こうした一連の制度改正には、有権者が投票しやすい環境を整え、投票率の向上につなげる狙いがある。主権者教育の効果も期待されている。

 選挙の際、聴覚障害者に筆記で候補者らの発言を説明する「要約筆記者」への報酬支払い解禁や、洋上投票の要件緩和を盛り込んだ改正公選法も6日午前の参院本会議で全会一致で可決、成立した。政府提出の改正法とは別に、衆院特別委員会の委員長提案として3月30日に国会に提出されていた。

 手話通訳者への報酬支払いは既に認められているが、要約筆記者にも認めることで、障害者の投票参加をさらに促す。

 洋上投票は従来、投票者のほかに管理者と立会人が乗船している必要があったが、改正によって、管理者らがいなくてもファクスで投票が可能になる。

改正公職選挙法のポイント

・自治体に住む有権者が誰でも投票できる「共通投票所」を駅などに設置

・期日前投票で最大2時間、開始時刻の前倒しや終了時刻の延長が可能に

・投票所に同行できる子どもを「幼児」から「18歳未満」に拡大

・聴覚障害者に筆記で発言を説明する要約筆記者への報酬支払いを解禁※

 ※は議員立法による別の法改正

毎日新聞  2016年4月6日


聴覚・視覚障害に負けない 筑波技術大で入学式

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 聴覚、視覚障害者のための国立大学法人筑波技術大(つくば市天久保)で五日、入学式が開かれた。大学と大学院の新入生百人が式に臨み、新たに始まる学生生活に向け努力と成長を誓った。

 障害のある学生たちに対応し、式の進行は音声とともに手話や字幕でも行われた。大越教夫学長は、今夏から選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられることから「ぜひ皆さんの声を届けて」と選挙への積極的な参加を呼び掛けた。「精いっぱい学習し、大きく成長することを願っている」と式辞で期待を込めた。

 新入生を代表して、産業技術学部の大川実樹奈さん(18)=佐賀県出身=が手話を交え「同じような障害を持った仲間と語り合い、人間としての幅を広げていきたい」と抱負を述べた。学生の八割が寮生活を送り、自らも入寮することから「自立のための良い機会。前向きに頑張っていく」と誓った。

 来賓の石野富志三郎・全日本ろうあ連盟理事長は、障害者差別解消法が今月施行されたことに触れ「対話の力が私たちにも求められている」と強調した。

新入生を代表して手話を交えて宣誓する大川さん(中)

2016年4月6日  東京新聞

「タダのランチはない?」英国の福祉改革で死に追いやられる障害者

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[海外問題レビュー]英国労働連係福祉深くのぞいて見ること

マーク・ウッド(Mark Wood、44歳)。 複合的精神疾患を持ち、労働に適する状態ではないという専門医の所見にもかかわらず 「勤労可能(Fit for Work)」と判定される。 これにより所得補助が削減され、経済的困難により死亡。 死亡当時の体重は約35kg。

 デービッド・クラプソン(David Clapson、59歳)。 第1型糖尿病。退役軍人。 雇用センター(Job Centre)の面談に一度も参加せず、所得補助中断。 3週間後にインシュリン不足による急性合併症で死亡。 死亡当時の全財産は3.44ポンド(約540円)。 胃に食物が全くない状態で、電気は料金を納められずに切れた状況だった。

ジャクリーン・ハリス(Jacqueline Harris、53歳)。 視覚-遅滞重複障害。 看護師として働いていたが障害により退職。 障害年金で暮らしていたが「勤労可能」と判定されて年金が中断される。 再審判定を要求したが決定は翻意されなかった。 身辺を悲観して自殺。

上の事例はすべて最近英国で起きた。 これほど極端に駆け上がっている英国の福祉改革過程で死んでいった人々を追慕するウェブサイト(http://calumslist.org)までできた。 このサイトに記録されている人だけでも60人にのぼる。 英国労働年金部の統計によれば、 2011年12月から2014年2月までの勤労能力評価で2380人が死亡した。 英国ではいったいどんなことが起きているのか。

 

▲左からマーク・ウッド、デービッド・クラプソン、ジャクリーン・ハリス.

