東京都西東京市の知的障害者支援施設「たんぽぽ」(社会福祉法人田無の会)で入所者が暴力行為を受けているとの通報があり、都の指導を受けて設置された第三者委員会が、職員による虐待があったと認定していたことが分かった。
弁護士などでつくる第三者委は、聞き取り調査でまとめた内容を五月二十七日に法人の理事会に報告。都によると、運営能力が欠けるとして経営陣の刷新を求めたほか、改善策を一カ月以内に第三者委に報告するよう提言、都も同様の報告書提出を求めた。
都によると、昨年八月十七日、職員が施設内で男性入所者に馬乗りになって顔を殴り、ケガをさせた。職員は男性が別の入所者にちょっかいを出したと聞いて男性から話を聞こうとしたが、手を出されたため、カッとなって殴ったという。
第三者委は他にも、別の職員が入所者を蹴ったり、シャワーで冷水を浴びせたり、食事を口に押し込む虐待行為も認定した。
障害者虐待防止法に基づき、十一月に都と西東京市に内部通報があり、都が第三者委の設置を指導していた。
◆「安心できる場に」被害者の会結成
「たんぽぽ」で虐待を受けた利用者の保護者や元職員は「被害者の会」を結成した。四日の記者会見では、虐待の実態を明かしながらも、他に行き場のない苦しさを訴えた。
代表世話人の宮内千穂子さん(74)は、長女(47)の終(つい)の棲(す)み処(か)を造ろうと千五百万円を出資し、設立者の一人になった。しかし、長女は施設で、利用者でもある理事長の親族に殴られたり、胸に原因不明の多数の引っかき傷を付けられたりした。訴えると「出て行け」と言われ、退所せざるを得なかった。
二〇〇二年には、東京都社会福祉協議会が体罰やプライバシー侵害を指摘し、都にも報告。しかし、施設の体質は変わらず、逆らう人間は退所や退職に追い込まれたという。
昨年八月に男性職員による暴行を目撃した元女性職員の通報で今回、問題が発覚。都の指導で第三者委員会が設置されたが、調査結果は被害者家族にも知らされていない。
被害者の会は「このままでは形だけの改善に終わる」と危機感を抱き、都に結果の公表や、理事長らの退陣など根本的な改善を求める。元職員の女性は「子どもがひどい扱いを受け、一緒に死のうとした親もいる」と明かす。
施設を追い出されると、他に行き場はない。宮内さんは「親も高齢となり、たんぽぽが、子どもが安心して暮らせる場になってほしい」と訴えた。
東京新聞- 2013年6月5日 朝刊