Quantcast
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

精神障害者割引進まず 全国のバス・鉄道、未導入6割超

 路線バス、鉄道を運行する全国の交通機関(自治体を含む)のうち6割超が、うつ病など精神障害のある人に運賃割引を実施していないことが国土交通省の調べで分かった。身体障害、知的障害者の運賃割引はほぼ全ての機関が実施しているという。分け隔てなく障害者の社会参加を促す障害者基本法の趣旨に基づき、三つの障害間の格差是正を図っている国は、再三にわたって精神障害者にも運賃割引を実施するよう各機関に要請してきたが、対応にはばらつきがある。

 国交省によると、身体、知的障害者の場合、障害者手帳を提示すれば運賃の半額割引を受けられるのが一般的。介護人も半額になるところもある。しかし、精神障害者保健福祉手帳を提示しても、全国の路線バス1819社のうち63%の1143社が運賃を割引していない(2012年10月現在)。鉄道173社でも68%に当たる118社が実施していない(4月現在)。

 九州7県では、路線バス61社のうち31社、鉄道16社のうち6社がそれぞれ未実施。路線バスでは、業界団体で導入を決めた長崎県(15社)や熊本県(7社)では全社が半額割引。一方、大分県(9社)は1社も実施せず、福岡県(13社)も実施は1社にとどまる。

 12年7月、国交省は中小の路線バス会社が参考にする「約款のモデル」を見直し、精神障害者への運賃割引を明記。同11月には九州運輸局が「精神障がい者に対する運賃割引等の拡大に関する協力依頼」とする文書を各機関に送付したが、効果はなかった。

 グループのバスや鉄道会社すべてで未実施の西日本鉄道(福岡市)は「精神障害者の社会参加の促進など趣旨は分かるが、行政負担の福祉施策で実施すべきで、慎重にならざるを得ない」(広報室)と主張。JR九州も「これ以上の負担は国や自治体が担うべきだ」(同)とするなど大手は割引に伴う減収を懸念しているもようだ。

 福岡市の地下鉄を運営する市交通局は、精神障害者手帳を持つ市民のみ割引している。

 厚生労働省によると、うつ病、統合失調症、不安障害などのある精神障害者は全国で約320万人。このうち精神障害者手帳の所持者は約63万人(九州は約6万8千人)。18年4月からは精神障害者の雇用が企業に義務付けられ、社会進出が進むとみられている。身体、知的障害者の手帳所持者は計約608万人。

 精神障害者の家族会でつくる全国精神保健福祉会連合会(東京)は「三つの障害間で格差があるのはおかしい。精神障害への偏見も懸念される。運賃割引導入を早期に拡大してほしい」と訴えている。

 ◆利用者増えるメリットも

 福岡県立大の住友雄資教授(精神保健学)の話 精神障害者が身体、知的障害者と同じ割引を受けられない合理的な理由はない。障害者差別解消法も成立し、そのような状況は改善されなければならない。割引による減収を気にしているところがあるようだが、精神障害者の社会参加で利用者が増えるメリットもあるはずだ。デメリットだけを強調して導入を拒むのはおかしい。

Image may be NSFW.
Clik here to view.


=2013/08/19付 西日本新聞朝刊=

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

Trending Articles