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障害者に「合理的配慮」を 差別解消法3年目

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◇行政手続きに手話通訳、車いすでの乗降介助

 障害を理由にした差別をなくすため制定された「障害者差別解消法」が、2016年4月の施行から3年目を迎えた。障害者が不当な扱いを受けないよう「合理的配慮」を行うのは行政機関の義務だが、府で先月、聴覚障害の女性に手話通訳を手配しないという、法に反する不祥事が発覚した。障害者側からの相談が増え続けている一方で、法の理念は社会に浸透していない。

 ■「本丸」の不祥事

 「障害者差別の解消に取り組む主体として、合理的配慮の提供は義務」

 4月末、府庁の全部署に福祉部長名の注意喚起文書が配布された。

 背景には、3月に環境農林水産部の職員7人が処分された、障害者差別問題がある。聴覚障害がある女性が府の窓口で行う行政手続きで手話通訳の手配を求めたのに、同部職員が2016年秋から半年間放置。昨夏になっても「筆談でお願いしたい」と、障害に配慮しない対応をしていた。

 府では法施行初年度、部局や課ごとに代表者を集めて研修を開き、出席者が所属部署に戻って内容を伝える方法で、法の趣旨の浸透を図っていた。ところが、環境農林水産部の1部署で情報が共有されず、趣旨を十分に認識しない職員が残る事態になっていた。

 行政機関には民間事業者や府民に法の趣旨を説明し、理解してもらう役割がある。障害者への配慮を著しく欠いた事業者には、行政指導もできる。ところが、その「本丸」での不祥事に、庁内に衝撃が走った。

 ■社会の認識も未熟

 ▽車いすの人が飛行機に乗る際、航空会社の社員が階段式タラップを介助なしに、はって搭乗させた▽知的障害者の成人女性が、了解なしに男性の介護職員にシャワー介助を受けた――。

 昨年度、府に寄せられた相談の一部だ。こうした相談をめぐり府が17年度に民間事業者に行った改善を促すなどの対応件数は989回で、16年度の517回を大幅に上回った。法の施行により、障害者側が差別事案への対応強化を求めていることが、背景にある。

 府は今年3月、府民の法に対する意識を調べるインターネット調査を行い、1000人から回答を得た。法が施行されたことを知っていたのは43・9%、「合理的配慮を行わないことは差別にあたると思う」と答えたのは40・8%で、施行から2年がたっても、社会の認識や理解は低いままとの結果だった。

 ■自治体の模索

 社会全体の意識が向上しないなかで、府や市町村は模索を続けている。

 府は昨年度、合理的配慮のイメージをつかんでもらおうと、障害者差別の具体例を示す冊子やDVDを作った。冊子はネット上で読めるようにし、DVDは今夏から民間事業者に2000円(税抜き)で販売する。具体例を載せたポケットサイズの手引書「“合理的配慮”接客のヒント集」も事業者に無料配布している。

 市町村も職員の対応要領を作成したり、事業者への出前講座を行ったりしている。その中で、最も踏み込んでいるのが茨木市だ。

 同市は今年4月、市内の民間事業者に行政機関並みに合理的配慮徹底を義務として課す条例を施行させた。来年8月からは、悪質な差別をした事業者が改善に応じなければ、事業者名を公表する罰則を運用する。

 市障害福祉課の担当者は「罰則を付けた踏み込んだ対応に臨まなければ、意識は高まらないと判断した。市側も、合理的配慮についてよりわかりやすく伝える姿勢を示したい」と話す。

 障害者の生活相談や支援を行うNPO法人「ちゅうぶ」(大阪市東住吉区)の石田義典事務局長は「障害者差別解消法は理念的で、具体的にどういうケースが差別にあたるかがわかりにくい。行政は寄せられた相談と改善例を積極的に周知して、法の趣旨を浸透させてほしい」と話している。

 ◇合理的配慮 障害者差別解消法は国や自治体、民間事業者に対し、障害を理由にサービス提供を拒むなどの行為を禁じている。「合理的配慮」は障害者の社会的バリアをとりのぞくため、車いす移動の介助や手話通訳の提供などを求められた場合に、過度な負担のない範囲で対応することを指す。行政機関に義務づけられ、民間事業者では「努力義務」とされている。

府が作成した合理的配慮のヒント集(府庁で)

府が作成した合理的配慮のヒント集(府庁で)

2018年06月12日 Copyright © The Yomiuri Shimbun


障害者のIT技術者養成 別府市の三菱商事太陽

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 別府市の三菱商事太陽とソフト会社「NTTデータイントラマート」(本社・東京都)は、障害者のIT技術者を養成する取り組みを共同で始めた。イントラマート社は障害者を対象にしたプログラミング技術習得講座の教材を提供。三菱商事太陽は講座の受講料を全額負担し、修了者を選考して雇用する。障害者の技能向上を支援し、就労機会の確保につなげる。

