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復興補助:福祉施設への交付まだ1割 地域の計画遅れ

 東日本大震災で被災したお年寄りや障害者の施設の復旧を進めようと、震災直後の11年度一般会計補正予算に計上された施設整備の補助費670億円の「消化率」が1割以下にとどまり、61億円しか使われなかったことが厚生労働省への取材で分かった。同省は整備費用の補助率をかさ上げしたが、移転や現地再建が進まず、ほとんどが補修など「小口」の申請にとどまったのが原因。被災地の実情と国の発想のズレが浮き彫りになった。

 同省によると、震災では児童施設を含む社会福祉施設1626件(昨年5月時点)が被災した。同省は早期復旧には再建時の補助の強化が不可欠と判断。再建にかかる費用の補助率を従来の「2分の1」から「3分の2」にアップすることを決め、補正予算を組んだ。

 ところが11年度に補助が決まったのは高齢者910件・43億円と障害者289件・18億円の計1199件・61億円。一部損壊した施設など軽微な補修が大半を占めた。津波で流されるなどした施設の多くは、地域の復興計画策定が遅れ用地確保のめどが立たないことなどから、申請に至らなかった。このため補正予算の多くが繰り越され、12年度予算の新たな計上は「ゼロ」になった。

 12年度の繰り越し分には岩手、宮城、福島3県で22件(高齢者15、障害者7)15億2000万円分の申請があり、今月半ばから正式に補助が決まる。再建が本格化するとみられるのは13年度だが、「一般会計予算は災害復旧のためでも3年目には繰り越せない」(同省)ため、13年度は復興庁の概算要求で施設整備補助費として高齢者5件、障害者19件分の計約60億円が計上されたにとどまる。

 同省や自治体によると、被災3県で全壊した▽特別養護老人ホーム▽老人保健施設▽養護老人ホーム▽軽費老人ホーム計19件のうち3件が再建を断念。16件中2件は11年度に補助が交付され、5件は12年度に交付予定だ。残る9件のうち5件は13年度、申請にこぎ着ける見通しという。

 宮城県気仙沼市の特別養護老人ホーム「恵風荘」は浸水を免れたが、同じ社会福祉法人が市内で運営する特養「恵心寮」が1階屋根まで浸水したため入所者を受け入れ、一時は定員が27人も超過。肺炎が流行するなどし、昨年4、5月の2カ月間で今年同期より4倍多い13人が死亡した。同市は平地が少なく、恵心寮の移転先の確保は難航。ようやく建物の設計に入った段階だ。

毎日新聞 2012年11月04日 10時24分

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