和歌山陶芸クラブ(和歌山市)は26日、和歌山市の和歌山城西の丸広場で、恒例の「やきもの広場 陶器市」と同時に、今年で3回目となる東日本大震災のチャリティーバザーを開催し、売り上げ金全額を、岩手県大船渡市で障害者作業所を運営していた「かたつむり親の会」に寄付する。きっかけは3年前、同クラブのメンバーで、約20年前に自閉症の息子・慎太郎さん(当時20歳)を病気で亡くした和歌山市の吉田敏雄さん(66)のボランティア活動だった。吉田さんは、かつて慎太郎さんと一緒に習い始めた陶芸品の製作に励みながら、息長く支援に取り組む決意だ。
(落合宏美)
2011年3月の東日本大震災発生時、吉田さんは、慎太郎さんの姿が被災地の子たちと重なり、「障害のある子たちはきっと大変に違いない」と現地に向かうことを決意。自家用車内に簡易ベッドを作り、工具を積み込むなどして、約3か月後に出発。福島県や宮城県の被災地で泥だし作業などをしながら障害者の被災情報を集める中で、同7月末に岩手県陸前高田市で「かたつむり親の会」と出会った。
親の会は、知的障害のある子をもつ20家族で結成され、約10年前に作業所「かたつむり」を同県大船渡市に設立。ペットボトルや古紙などの回収に取り組むなど、地域に貢献してきた。しかし、震災で作業所は地区ごと流され、メンバーは被災してばらばらに。吉田さんがたどり着いた時、親の会は同県陸前高田市の高齢者福祉団体と協力して「障がい支援事業所 すずらんとかたつむり」の開設を目指していた。
準備を手伝いながら、障害をもつ子たちが初めての環境にとまどって大声を出して避難所にいられなくなり、車での生活を余儀なくされたり、親たちは世話で手が離せず、復旧作業も配給の受け取りも困難な状況に陥ったりしていたことを知った。吉田さんは和歌山に帰ってから、陶芸クラブの仲間と相談し、チャリティーバザーで継続的に親の会を支援することを決めた。
親の会は現在、「かたつむり」の再開を目指して準備に励む。被災しながら、現地で中心になって活動する吉田富美子さん(47)は、「遠方から駆けつけてくれた吉田さんの気持ちが背中を押してくれた。家も作業所も失い、居場所もない絶望の中で、もう一度動き出せました」と感謝する。
吉田さんは今でも、慎太郎さんの死をつらく思い出したり、同世代の子どもを見ると悲しくて涙があふれそうになったりする。それでも、「微力ながら支援は10年続ける」と決意し、被災地の障害をもつ子たちへの思いを込めながら製作に取り組む。
チャリティーバザーは午後3時開始で、陶器の食器や花瓶など約1500点を出品予定。問い合わせは同クラブの小出恵子代表(090・1912・5137)。
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バザーに向けて、出品準備に励む吉田さん(和歌山市で)
(2013年5月17日 読売新聞)
(落合宏美)
2011年3月の東日本大震災発生時、吉田さんは、慎太郎さんの姿が被災地の子たちと重なり、「障害のある子たちはきっと大変に違いない」と現地に向かうことを決意。自家用車内に簡易ベッドを作り、工具を積み込むなどして、約3か月後に出発。福島県や宮城県の被災地で泥だし作業などをしながら障害者の被災情報を集める中で、同7月末に岩手県陸前高田市で「かたつむり親の会」と出会った。
親の会は、知的障害のある子をもつ20家族で結成され、約10年前に作業所「かたつむり」を同県大船渡市に設立。ペットボトルや古紙などの回収に取り組むなど、地域に貢献してきた。しかし、震災で作業所は地区ごと流され、メンバーは被災してばらばらに。吉田さんがたどり着いた時、親の会は同県陸前高田市の高齢者福祉団体と協力して「障がい支援事業所 すずらんとかたつむり」の開設を目指していた。
準備を手伝いながら、障害をもつ子たちが初めての環境にとまどって大声を出して避難所にいられなくなり、車での生活を余儀なくされたり、親たちは世話で手が離せず、復旧作業も配給の受け取りも困難な状況に陥ったりしていたことを知った。吉田さんは和歌山に帰ってから、陶芸クラブの仲間と相談し、チャリティーバザーで継続的に親の会を支援することを決めた。
親の会は現在、「かたつむり」の再開を目指して準備に励む。被災しながら、現地で中心になって活動する吉田富美子さん(47)は、「遠方から駆けつけてくれた吉田さんの気持ちが背中を押してくれた。家も作業所も失い、居場所もない絶望の中で、もう一度動き出せました」と感謝する。
吉田さんは今でも、慎太郎さんの死をつらく思い出したり、同世代の子どもを見ると悲しくて涙があふれそうになったりする。それでも、「微力ながら支援は10年続ける」と決意し、被災地の障害をもつ子たちへの思いを込めながら製作に取り組む。
チャリティーバザーは午後3時開始で、陶器の食器や花瓶など約1500点を出品予定。問い合わせは同クラブの小出恵子代表(090・1912・5137)。

バザーに向けて、出品準備に励む吉田さん(和歌山市で)
(2013年5月17日 読売新聞)