 両社はWebアプリケーションの構築や運用ができるソフトウエア「イントラマート」を習得する技術者養成講座の受講者の募集を1日から始めた。応募条件は▽障害者手帳を持っている▽自宅にパソコンがあり、インターネット接続環境がある▽三菱商事太陽に就職(在宅就労を含む)を希望し、週20時間以上働ける―ことなど。定員は20人で、応募多数の場合は選考する。県内外は問わない。研修期間は8月1日から2019年3月末までのうちの任意の2カ月間で、インターネットを使って自宅で履修できる。
 修了認定を受けた人の中から、実務研修などの選考を経て三菱商事太陽が在宅就労型のシステムエンジニアとして雇用契約を結ぶ。採用人数は決まっていない。応募や選考状況などを見て判断する。
 同社は従業員114人のうち約6割の70人が障害のある人で、その多くがITを活用して情報処理システムの開発やホームページ作成などの業務を担っている。在宅就労者も5人雇っており、これまでの実績とノウハウを活用するという。雇用契約に至らない場合も想定されるが、全国的にIT技術者の不足に悩む企業が増えているといい、障害者の就労支援にもつながるとみている。
 同社の福元邦雄社長は「やる気があっても通勤が困難で働くことを諦めていた障害者に仕事を提供できれば。来年度以降も継続していきたい」と話している。 ※この記事は、6月13日大分合同新聞朝刊13ページに掲載されています。

2018/06/13           47NEWS

2年 来月8日に講演 前橋で障害者協代表 

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相模原の障害者施設殺傷

 2016年に相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件から約2年となる7月8日、前橋市新前橋町の県社会福祉総合センターで、日本障害者協議会(東京都新宿区)の藤井克徳代表が講演する。テーマは「障害者をしめ出す社会は弱くもろい-やまゆり園事件から何を学ぶ、障害者権利条約を群馬県の隅々に」。事件の背景を振り返り、障害の有無にかかわらず一人一人の命や尊厳が守られる社会の大切さを考える。参加無料。

  講演会は、病気や障害、経済的問題などで日常生活に不便がある人たちの相談・支援に取り組む、精神保健福祉士▽社会福祉士▽医療ソーシャルワーカーの県内3団体が主催する「ソーシャルワーカーデー2018インぐんま」の一環。講演後はフロアディスカッションの時間を設ける。

 午後1~5時。申し込みはファクス(0279・54・0247)。問い合わせは県精神保健福祉士会(田中病院内)の電話(0279・54・2106)。

毎日新聞          2018年6月13日 

職場定着率向上へ 神奈川労働局

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障害者サポーター養成講座

 神奈川労働局は「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を、横浜市中区のハローワーク横浜で6日に開催した。職場になじまずに離職する障害者が多いことが課題とされており、正しい接し方や配慮すべきポイントなどを約2時間にわたって解説。会場は企業の担当者ら約100人で満員となった。

  統合失調症やうつ病など精神障害のある人の離職率は高く、同労働局によると、1年後の職場定着率は49・3%。半数以上が1年以内に離職し、理由の約23%が「体調不良」という。同労働局は同僚が知識を持つことで定着率向上につながると分析する。

 今回の講座では、ハローワークの担当者が「何度も同じ質問をする」「集中力が続かない」といった相談事例に応じた課題を挙げ、マニュアル作成、こまめな休憩などの具体策を示した。また、出勤時や社内イベントなどケース別の接し方も解説。「内心は真面目で会社に貢献したいという思いが強いが、一方で不安を抱える人も多い。興味を持って関わっていただければ」と講座を結んだ。講座修了者にはサポーターであることを示すストラップや名刺用シールが配布された。

 国は事業主に法定雇用率以上の障害者雇用を義務付けている。昨年の県内の達成企業割合は47・8%で前年と比べ1・1ポイント増加。実質雇用率は1・92%で法定雇用率2・0%を下回った。今年4月からは精神障害者が対象に加わり、法定雇用率も2・2%に引き上げられた。

毎日新聞        2018年6月13日 

2年 来月8日に講演 前橋で障害者協代表

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相模原の障害者施設殺傷

 2016年に相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件から約2年となる7月8日、前橋市新前橋町の県社会福祉総合センターで、日本障害者協議会(東京都新宿区)の藤井克徳代表が講演する。テーマは「障害者をしめ出す社会は弱くもろい-やまゆり園事件から何を学ぶ、障害者権利条約を群馬県の隅々に」。事件の背景を振り返り、障害の有無にかかわらず一人一人の命や尊厳が守られる社会の大切さを考える。参加無料。

  講演会は、病気や障害、経済的問題などで日常生活に不便がある人たちの相談・支援に取り組む、精神保健福祉士▽社会福祉士▽医療ソーシャルワーカーの県内3団体が主催する「ソーシャルワーカーデー2018インぐんま」の一環。講演後はフロアディスカッションの時間を設ける。

 午後1~5時。申し込みはファクス(0279・54・0247)。問い合わせは県精神保健福祉士会(田中病院内)の電話(0279・54・2106)。

毎日新聞       2018年6月13日

学校や警察 理不尽な扱いも 障害者相談増す 認知度

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17年度全体件数118件 医療、福祉…内容多岐に

 県障害福祉課の相談室に寄せられた2017年度の相談件数が、118件になった。そのうち障害者への差別に関する相談は25件あり、中には学校や警察による障害を理由とした不利益な対応もあった。