英国の福祉体系は、2010年に保守連立内閣ができて大々的な構造調整の対象になった。 キャメロン首相を筆頭とする保守連立内閣は「働く福祉(Welfare that works)」という旗じるしの下で、 求職者手当て(Jobseeker's Allowance)、障害者に支援される雇用・支援手当て(Employment and Support Allowance)、 住居給付(Housing Benefit)、勤労奨励税制(Working Tax Credit)、児童税金控除(Child Tax Credit)、所得補助(Income Support)の 六種類の給付を2016年までに一つに統合する計画を発表した。

問題は、非障害者を対象とする求職者手当てと障害者を対象とする雇用・支援手当てを統合する過程で、「受給者大移動プロジェクト」が進められたことだ。 勤労能力評価(Work Capacity Assessment)を通じて既に雇用・支援手当てを受けた人のうち、 働ける人を「探し出す」政策は、労働党政府の時に導入されてすでに怨まれていたが、 新しくできた保守連立内閣は、労働党の政策もとても粗末だったとし、 さらに強硬な労働連係福祉をすると明言した。 保守連立内閣は「勤労適合(Fit for Work)」と判定された人に対する求職義務を強化しただけでなく、 雇用・支援手当てを受ける人々も「無条件受給集団」と「条件付き受給集団」に分け、 条件付き集団に対しては「働く準備」を義務化した。

勤労能力評価について労働年金部は、健康の専門家たちが対象者の現在の健康状態と環境を分析して評価し、 求職と雇用後の勤労時の健康問題に関する助言をするものと紹介する。 障害者や長期疾患者が仕事場を見つけ、長い間働けるように専門家が健康の面倒を見るということだ。

だが実際には勤労能力評価は非常にいい加減に進行している。 ジャクリーン・ハリス氏は 「椅子に座って、コートを脱ぐ前に」評価が終わった。 評価者の質問はただ一つ。 ここにくる時、一人でバスに乗ってきたかどうかだった。 マーク・ウッド氏は専門医が 「心身状態が極端的に悪化していて、どんな仕事もしてはいけない」という所見書を提出したが「勤労適合」と判定された。

こんな状況なのに、労働年金部は勤労能力評価を対面ではなく電話でできる方案を導入する計画を発表した。 理由は簡単だ。「費用効率化」だ。 勤労能力評価は労働年金部の公務員ではなくエトス(Atos)という民間企業が委託されて行う。 公共部門に民間企業を流入させ、表面的には公共性を維持しつつも内部的には民営化を進める「ビッグソサエティー(Big Society)」政策の一環だ。 予算が限定的な政府から委託された民間企業は、費用を最小化し、 利益をあげる戦略を取るほかはなく、 これがサービスの質的低下につながるのは自然な現象だ。

誰か障害者が「勤労適合」と判定されるとそれまでの雇用・支援手当てが中断され、 求職者手当てを受け取ることになる。 雇用・支援手当ては障害者に提供されていたもので、 障害者の勤労環境が劣悪な現実を反映して、非障害者に提供されている求職者手当てよりも手当ては高い。 「勤労適合」と判定されると、不足した手当てによって生活が難しくなるので、がんばって仕事を探すしかない。 しかしもし精神的、身体的な障害により、雇用センターで義務的に履行すべき面談や訓練プログラムに参加できなければ、 「努力せず受給だけを受け取ろうとする不良受給者」になって、制裁の対象になる。

悲劇はここから始まる。 職業もなく、受給も打ち切られた人々は、(幸いにも)貯金があればそれで延命する。 貯金がなくなれば? 周辺に手を出して金品を要求する。 貯蓄もなく、金を借りられる周辺の人もいなければ、その時は死だけが唯一の選択肢となる。 「唯一」の選択肢は強制の同義語だ。 乱暴に言えば、彼らの死は国家が強要した。

 

福祉の本質を喪失した労働連係「福祉」...韓国の危険な踏襲

 

90年代以後に新自由主義福祉改革が始まり、ヨーロッパ各国で福祉給付より労働市場参加を促進しようとする「労働連係福祉(Welfare-to-work)」が強化されている。 特に英国は、2010年から保守-自由党の連立政権が樹立され、 福祉総量の大々的な縮小をはじめ、 昨年の総選挙で保守党が単独過半確保に成功してこの流れにさらに弾みがついた。

最近韓国で進められている「福祉構造調整」もこうした傾向をそのまま踏襲している。 2014年に導入された「勤労貧困層就職優先支援事業」は、 「働く能力がある基礎受給者」を雇用センター就職成功パッケージに優先的に参加できるようにする。 受給者は雇用センターで1か月の職業相談プログラムを受け、自活プログラムにつながる。 個人的な条件ですぐに就職することが難しかったり、就職成功パッケージを履修したのに就職できない場合には、国家は彼らも諦めない。 自活勤労に参加させたり民間委託事業の「希望リボン事業」により、また職業訓練をさせる。 希望リボンを履修してもやはり就職できない人は「モラルハザードを防止」するという名目で、 2年間類似事業への参加が制限される。

興味深いのは、希望リボン事業と就職成功パッケージなど、受給者の雇用を支援する業務が民間に委託されている点だ。 そして韓国で一番活発にこの事業に飛び込んでいる企業はインジアス(Ingeus)グループで、 英国、フランス、ドイツ、ポーランド、米国、カナダなどでも同じ事業をしている。

