身体障害者の性を描いた米国映画「セッションズ」(ベン・リューイン監督、六日公開)が、日本の映画倫理委員会(映倫)の審査で「R18+」(十八歳未満は観覧禁止)に指定され、この映画を東京国際映画祭や試写会で見た人の間から、反発や疑問の声が上がっている。 (井上喜博)
映画は六歳の時にかかったポリオ(小児まひ)が原因で、首から下がまったく動かなかった詩人でジャーナリストのマーク・オブライエンさんの実話を基に作られた。
三十八歳のマーク(ジョン・ホークス)はヘルパーに介助されながら自立した生活を送っていたが、心身ともに女性を愛したいと願い、セックス・サロゲート(代理人)のシェリル(ヘレン・ハント)から指導を受ける。マークの真剣な姿に、最初は婚外交渉に反対していたブレンダン神父(ウィリアム・H・メイシー)も応援に回り、シェリルも仕事を超えた感情を抱くようになる。
全裸を惜しげもなく披露したヘレン・ハントは、この作品で本年度のアカデミー賞の助演女優賞にノミネート。作品自体も、昨年のサンダンス映画祭で観客賞と審査員特別賞を受賞するなど数々の賞に輝き、十月の東京国際映画祭では特別招待作品として上映された。
この映画を審査した映倫は「大人向きの作品で、極めて刺激の強い性愛描写並びにヘアヌード、性行為に関する会話と図解がみられる」として「R18+」に指定。ちなみに米国は「十七歳以下は保護者の同伴が必要」、英国は「十六歳以上」、デンマークやスウェーデンは制限なし、と各国で対応が分かれている。
映倫のレーティング(区分指定)に対し、ツイッターでは「フルヌードはあるものの許容範囲。レイプや過激なシーンが出てくるわけでもない」「この映画をわいせつだとか買春を助長してるとしか見られないのって、相当偏ってると思う」などといった反対意見が続出。
映画評論家の北川れい子さんは「明るいストーリーの中に、身体障害者の性の問題を描いてみせた。性を求めることはすなわち、生きることへの欲求であることを教えてくれる」と指摘し、「作品全体を評価するのではなく、リアルな性愛描写だけを取り上げて、しゃくし定規に判定するのでは意味がない。十七歳以下の若者がこの映画を見られないのはとても残念です」と話している。
<映倫> 表現の自由を守り、青少年の健全な育成を図ることを目的に、映画界が自主的に設立した審査機関。1956年に現行の組織となり、2009年には名称を映倫管理委員会から映画倫理委員会に改めた。委員は有識者が務め、現在の委員長は大木圭之介・椙山女学園大文化情報学部教授。映倫の審査を受けた作品は題名の右下などに「映倫マーク」を付し、これがない映画は一般の劇場では上映されない。
東京新聞-2013年12月3日 朝刊
映画は六歳の時にかかったポリオ(小児まひ)が原因で、首から下がまったく動かなかった詩人でジャーナリストのマーク・オブライエンさんの実話を基に作られた。
三十八歳のマーク(ジョン・ホークス)はヘルパーに介助されながら自立した生活を送っていたが、心身ともに女性を愛したいと願い、セックス・サロゲート(代理人)のシェリル(ヘレン・ハント)から指導を受ける。マークの真剣な姿に、最初は婚外交渉に反対していたブレンダン神父(ウィリアム・H・メイシー)も応援に回り、シェリルも仕事を超えた感情を抱くようになる。
全裸を惜しげもなく披露したヘレン・ハントは、この作品で本年度のアカデミー賞の助演女優賞にノミネート。作品自体も、昨年のサンダンス映画祭で観客賞と審査員特別賞を受賞するなど数々の賞に輝き、十月の東京国際映画祭では特別招待作品として上映された。
この映画を審査した映倫は「大人向きの作品で、極めて刺激の強い性愛描写並びにヘアヌード、性行為に関する会話と図解がみられる」として「R18+」に指定。ちなみに米国は「十七歳以下は保護者の同伴が必要」、英国は「十六歳以上」、デンマークやスウェーデンは制限なし、と各国で対応が分かれている。
映倫のレーティング(区分指定)に対し、ツイッターでは「フルヌードはあるものの許容範囲。レイプや過激なシーンが出てくるわけでもない」「この映画をわいせつだとか買春を助長してるとしか見られないのって、相当偏ってると思う」などといった反対意見が続出。
映画評論家の北川れい子さんは「明るいストーリーの中に、身体障害者の性の問題を描いてみせた。性を求めることはすなわち、生きることへの欲求であることを教えてくれる」と指摘し、「作品全体を評価するのではなく、リアルな性愛描写だけを取り上げて、しゃくし定規に判定するのでは意味がない。十七歳以下の若者がこの映画を見られないのはとても残念です」と話している。
<映倫> 表現の自由を守り、青少年の健全な育成を図ることを目的に、映画界が自主的に設立した審査機関。1956年に現行の組織となり、2009年には名称を映倫管理委員会から映画倫理委員会に改めた。委員は有識者が務め、現在の委員長は大木圭之介・椙山女学園大文化情報学部教授。映倫の審査を受けた作品は題名の右下などに「映倫マーク」を付し、これがない映画は一般の劇場では上映されない。
東京新聞-2013年12月3日 朝刊