 全体の相談件数は、相談室を開設した一六年度より四十一件の減少。差別に関する相談件数も減ったが、内容は医療や教育、福祉サービスなど前年度より多岐にわたった。

 県障害福祉課によると、ただ散歩をしていただけの知的障害者に対し、警察官が変なことをしていると疑って声掛けした事案や、学校で知的障害者が授業中に発言の機会を与えられなかった事案が含まれていた。医療機関では、軽度な知的障害であったにもかかわらず、受診に家族の同伴を求められたケースもあった。

 差別に関する相談以外の九十三件は、友人らとのトラブルなど生活上の悩みについてだった。

 同課の担当者は「窓口の認知度が高まり、いろいろな相談を受けるようになったが、今後も継続的に周知していく必要がある」と話している。

 相談室では現在、専門の「広域専門相談員」二人が対応している。各地域にはより身近な窓口として、市町村が推薦した民生・児童委員らが「地域相談員」となって活動している。一七年度末には七百四人いて、本年度中には千三百人程度に増やす方針。

 また、相談室への報告はなかったが、県視覚障害者協会の調べでは、一六年四月~一七年十二月、県内の飲食店や医療機関、交通機関などで視覚障害者が盲導犬の同伴を拒否された事例もあった。

2018年6月13日         中日新聞

人手不足の企業と障害者支援施設 就労へ相互理解深める 日向で初開催

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 人手不足に悩む中小企業側と、障害者が活躍できる職場を探す支援施設側とのマッチングイベントが12日、日向市の中央公民館で開かれた。引き合わされた双方の参加者は「互いを知ることができる絶好の機会」と歓迎し、それぞれのニーズに合った雇用拡大を目指して活発に意見交換した。

 主催の日向地区中小企業支援機構が半年がかりで調整し、初開催にこぎ着けた。企業側10社、就労支援側10事業所が参加した。

 養鶏業の「日本ホワイトファーム」(同市)は、ビデオ映像で業務を説明。黒木英司総務課長(55)は「単純だが集中力が必要な仕事は、障害者の方に向いている。お互いを知り合える良い機会になれば」と期待を込めた。

 一方、障害福祉サービス事業所として参加した「悠々工房」(門川町)の就労支援員、原田尉史(じょうじ)さん(29)は「同じ商品をまとめるなど事業所利用者にもできる仕事があった。職場体験や実習を経て就労へつなげたい」。

 同じく事業所側でポップコーン店などを展開する「福丸縁」(日向市)の福丸順子施設長(58)は「一般企業への就労を目指す通所者もいる。いろいろな企業を利用者に紹介でき、ありがたい」と語った。今後、担当者同士が互いの作業風景を見学するなどして交流を深め、就労につなげていくという。

毎日新聞   2018年6月13日

障害者のIT技術者養成 別府市の三菱商事太陽

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 別府市の三菱商事太陽とソフト会社「NTTデータイントラマート」(本社・東京都)は、障害者のIT技術者を養成する取り組みを共同で始めた。イントラマート社は障害者を対象にしたプログラミング技術習得講座の教材を提供。三菱商事太陽は講座の受講料を全額負担し、修了者を選考して雇用する。障害者の技能向上を支援し、就労機会の確保につなげる。

 両社はWebアプリケーションの構築や運用ができるソフトウエア「イントラマート」を習得する技術者養成講座の受講者の募集を1日から始めた。応募条件は▽障害者手帳を持っている▽自宅にパソコンがあり、インターネット接続環境がある▽三菱商事太陽に就職(在宅就労を含む)を希望し、週20時間以上働ける―ことなど。定員は20人で、応募多数の場合は選考する。県内外は問わない。研修期間は8月1日から2019年3月末までのうちの任意の2カ月間で、インターネットを使って自宅で履修できる。
 修了認定を受けた人の中から、実務研修などの選考を経て三菱商事太陽が在宅就労型のシステムエンジニアとして雇用契約を結ぶ。採用人数は決まっていない。応募や選考状況などを見て判断する。
 同社は従業員114人のうち約6割の70人が障害のある人で、その多くがITを活用して情報処理システムの開発やホームページ作成などの業務を担っている。在宅就労者も5人雇っており、これまでの実績とノウハウを活用するという。雇用契約に至らない場合も想定されるが、全国的にIT技術者の不足に悩む企業が増えているといい、障害者の就労支援にもつながるとみている。
 同社の福元邦雄社長は「やる気があっても通勤が困難で働くことを諦めていた障害者に仕事を提供できれば。来年度以降も継続していきたい」と話している。

NTTデータイントラマートと共同で、障害者のIT技術者を養成する取り組みを始めた三菱商事太陽=別府市

NTTデータイントラマートと共同で、障害者のIT技術者を養成する取り組みを始めた三菱商事太陽

※この記事は、6月13日大分合同新聞朝刊13ページに掲載されています。


職場定着率向上へ 神奈川労働局

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障害者サポーター養成講座

 神奈川労働局は「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を、横浜市中区のハローワーク横浜で6日に開催した。職場になじまずに離職する障害者が多いことが課題とされており、正しい接し方や配慮すべきポイントなどを約2時間にわたって解説。会場は企業の担当者ら約100人で満員となった。

