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障害者虐待 相談機能の強化が急務だ

 子どもや障害者、高齢者など保護を必要とする人たちに対し、長期間にわたって暴力を振るったり、日常的に嫌がらせや無視をしたりする。こうした行為を総称して「虐待」と呼ぶ。

 2000年の児童、06年の高齢者に続き、障害者虐待防止法が施行されたのは昨年のことである。

 厚生労働省の全国集計で、家族や福祉施設の職員らから暴行や暴言、年金の使い込みなどの虐待を受けた障害者が、昨年10月から今年3月の半年間に全国で1505人いたことが分かった。

 防止法の施行を受けて、厚労省が初めてまとめた。9割近くは家族による虐待だったが、部外者の目が届きにくい入所施設では、全容が把握できていない可能性もある。「氷山の一角ではないか」との思いも禁じ得ない。

 虐待の種類は殴るなどの身体的虐待が790件で最も多く、日常の世話をしない「放棄・放置」は277件だった。痛ましい死亡例も3件あった。社会全体で事態を深刻に受け止める必要があろう。

 法律では、全ての都道府県と市町村に相談窓口の設置が義務付けられている。24時間態勢で通報や相談を受け付け、担当職員が本人や周辺住民への聞き取り、家庭訪問などを行って虐待の有無を認定する仕組みだ。必要に応じて立ち入り調査や一時保護もできる。

 障害者は虐待を受けても外部に訴えにくく、被害が表面化することも少ない。このような実態を考えれば、全国の自治体に相談窓口が設けられた意義は大きい。

 ただ、課題も少なくない。職員数の不足など体制が不十分な自治体が多いことだ。知的障害者と家族の全国組織「全日本手をつなぐ育成会」によると、専任職員だけで構成した市町村は今年3月まででわずか4%にとどまっている。職員数も3割が2人以下だ。

 担当職員の増員や専門知識を備えた人材養成は急務といえよう。各自治体の厳しい財政事情も理解できるが、都道府県や周辺市町村との連携を強化するなど工夫して相談窓口機能の充実を図りたい。

西日本新聞-=2013/11/22付 西日本新聞朝刊=

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