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[精神障害者雇用] 義務化で差別の解消を

 事業主などに一定の障害者雇用を義務付ける障害者雇用促進法の対象に、従来の身体障害者と知的障害者だけでなく、新たに精神障害者も加えることになった。政府は国会に同法改正案を提出しており、今会期中の成立を目指す。

 日本では、精神障害者への偏見や差別はまだ根強く、雇用拡大の足かせとなってきた。雇用の義務化が差別解消に向けた重要な一歩になるのは間違いない。

 障害者雇用促進制度は1976年に始まった。政令が定める障害者の法定雇用率は今年4月1日に15年ぶりに改定され、民間企業で2.0%に、国と地方公共団体で2.3%にそれぞれ0.2ポイント引き上げられた。雇用の枠が広がったことは評価していいだろう。

 当初は身体障害者だけが対象だったが、98年からは知的障害者も対象に加わった。精神障害者は最も遅れ、2006年から雇用率に算定できるようになり、雇用の扉が少しずつ開かれてきた。

 気がかりなのは、雇用された精神障害者数の伸びである。12年度の障害者雇用総数38万人のうち精神障害者は2万人足らずで、一部の雇用にとどまっている。

 身体と知的、精神の3障害のうち、精神障害で雇用義務化が遅れたのは「勤務をすぐやめる」などの懸念が強く、雇用する側にためらいがあるからだ。しかし、身体障害も知的障害も偏見を乗り越えて、事業者が受け入れてきた。精神障害者が取り残される状況に早く終止符を打たねばならない。

 精神障害の場合、能力はあるが「気分が不安定」「環境に慣れるのが苦手」などといった困難が伴う。短時間労働を導入するなど工夫して、適切に配慮すれば元気に働けるはずである。精神障害者を受け入れる環境づくりには課題が多く、社会全体で受け入れる機運を高める必要がある。

 医療側の姿勢も問われる。精神障害者の社会進出を促し、希望すれば働けるように治療に努めるべきだ。統合失調症やうつ病などで休職した人の復職を支援する精神科のリワークプログラムが広がりつつある。偏見の解消と働くことは治療の手助けにもなるはずだ。

 精神障害者の雇用義務化の時期は18年4月で、5年もの猶予期間を設けた。この長い準備期間に事業者は精神障害者の雇用を進め、義務化に備えてもらいたい。政府も精神障害者が社会進出しやすい条件づくりが欠かせない。

 法改正案には障害を理由とする差別の禁止規定も盛り込まれた。当事者や事業主を含めて社会が精神障害の問題に向き合い、雇用に前向きに取り組むときである。

南日本新聞-( 5/5 付 )

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