  統合失調症やうつ病など精神障害のある人の離職率は高く、同労働局によると、1年後の職場定着率は49・3%。半数以上が1年以内に離職し、理由の約23%が「体調不良」という。同労働局は同僚が知識を持つことで定着率向上につながると分析する。

 今回の講座では、ハローワークの担当者が「何度も同じ質問をする」「集中力が続かない」といった相談事例に応じた課題を挙げ、マニュアル作成、こまめな休憩などの具体策を示した。また、出勤時や社内イベントなどケース別の接し方も解説。「内心は真面目で会社に貢献したいという思いが強いが、一方で不安を抱える人も多い。興味を持って関わっていただければ」と講座を結んだ。講座修了者にはサポーターであることを示すストラップや名刺用シールが配布された。

 国は事業主に法定雇用率以上の障害者雇用を義務付けている。昨年の県内の達成企業割合は47・8%で前年と比べ1・1ポイント増加。実質雇用率は1・92%で法定雇用率2・0%を下回った。今年4月からは精神障害者が対象に加わり、法定雇用率も2・2%に引き上げられた。

毎日新聞   2018年6月13日

知的障害者 7割の会社(上)

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 社員の七割超が知的障害者という会社がある。板書の際に粉が飛びにくいチョークを製造販売する日本理化学工業(川崎市)。五十八年前から知的障害者の雇用を続ける一方で、学校で使うチョーク市場の国内シェア50%以上を誇る。「福祉」としてではなく「主戦力」として障害者たちが働く現場を訪ねた。

 トレーには、三本ずつ束にした長さ数十センチの青いチョークが並ぶ。成型したてのチョークはまだ軟らかい。知的障害がある男性が先が少し広がったフォークを刺して、トレーの端からはみ出したチョークを取り除く。五束ずつ載ったトレーが次々に運ばれてくるが、男性は手際よくチョークの長さをきっちりそろえる。

 ここは、同社の中核を担う川崎工場。粉末の飛散が少ない「ダストレスチョーク」を一日十三万本製造し出荷する。製造には成型、切断、乾燥、箱詰めなど、主に六工程があるが、いずれのラインも受け持っているのは障害がある社員たちだ。二十人ほどがラインを担う。

 同社は一九六〇年から、継続して障害者を雇用している。四月末現在、川崎工場を含む本社と北海道の美唄(びばい)工場で計八十六人いる社員のうち、七割超に当たる六十四人の社員に知的障害がある。このうち二十六人は重度。障害者が働く事業所には、厳しい経営となっているところが少なくないが、同社は学校用のチョークで国内シェアの50%以上を誇るトップメーカーだ。

 文字や数字が読めない人もおり、初めは色や写真などを頼りに手順を覚える。全工程の最初となるのが、炭酸カルシウムやホタテの貝殻の粉などの原料を混ぜ合わせる作業。計量は原料の入ったバケツと、必要な量と同じ重さにした分銅を使う。バケツと分銅の色をそろえ「青いバケツから原料を取り出し、同じ青色の重りをつり下げて、釣り合えばOK」という具合だ。この手順は、信号に従って障害者の社員が通行するのをヒントに、作業に色分けを取り入れるとやりやすいのではと、発案された。入社以来十五年間、材料を混ぜる工程を担当する竹内章浩さん(33)は「自分の作ったものが製品になると、とてもうれしい」と笑顔を見せた。

 時計が読めず、必要な時間、混ぜ合わせたのかが分からない社員は、砂時計を使って作業する。ゆがみや欠損など不良品を見つけるのも、ラインに入る人の役割だ。壁には完成品と不良品を並べた見本の写真が張ってあり、チョークを一本一本照らし合わせる。不良品は「×」のケース、判断が付かない場合は「△」のケースに入れ、健常者の社員が再検品する。

 何十年も同じ工程を担当している熟練の社員も多い。慣れてくると、写真や特別な機器がなくても作業できるようになる。障害がある人が業務改善を提案することもある。トレーからはみ出したチョークを取り除くフォークは、障害がある社員の発案で、より作業しやすくなるように先を広げた。

 営業部広報担当で障害のある社員たちの支援役となっている佐藤亜紀子さん(43)は、黙々と働くベテランたちを頼もしそうに見つめる。「障害で言葉を話せなくても、積み上げてきた技術と仕事に対する姿勢で、後輩たちを引っ張ってくれています」

余分なチョークをフォークで突き刺して取り除く社員

2018年6月13日    中日新聞

障害者差別解消法 私立高に見るあるべき対応とは

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 障害者差別解消法が施行され2年が過ぎた。ただ法の定めは、障害がある人への“配慮”は公的機関が「義務」なのに対し、民間は「努力義務」。では、私立高校は障害がある子どもにどのように、そしてどこまで配慮すべきか――。そんな事例が佐賀県内でも起こった。

