Quantcast
Channel: ゴエモンのつぶやき
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

成年被後見人に選挙権 より障害者に開かれた社会に

$
0
0
 障害者や認知症の人が人権を保障された上で、普通に暮らせる社会を目指す制度づくりがやっと一歩前進した。
 成年後見人が付くと一律に選挙権をはく奪されるという公職選挙法の規定が、削除されることになった。自民、公明両党と民主党などの野党8党が同法の改正案に合意。議員立法で提出し、今国会中に成立する見通しだ。
 理不尽な法律で、これまで人間の尊厳さえ踏みにじられてきた被後見人にとって、待ちに待った朗報だ。国は過去に被ってきたかれらの痛みを直視した上で、より社会的弱者に開かれた制度づくりに努めねばならない。
 法改正で、被後見人は夏の参院選での投票も可能となろう。権力によって抑え込まれてきた権利を駆使して、国政へ、日本の未来づくりへ、堂々と参加してほしい。
 成年後見制度は知的障害や認知症など、判断能力が不十分な人の財産管理や福祉サービスなどを成年後見人が代行する制度だ。被後見人の自己決定を尊重し、普通に生活できる社会をつくるとの理念で2000年に施行された。
 しかし被後見人になると、選挙権はく奪だけでなく幾多の社会的束縛があるなど、厳格な制度に批判も多かった。
 選挙権に関して国は「第三者の働きかけで不公正、不適正な投票が行われる可能性がある」と主張。選挙の公平性を優先してきた経緯がある。全く、本末転倒である。
 制度の欠陥をまず指摘したのは司法だった。選挙権はく奪規定について先日、知的障害のある女性が国を相手にした訴訟で勝訴。判決は「被後見人全てが投票の能力を欠くわけではない」として訴えを全面的に認めたのだ。
 被後見人の権利を司法が認定し、それを政治が追随した形だ。国には、より社会的弱者の声に耳を傾けるなど見識を磨く努力を促したい。
 というのも、制度が障害者の社会参加を進める根拠になっていないからだ。最高裁によれば昨年末の被後見人は約13万6000人。同時期に始まった介護保険の利用者約500万人に比べ圧倒的に少ない。制度が実情と整合していないことを証明する数字だ。
 被後見人になると会社役員や公務員、医師などの資格職へ就けないなど、欠格事由が厳し過ぎるのが要因だ。司法も「国際的な潮流に反する」とまで指摘している。
 国は、硬直している制度の弾力的運用や欠格事由緩和などを、社会の実態に照らし合わせて再検討すべきだ。障害者の能力を引き出し、可能な限り社会参加できる制度へと進化させねばならない。
 参院選で選挙権を回復した被後見人の一票が、障害者がより暮らしやすい環境づくりにつながればと願う。

愛媛新聞- 社説2013年05月12日(日)

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>