だが、流行だからと言ってただ従うことほど愚かなことはない。 英国と韓国は出発地点からして違う。 英国労働年金部の2016年の統計によれば、 現在英国で社会福祉を受けている生産可能年齢(15~64歳)人口は合計481万人。 該当年齢区間の総人口が4千224万人なので、10%以上の人口が社会福祉を受けている。 この割合はすべての年齢帯で同じように現れる。

しかし韓国の場合、2014年に11歳から64歳の全人口3924万人のうち、 基礎生活受給を受ける人口は78万人で、割合は2%に届かない。 全人口の10%が公共福祉を受ける英国でも、この割合を減らしていくと、 人が数千人ずつ死んでもやっと2%程度が国家から補助を受けている韓国で英国と似た「労働連係福祉」を施行するということは、 餓死直前にある人がダイエットをすると言って食を断つのと同じではないだろうか?

福祉の本質は「社会安全網の構築」だ。 民間領域から排除された構成員を保護することだ。 それで共同体のすべての構成員が適正な水準の生活の質を保証され、 生存ではなく生活を変えていけるようにしなければならない。 しかし国家が民間領域、それも資本が「価値がある」とする領域だけを「労働」と認め、 これを中心に福祉体系を再編していく現象は、 国家が福祉の本質を喪失しつつある証拠だ。 すでに民間領域から排除された人々をまた国家が民間領域にぎゅうぎゅうと押込んでいるわけだ。 福祉は費用ではなく責任だということを喚起すべき時期が到来した。

 チェ・ハンビョル記者hbchoi1216@beminor.com 2016.04.04 



Facebook、視覚障害者のためにAIで写真の内容を説明する機能を開発

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Facebookは5日、AI(人工知能)を活用した自動代替えテキスト機能を開発し、視覚障害者でも写真の内容を、より具体的に音声で把握できるシステムを開発したことを発表した。なお、現在iOS上で画面読み上げ機能を利用しているユーザーに対してテスト実施を英語で行っているが、順次他の言語、他プラットフォームにも広げていく予定。

従来のFacebookでは、画面読み上げ機能(スクリーンリーダー)を利用しても、写真にさしかかると、写真をシェアしたユーザーの名前と"写真"という言葉が読み上げるだけであったが、今回のAIを使った自動代替えテキストにより、どのような写真なのかまでも音声で読み上げてくれるという。同社では、例として「画像には3人の人、屋外、笑っている」といった言葉を例示している。写真の解析には、何十億ものパラメータを持つ神経のように張り巡らされたネットワークを用いた物体認識技術を活用している。

同社では、「FacebookやInstagram、Messenger、WhatsAppでは一日あたり20億枚もの写真がシェアされています。写真などの視覚コンテンツをオンラインで共有することは、多くの皆様に楽しまれる表現手段として利用されていますが、一方で視覚障害者の方々には作成することも楽しむことも困難を伴うものです。世界で3900万人いるとされる全盲の方々や2億4600万人の弱視の方々をはじめとして、多くの方がFacebook上で写真を介したコミュニケーションの輪に入れないという思いをしているのではないでしょうか。」とその動機を述べている。また、機能は開発初期段階で今後も"写真の内容を説明する"というサービスの可能性を広げていきたい、としている。

  同社オフィシャルブログより

マイナビニュース  [2016/04/05]


障害者の成年後見支援

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◇県初、西部に法人 保護者ら相談や研修

 県西部の知的障害者らに成年後見制度の利用を勧める社団法人「あんしん後見せいぶ」が5日、設立された。米子市手をつなぐ育成会など障害者保護者団体の5団体が中心になって県内で初めて組織化した。21日に同市内で設立総会を開いて活動を始める。

 同法人によると、県西部で暮らす約2000人の知的障害者や発達障害者のうち、約1500人は成年後見制度を利用するのが適当だとみられるが、実際の利用者は200人と少ない。申し立て手続きの煩雑さなどの課題があり、同育成会や境港市育成会、もみの木家族会などの関係者が一昨年から支援法人の設立を協議してきた。

 法人の活動は、成年後見制度を利用するための相談や支援、各種の研修、後見人候補者の育成など。市の養成講座を受講した法人役員ら制度に詳しい4人を中心に、少人数の会合を開くなどして説明する。

 知的障害者の保護者で運営するため、人権問題や財産管理の悩み、定期的な見守りや生活支援の必要性などを、親の視点から指摘できるのが強みという。法人の理事長に就任した米子市手をつなぐ育成会の植村ゆかり会長(65)は「保護者も高齢化しており、将来を見越して複数の後見人を見つけておくことが必要」と話している。

 設立総会は午後2時から米子市錦町の市福祉保健総合センター「ふれあいの里」で開催。正会員は入会金3000円、年会費3000円で、賛助会員(個人・団体)も募る。問い合わせは安木達哉・副理事長(090・1189・0794)。