保護者「差別と感じた」

 県内に住む重度難聴の生徒が公立中学校3年だった昨秋のこと。受験校の一つとして、県内の私立高の入試説明会を聞いた。英語関連のコースを考えていた。

 この私立高側によると、同校の担当者がその後、生徒の中学校に出向き、生活学習状況を確認した。このとき、「大半の授業で先生1人が横について筆談で支援している」などの説明を受けた、としている。そこで私立高の担当者は生徒宅を訪問し、保護者に「同じように対応する力がない」と説明、謝罪したという。

 保護者は「生活状況を理解するために来ると考えていた。求めていないのに、一方的に『対応できない』と言われた。受験拒否と同じ。差別と感じた」。他の私立高は受験できて、入学を阻まれるようなことはなかったという。生徒は今春から県内の公立高校に通っている。

 私立高側は朝日新聞の取材に対し「恥ずかしいことだが、中学校と同じように対応する力がない。率直に申し訳ない」と釈明。「以前は生徒が1200人いたが、今は400人を切っている」などと財政上の問題も挙げ、「いち私学の力量の限界」と説明している。今後も同じような難聴者が入学を希望しても、対応は変わらないという。

公的機関は義務 民間は努力義務

 県などによると、2016年4月施行の障害者差別解消法は、障害を理由に差別することを禁じている。また障害者の要望があったとき、負担が重すぎない範囲で配慮するよう求めている。

 ただ、この配慮は公的機関は義務なのに対し、私立高など民間は努力義務という。

 文部科学省の通知では、学校法人は、受けた要望が「過度の負担になる」と判断した場合、分かりやすく説明し、実現可能な代替案を示すなど対話をして、共通理解を図ることを求めている。

 県私立中高・専修学校支援室は、私立高から報告を受けたが、「法に違反しているか判断する立場にない」として、保護者から話は聞いていない。担当者は「できるだけ相互理解を図ることができればよかったと考えている。施設や設備、外部人材活用の経費の補助金もあり、説明していきたい。法の趣旨も伝えていきたい」と話している。

写真・図版

佐賀県は障害者差別解消法について解説したハンドブックを出している。表紙で「障害のある人もない人もみんなが暮らしやすいまちに」と訴え、中身の事例で「学校の受験や入学を拒否する」を「×」としている

2018年6月13日    朝日新聞社

視覚障害者の外出どう支える 北上市社協が研修会

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 北上市社会福祉協議会(斎藤伸会長)は13日まで3日間、同市常盤台の市総合福祉センターで視覚障害者の外出などを支える同行援護従事者の一般課程養成研修会を開き、県内の介護福祉士ら17人が支援技術や心構えを学んだ。

 参加者は同社協のガイドヘルパーを講師に買い物や食事の支援、代読や代筆などを障害者、援護者両方の立場で体験した。バスの乗降ではアイマスクをしたペアの手を取り「段差を確認してください」「背もたれです」と声を掛けて導いた。

 講師を務めた小原節子さん(64)は「利用者の安全と快適さが第一。何がどう危ないかなど具体的な言葉で声を掛けることが大事」と助言した。18、19日は応用課程を行う。

視覚障害者役と同行者役でバスの乗降を体験する参加者

視覚障害者役と同行者役でバスの乗降を体験する参加者

2018.06.13   岩手日報

障害者スポーツに天皇杯

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 5月19日、福岡県飯塚市で行われた飯塚国際車いすテニスで、男女シングルスの優勝者にそれぞれ天皇杯と皇后杯が贈られた。障害者スポーツの大会では初めてのことだ。

 スポーツの世界でおなじみの天皇杯、皇后杯はこれまで健常者の大会だけに贈られてきた。天皇杯は20大会、皇后杯は12大会。最も古いのは野球の東京六大学で、1946年11月に天皇杯が贈られた。これを含め天皇杯は昭和の時代に18大会へ授与され、平成は陸上と空手の2大会。皇后杯は昭和には5大会のみだったが、女子スポーツの隆盛にあわせるように、全日本女子サッカーなど7大会が平成に入って皇后杯を贈られた。

 宮内庁は3月、飯塚国際を含む4つの障害者スポーツ大会に天皇杯、皇后杯を下賜すると発表した。天皇、皇后両陛下は皇太子ご夫妻時代から全国身体障害者スポーツ大会にほぼ毎年、20回以上出席なさるなど障害者スポーツを応援されてきた。リハビリを超えた競技性の高いスポーツとして発展してきた現状も踏まえ、天皇陛下の来年の退位を前に宮内庁が日本障がい者スポーツ協会(日障協)と協議して決めた。

 車いすテニスに加え、車いすバスケットボールの男女と車いす駅伝の大会が対象となった。ただ男子、女子という分け方になじまないものがあるのが障害者スポーツ。車いすテニスには障害が重い選手が男女混合で戦うクアードという種目があるが、今回、飯塚国際ではクアードの優勝者には何も授与されなかった。日障協は複数の天皇杯を打診したが、宮内庁から色よい返事はなかったという。障害者スポーツの魅力の一つはこうした多様性だ。今後の検討課題だろう。

