災害時に自力避難が困難な高齢者や障害者らをどう支援するのか。国は各市町村で支援策を整備するようガイドラインを示しているが、市町村ごとに管理する要援護者名簿が定期的に更新されている割合は6割強。プライバシーの問題から活用も難しいなど、東日本大震災から1年7カ月が経過した今も、課題は山積したままだ。
国が公表しているガイドラインは、各市町村に避難支援や安否確認のための要援護者名簿を作成し、個人の具体的な避難方法などを示すよう求めている。しかし、消防庁が国内の全1742市区町村について、4月時点の名簿の状況を調べたところ、整備した上で定期的に更新しているのは全体の約64%にとどまっていることが分かった。
そもそも、個人情報を扱うことから住民の同意を前提に名簿に登録する市区町村が8割を占めるため、自治体によって登録率もまちまちで、全体の把握が困難という実態も浮き彫りになった。9割の自治体は平常時から民生委員に名簿を提供しているものの、消防団には6割が災害時にのみ渡すと回答していたことも判明した。
岩手県では障害者のための災害マニュアルを策定中で、盛岡市で先月開かれた意見交換会でも、障害者団体側から「行政が名簿を開示・提供してくれないと、関係者も手の差し伸べようがない」との声が多く上がった。同県のマニュアル策定委員を務める大西一嘉神戸大大学院准教授(59)は「障害があることを知られたくないと名簿への登録を拒む人も多いが、防災意識が高い今のうちに、行政側が積極的に説得すべきだ」と指摘する。
ただ、市町村側の反応はおしなべて芳しくない。宮城県のある自治体の担当者は「他の業務を抱えながらになるので、なかなか手が回らない」と戸惑いを見せる。福島県伊達市は「名簿を取りまとめたところで頻繁に更新するのは難しい」と運用面での課題を提示。岩手県釜石市は「名簿の開示方法についていろいろな意見があり、ある程度国が開示基準を決めた方がいいのでは」と話している。
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障害者向け災害マニュアル策定のため、盛岡市で開かれた意見交換会。壇上は大西一嘉神戸大大学院准教授=9月25日、同市
時事通信-(2012/10/13-15:00)
国が公表しているガイドラインは、各市町村に避難支援や安否確認のための要援護者名簿を作成し、個人の具体的な避難方法などを示すよう求めている。しかし、消防庁が国内の全1742市区町村について、4月時点の名簿の状況を調べたところ、整備した上で定期的に更新しているのは全体の約64%にとどまっていることが分かった。
そもそも、個人情報を扱うことから住民の同意を前提に名簿に登録する市区町村が8割を占めるため、自治体によって登録率もまちまちで、全体の把握が困難という実態も浮き彫りになった。9割の自治体は平常時から民生委員に名簿を提供しているものの、消防団には6割が災害時にのみ渡すと回答していたことも判明した。
岩手県では障害者のための災害マニュアルを策定中で、盛岡市で先月開かれた意見交換会でも、障害者団体側から「行政が名簿を開示・提供してくれないと、関係者も手の差し伸べようがない」との声が多く上がった。同県のマニュアル策定委員を務める大西一嘉神戸大大学院准教授(59)は「障害があることを知られたくないと名簿への登録を拒む人も多いが、防災意識が高い今のうちに、行政側が積極的に説得すべきだ」と指摘する。
ただ、市町村側の反応はおしなべて芳しくない。宮城県のある自治体の担当者は「他の業務を抱えながらになるので、なかなか手が回らない」と戸惑いを見せる。福島県伊達市は「名簿を取りまとめたところで頻繁に更新するのは難しい」と運用面での課題を提示。岩手県釜石市は「名簿の開示方法についていろいろな意見があり、ある程度国が開示基準を決めた方がいいのでは」と話している。

障害者向け災害マニュアル策定のため、盛岡市で開かれた意見交換会。壇上は大西一嘉神戸大大学院准教授=9月25日、同市
時事通信-(2012/10/13-15:00)