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社説[障害者雇用促進法]環境整え「人材」生かせ

誰もが生きやすい社会をつくるための大切な法律だ。 

 精神障がいのある人の採用を企業に義務付ける「改正障害者雇用促進法」が13日、成立した。身体障がい者に加えて知的障がい者の雇用を義務付けた1998年以来の大幅な改正となる。

 精神疾患は今や「五大疾病」の一つに挙げられるほど身近な病気である。障がいがあっても働きたいと願う人は多く、周りのちょっとした配慮で企業の戦力となれる人もたくさんいる。

 改正法は、就労を希望する精神障がい者の増加を背景に、さらなる社会進出を目的としている。

 事業主に対しては、障がい者への差別を禁止するほか、その特性に応じて職場環境を整備する配慮を義務化している。

 例えば、車いすの使用を理由とした採用の拒否、健常者より低い不当な賃金、研修を受けさせなかったり、食堂の利用を認めないなどは差別に当たるだろう。入社試験の問題にルビをふる、車いすに合わせて机の高さを調整する、絵図を使って業務内容を分かりやすく説明することなどは配慮といえる。

 どこまでが差別で、どういった配慮が必要かについては、今後、厚生労働省がガイドラインを策定する。

 手すりやスロープの設置など職場環境の整備を負担に感じる会社もあるかもしれない。だが、大半は精神障がいへの正しい理解があれば乗り越えられる課題である。

    ■    ■

 厚労省の調査によると、2012年度に就職した障がい者は前年度より15%増の6万8321人。うち精神障がい者は27%増の2万3861人で、過去10年間で10倍に増えた。

 障害者雇用促進法では、従業員の一定割合以上の障がい者の雇用を企業に義務付けている。法定雇用率のことだ。

 その数値が4月に15年ぶりに引き上げられ、1・8%から2・0%になった。障がい者の範囲が広がった今回の法改正で、雇用率はさらに上がることが予想される。 

 しかし実際はというと12年6月時点で1・69%。沖縄は1・95%と高かったが、全国的には半数以上の企業が法定雇用率をクリアしていない。

 取り組みが遅れているのは主に中小企業で、経験やノウハウがないことも関係している。企業が安心して精神障がい者を雇用できる仕組みづくりに力を入れなければ法の実効性は薄れる。

    ■    ■

 北谷町で就労移行支援事業などに取り組む「アソシア」は、障がい者と企業の間に立ち、雇用の定着で実績を上げている。

 「作業指示は午前と午後の2回」「仕事を抱えがちなので割り振りに配慮を」など丁寧なアプローチが奏功する。

 一方、雇い入れる側も短時間労働や出社時間の調整などで気を配る。漠然とした不安は、実際の働きぶりによって解消されるという。

 不景気で余裕がない中、難しい課題のように思えるが、

障がい者ではなく「人材」という視点を持てば、新たな可能性が見えてくる。



沖縄タイムス- 2013年6月16日 09時48分 (15時間35分前に更新)

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