2018/6/14        日本経済新聞

福祉と観光つなぐモデルに

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福祉と観光つなぐモデルに

 オープンしたのはカフェレストラン「玖珠・森のクレヨン」と多目的交流スペース「森の米蔵」の2棟(計約330平方メートル)。JR久大線を挟み、同公園北側の米穀倉庫があった町有地(約1060平方メートル)を町が貸与。社会福祉法人・暁雲福祉会(大分市、丹羽一誠理事長)が、日本財団(東京、尾形武寿理事長)の支援を受け建設、運営する。総事業費約1億3千万円。

 障害者14人が雇用契約を結び働くか、就労に向けた訓練を受ける。障害者が雇用契約を結び働く施設は同町で初めて。

 「森のクレヨン」では玖珠産の米などを使った食事やパン、スイーツ類を提供し、玖珠の“食の魅力”を発信。土蔵づくりの倉庫を改築した「森の米蔵」ではコンサートや各種展示会が開催できる。久大線の近くで特急「ゆふいんの森」などの通過を見られるウッドデッキも設け、観光客の滞在時間が短いことが課題だった同公園の魅力アップにつながると期待されている。

 10日に関係者らが出席し開所式を開催。宿利政和・玖珠町長は「障害者の社会参加を通して地域活性化を図り、福祉と観光をつなぐモデル事業となるよう応援したい」とあいさつ。カフェスタッフのリーダー阿南泉さん(29)は「お客さんにたくさん来てほしい。頑張ります」と笑顔で話した。

 

障害者向け歯科、知って

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 障害児・者向けの歯科診療を担う「県口腔(こうくう)保健センター」の利用が低調だ。長年の要望を受け、県内2カ所目の専門医療機関として県歯科医師会が今年3月末、大分市の県歯科医師会館内に開設。2カ月がたち、1日の平均患者数が3・1人(5月末時点)にとどまっている。周知不足が一因とみられ、センターは広報活動に力を入れる方針。
 県からの3千万円の補助金を活用して新設。歯科医師1人、歯科衛生士3人の体制で診察に当たる。
 センターによると、今月7日までの新規患者は、発達障害や知的障害などがある計43人。4月は延べ48人が受診、5月は延べ76人と増えたものの、来院者が0人だった日もあった。1日最大、14人の患者を受け入れることができる。
 障害者施設の関係者からは「知らない人が多いのではないか」と指摘する声も出ている。このため、センターは4月にリーフレットを作製。5月から県庁などの公共施設に設置したり、障害者団体の総会などで配布している。
 「事前に周知できればよかったが、開設に目が向いていた」と県歯科医師会。会員の歯科医師を通して広報していくほか、見学者の受け入れを予定している。
 診察時間は月~金曜日の午前9時~午後5時で予約制。問い合わせは、同センター(TEL097・547・8833)。

※この記事は、6月14日大分合同新聞夕刊11ページに掲載されています。


障害者の理解を名古屋市に要望 天守バリアフリーで文化庁

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 二〇二二年末の完成を目指す名古屋城の木造天守復元を巡り、河村たかし市長は十三日、事業の許可権を持つ文化庁を訪れ、障害者団体が強く反発しているバリアフリー対策や、当初計画より遅れが指摘されている石垣調査について意見を交わした。

 意見交換は非公開で行われた。市長は山崎秀保・文化財部長や大西啓介・記念物課長らに、新天守にはエレベーターを設置せず、新技術で昇降できるようにするという市の方針を説明。文化庁側は障害者の理解を得るよう求めた。

 石垣調査については、同庁側が作業を着々と進め、復元の際には石垣などの史跡を傷めないことを要望。一九五九年に再建された現天守の価値を評価するようにも求めた。

 市長は面会後、報道陣に「木造復元は世界の宝を作ることで、完成に向けてしっかりやる。いろんな課題に誠実に対応する」と話し、この日の訪問を「どえりゃあ良かったんじゃないですか」と振り返った。

 国の特別史跡に指定されている名古屋城跡では、現天守の取り壊しや築城の際に文化庁の許可が必要。市は来月中にも、築城に向けた基本計画を同庁に提出する方針を示している。

2018年6月14日       中日新聞

障害者が製作、菓子など販売 久喜であすから

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 「第24回ホットハートフェスティバル」が15~17日、久喜市菖蒲町菖蒲の複合商業施設「モラージュ菖蒲」で開かれる。知的障害や発達障害のある人を支援するNPO法人「あかり」(同市)が主催。同市周辺など県内の約20の障害者施設の利用者が、施設で作った菓子や小物などの製品を展示・即売する。 

 3日間とも午後1、3、5時からの3回、南米の民俗音楽フォルクローレや津軽三味線などのコンサートもある。「あかり」が今年2月に開設した、特別支援学校高等部を卒業した18~19歳が学ぶ「あかり学園」の1、2年生15人も、午前11時から「風になりたい」の合唱や「涙そうそう」の合奏などを披露する。

 フェスティバルは午前10時~午後7時。問い合わせは「あかり」(0480・24・2060)。

毎日新聞          2018年6月14日

6S委員

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 「6S委員」。粉が飛び散りにくく、人体や環境への負荷が少ないチョークを製造する日本理化学工業(川崎市)の工場には、製造現場で働く社員から模範となるリーダーを任命する制度がある。6Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、セーフティー(安全)、しつけ(整理や整頓などの習慣付け)だ。