 県障がい福祉課によると、県内の知的障害者は5211人(2015年3月末現在)で、同様に成年後見制度の利用者は少ないとみられている。同課は「利用者にとっては、安心感や切れ目のない支援につながる取り組み。今後の活動に注目したい」としている。

  ◇成年後見制度 知的障害や精神障害、認知症などで判断能力が不十分な人に代わり、財産管理や契約行為などを行う制度として2000年に始まった。本人や親族、市町村長が申し立て、家裁が本人の判断能力に応じて支援方法、支援者を決める。

2016年04月06日 Copyright © The Yomiuri Shimbun


障害者の駐禁除外標章、相次ぐ不正 家族「あればタダ」

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 駐車禁止の場所にも車を止められるように障害者に交付される「駐車禁止除外標章」。大阪府警が大阪・梅田で取り締まったところ、4割近くが不正に使われている実態が浮かび上がった。多くは障害者の家族によるもので、府警は対策を強化している。

 大阪・梅田の新御堂筋。2月下旬、チケット制のパーキングに止めた車を府警の警察官が1台1台チェックしていた。ダッシュボード上に「歩行困難者使用中」と書いた標章があると連絡先を調べて電話をかけたり、戻ってきた運転手に話を聴いたりする。一帯のパーキング・チケットで実施した集中取り締まりだ。

 標章があれば60分300円のチケットを買わずに時間制限なく止められる。この日、標章を置いていた26台のうち14台(54%)は交付された本人が自宅にいるなどし、不正使用だと確認された。

 ワゴン車に戻ってきた男性を警察官3人が囲んだ。男性に障害はない。「標章は弟のもの。弟を送った後、自分の用事で使ってしまった」と言い、駐車違反の青切符(交通反則切符)を交付された。

 府警は昨年11月以降に集中取り締まりを5回実施。標章を置いていた計126台のうち47台(37%)に青切符を交付した。多くが家族による不正使用だった。

 別の日、記者が同じ場所で取材していると、男性(44)が標章を置いてワゴン車から降りてきた。標章は寝たきりの60代の父親のもの。「父を病院に送り迎えするため」などとして交付を受けたが、この日は1人で買い物に来たという。「梅田は駐車料金が高い。標章があればタダ。みんなやってるんじゃないですか」と言って立ち去った。

 ログイン前の続き不正使用はパーキング・チケットで目立つという。府警幹部は「パーキング・チケットは短時間に限り、多くの人が譲り合って使うのが本来のルール。不正に占拠すれば正当に止めようとしている人が困る」。

 府警は大阪市中心部の複数のエリアで今後も取り締まりを続ける方針だ。ある幹部は「不正使用が蔓延(まんえん)すれば、制度を見直そうという声が上がり、本当に必要な人が困ることになりかねない」と懸念する。

 大阪府の場合、標章は府道路交通規則にもとづき交付される。障害者本人が乗っていなければ駐車違反で取り締まりを受けるが、不正使用自体に罰則はない。だが、常習の場合は逮捕したケースもある。

 府警は昨年6月、大阪市中央区の勤務先近くの路上を駐車場代わりにしたとして会社役員の男性(66)を自動車保管場所法違反容疑で逮捕。男性は罰金20万円の略式命令を受けた。車を通勤で使っていたという。

 府警によると一昨年10月ごろ、「路上にいつも止まっている車がある」という手紙が南署に届いた。捜査員が確認すると、車内に男性の母親(当時88)の標章があった。母親は昨年4月に死亡したが、男性はその後も標章を置いて路上駐車を続けていた。

 府の規則では、本人が死亡するなどして標章が不要になった場合は「速やかに返納しなければならない」とされている。男性は取材に対し、「車高が高くて契約している立体駐車場に入らず、標章が便利だと思ってしまった。逮捕されると思わなかった」と話した。

 大阪市身体障害者団体協議会の手嶋勇一会長(74)は取り締まり強化を歓迎する。自身も病気で左腕を失って標章を持っているが、「もっと必要な人がいる」と使用を控えている。「標章に対して世間の目が過度に厳しくなれば、一番困るのは障害者。不正に使っている人はそのことに思いをはせてほしい」と話す。(荻原千明、中島嘉克)

     ◇

 〈駐車禁止除外標章〉 大阪府の場合、下肢不自由(1~4級)や聴覚障害(2、3級)、重度の知的障害などがある人が運転したり同乗したりしている車に掲げれば、標識などで駐車が禁止されている場所で規制対象から除外される。府警によると、本人や家族が警察署に身体障害者手帳などを持参して申請する。有効期限は3年間。警察庁によると全都道府県に同様の制度があり、2014年末で55万5046枚が交付されている。

2016年4月5日  朝日新聞デジタル

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