 安全を除く五つを「5S」として掲げる工場が多いが、同社ではけが防止を重視して安全を加えた。発案したのは、原料を混ぜる工程を十五年間、担ってきた竹内章浩さん(33)。知的障害があるが、会議で案を説明し賛同を得た。

 同社は四月末現在、全社員八十六人のうちの七割超に知的障害がある。チョークの国内トップシェアを誇るが、製造ラインを担うのは全員が障害のある社員。5Sなどの目標は、健常者だけの工場では単なる努力目標になりがちだが、同社の工場ではチョークの品質を保ち、障害者を含む社員の成長を促すため6Sの順守を心がける。この制度もその表れだ。

 仕事を通し、成長が見られる人が委員に任命される。6S活動ができるか、できないかではなく、委員になることでより成長が見込まれる人を積極的に選ぶ。委員になると役職手当が付く一方、会議や勉強会への参加などが義務づけられるため、本人に意欲を確認してから任命している。年に一度、見直しもある。

 現在、川崎工場の委員は十九人。この中から副班長二人、班長三人、リーダー一人が選ばれる。委員たちは、ラインに入ったばかりの社員が分からないことがあれば教え、解決できないことは健常者の社員に相談する。班長やリーダーはより広く周囲を見て声を掛ける。この仕組みによって、障害のある社員にも責任感や向上心が生まれている。

 同社が知的障害者の採用を始めたのは一九六〇年。近隣の特別支援学校の教員から「働く経験をさせたい」と頼み込まれ、現会長の大山泰弘さん(85)が社長のときに始めた。以後、地域の学校から毎年数人を採用している。

 希望者は入社前に二週間の実習を計三回受ける。折り紙を折ったり、はさみを使ったりする作業から手先の器用さや集中力、作業の好みなどを見て、製造ラインに入るかどうか、どの工程を担当させるかなどを見極める。

 保護者らとも面接し、本人に働きたい気持ちがあるかどうかも確認する。本人とは、毎日元気に出勤する(一人で通勤し、健康管理ができる)▽自分のことは自分でする▽あいさつと意思表示をきちんとする-などを約束する。年度初めには、一年の目標を一人三つ書き、食堂の壁に張り出す。毎日「目標ノート」に自己評価を書き込む。目標達成者は表彰する。

 二〇〇八年に社長に就任した泰弘さんの長男、隆久さん(49)は、社長になった当初は、少子化や授業の情報技術(IT)化などの影響で先細る業界を不安に思い、健常者の社員を増やした方がいいのではとも思ったという。だが、一緒に働くうちに、知的障害者には集中力を持続できたり、手先が極めて器用だったりと、高い能力を持つ人が少なくないと実感した。

 「障害の有無に関係なく、働く喜びを感じながら、定年まで働き続けてもらいたい」と話す。

 

 

『平成29年度(2017年度)「障害者差別解消法」施行に伴う障害のある学生に 関する紛争の防止・解決等事例集』

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調査結果の概要及び事例の公表について

『平成29年度(2017年度)「障害者差別解消法」施行に伴う障害のある学生に関する紛争の防止・解決等事例集』
調査結果の概要及び事例の公表について

独立行政法人日本学生支援機構では、平成28年4月施行の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)に伴い、障害学生からの支援の申し出についてどのような体制や対応プロセスで支援内容が決定されるのか等について、昨年度に引き続き、全国の高等教育機関及び国・地方公共団体の相談機関等を対象調査を実施しました。紛争の防止や解決に関する具体例を収集・分析・公表・普及することにより大学等における障害学生支援の取組を促進するため、収集した事例をとりまとめましたので、公表いたします。

詳しくは、機構ホームページ「障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集」のページをご参照ください。

障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集

※障害学生……身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳及び療育手帳を有している学生又は健康診断等において障害があることが明らかになった学生。

調査概要及び回収状況

(1)目的:高等教育機関における障害学生支援の充実のため、紛争の防止や解決等に関する具体例の収集・分析を行ない、公表・普及を通じ障害学生支援の取組を促進する。
(2)対象:高等教育機関(大学、短期大学、高等専門学校)1,173校、国及び地方公共団体の相談機関等69機関
(3)調査方法:悉皆調査及び事例提供の依頼
日本学生支援機構のウェブサイトより調査票をダウンロード。回答を記入後、メール添付にて提出。
(4)調査時期:平成29年7月1日から8月10日(調査対象:平成28年度発生事例)
(5)回収状況:高等教育機関739校(回収率63.0%)、相談機関19機関(回収率27.5%)基本情報の回答を含む。
(6)事例回答件数:483件(高等教育機関477件、相談機関6件)
(7)公表事例:65件

 

スマホカメラで見る世界 進む自立支援、視覚障害者向けアプリのいま

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 「自分がもし失明したら……」と想像したことはあるだろうか。普段は意識すらせず、当たり前だと思っている目が見えるという能力が失われたら。一体、どんな助けがあれば生活できるのだろうか。

 実は昨今、テクノロジーの発達と共に昔では考えられないほど視覚障害者を助ける環境が構築されつつある。自立した生活を実現したい彼らの力になるアプリの1つが、オランダ・デルフトで開発された「Envision」だ。

スマホカメラでのぞいた世界を読み上げる

 Envision はAI(人工知能)を搭載したアプリ。ユーザーはスマートフォンのカメラで見たいモノや光景があるであろう方向を撮影して使う。

 主な機能は、文字の読み上げ、周囲の状況説明、色の識別、家族・友人などの顔認識、所持品などモノの認識、そして他のアプリ内に表示された画像の説明。読み取ったバーコードから商品を説明する追加機能も現在開発中だ。

 文字の読み上げ機能では、道路標識や食品のパッケージといった短い文章だけでなく、手紙などの長い文章や手書きの文字(現時点ではβ版)にも対応する。また、全盲ではないが視力が極端に低い視覚障害者向けには、文字を1文字ずつ拡大して表示する機能もある。

 状況説明機能では、ユーザーの周りに何があるか、目の前で何が起こっているかを説明してくれる。重要なのはユーザーが求めている情報を説明できること。ユーザーが電車に乗っていたとして、「電車に乗っている」という事実はもはや説明不要。Envisionはそういった判断を瞬時に行い、本当に必要な情報を提供する。

 なお、状況説明機能は周りの状況だけではなく他のアプリ内の画像にも対応する。内容を知りたい画像がある位置をタップし、「シェア」からEnvisionを選択すれば、画像がどんなものかを説明してくれる。

 Envisionの各機能は必要に応じて同時に使用可能。例えば友人が目の前のテーブルに座っていたとして、「メアリーがノートPCを机に置いて座りながら、カメラに向かって微笑んでいます」と状況を説明しながら、顔認識機能で座っているのが誰かを判断してくれる。

 Envisionは最初の14日間はトライアル期間として無料だが、その後サブスクリプションに切り替える必要がある。毎月払いは4.99ドル(約550円)、6カ月前払いは24.99ドル(約2750円)、1年前払いは39.99ドル(約4400円)、サブスクリプションではなく生涯使用できるプランも199.99ドル(約2万2000円)で用意している。

 対応言語は欧州各国の言語に加え、ヘブライ語やアラビア語など既にに63言語。同サービスの開発者およびデザイナーが、学生の半数が留学生というオランダ・デルフト工科大学出身ということもあり、当初からグローバル展開を視野に入れ開発されているようだ。リリースは2018年2月。4月末の時点でユーザー数は約100人だという。

貧困層の障害者を救う寄付機能も

 Envisionの開発元であるスタートアップは、インド出身でデルフト工科大学卒業生であるプロダクトデザイナーのカールティク・マハーデーヴァン(Karthik Mahadevan)さんとエンジニアのカールティク・カナン(Karthik Kannan)さんが、2017年に創業した。

 当時まだ大学在学中だった彼は、卒業プロジェクトとしてEnvisionの開発に着手。共同創業者のカナンさんとともに、AIとGoogle翻訳を搭載したプラットフォームを完成させた。そして卒業間近の17年2月に創業、翌年2月にアプリのリリースにこぎつけた。

 母国インドから発想を得たEnvisionのサービスには、マハーデーヴァンさんの母国への強い思いも込められている。それはインドの地方のように、スマホを持ってはいるが、サブスクリプション料金を継続して支払えない貧困層の視覚障害者に向けた「寄付」機能だ。

 Envisionのサイトでは、貧困層の視覚障害者への援助として、同サービスのサブスクリプションをスポンサーする制度が紹介されている。1カ月、6カ月、1年のサブスクリプションプランから選び、数とメールアドレスを入力、クレジットカードやデビットカードで支払いをすれば完了する。

 この寄付機能では、寄付した相手や彼らがEnvisionを使ってどう変わったか、寄付後の情報が提供されるという。

マイクロソフトも参入、注目の分野になるか

 このところ、Envisionのような視覚障害者向けサービスの開発が目立っている。

 米Microsoftが3月にリリースした類似サービス「Soundscape」では、街を歩いているときにアプリを起動すると、あらかじめ店舗などに設置されたビーコンから店舗情報をキャッチし、「右手にスーパーマーケットがあります」「バス停は◯メートル先です」などとイヤフォンを通じて知らせてくれる。ちょうど、健常者が周りを見渡しながら歩いているように、視覚障害者は音声で情報を得られることになる。

 また、すでに多くの視覚障害者が利用している、カメラで撮影した文章を読み上げてくれるアプリ「KNFB Reader」や、現時点ではまだテスト段階でリリースに至っていないが、Envisionと同じくオランダ発のスマホカメラで写したものを説明してくれるアプリ「Eyesense」など、視覚障害者の生活を助けるサービスは徐々に増えてきている。

 背景には、スマホの普及、AIとカメラ技術による画像認識技術の目覚ましい発達があるだろう。また、人種や宗教、LGBTなどダイバーシティーへの理解が高まってきたことから、障害者やマイノリティーの権利、個々の自由などがより一層注目されてきたことも考えられる。

 Envisionを開発者をはじめ、アントレプレナーたちの活躍、そして「障害者×スマホアプリ」分野の今後の盛り上がりに期待したい。

“日本が知らない”海外のIT

2018年06月15日         ITmedia

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