◇潜在能力、すごかった−−岩藤和彦(いわとう・かずひこ)監督(48)
2005年の全国大会。知的障害者ソフトボールの県選抜チームが超満員の岡山ドームで、見知らぬ人の応援を励みに初優勝した。「障害に引け目を感じたり、嫌な思いをしたことのある選手が、『褒めてもらった。周囲が喜んでくれた』と本当にうれしい顔になった」。これが、岩藤和彦監督(48)が指導を続ける理由だ。
この種目との出会いは04年。全国大会を控え、指導を依頼された。選手では県立高梁高時代に全国高校総体優勝。日体大でインカレ3回優勝。指導経験も積んでいた。
だが、グラウンドに行くと、キャッチボールができる程度。「自分の指導方法を180度見直す機会になった」。知的障害者の場合、盗塁、スクイズができないといったルールがある。打撃練習に重点を置き、選手たちにルール、マナー、チームの約束事、技術を一つ一つ確認する。瞬間的な判断が必要な走塁などは、チーム全体で指示する。最初は「障害者だ」と構えていたが、「教え方に気を付ければいい。友達、同僚感覚で声をかける。障害はその人の癖のようなもの」と話す。
全国制覇後、「続けたい」の声に、クラブチームに。選手の意欲を保とうと、チーム名に「選抜」を残した。3連覇後、東京に1回戦で敗れ、選手が落ち込んだ。「選手は自分のためだけでなく、周囲に喜んでもらいたいのだと知った」
その後も常に東京との激闘が続き、昨年は東京と戦わずに通算6回目の優勝。今年は「東京を倒して優勝」が目標となった。最大の好敵手の地元が開催地となった10月14日の決勝を9−0で制した。「みんなの思い、潜在能力、すごかった」。健常者への指導も変わった。「失敗を責めるより、自分の教え方が未熟だったと思うようになった。チームと出会い、私の人生も変わったと思います」【山本麻美子】
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◇県選抜ソフトボールチーム
「全国障害者スポーツ大会優勝」が目標の知的障害者のクラブチーム。2006年設立。毎週日曜、倉敷市の清心女子高グラウンドで約3時間半練習。現在は中学生から45歳まで、選手26人。監督らスタッフ7人。随時、会員募集中。
毎日新聞 2013年12月05日 地方版
2005年の全国大会。知的障害者ソフトボールの県選抜チームが超満員の岡山ドームで、見知らぬ人の応援を励みに初優勝した。「障害に引け目を感じたり、嫌な思いをしたことのある選手が、『褒めてもらった。周囲が喜んでくれた』と本当にうれしい顔になった」。これが、岩藤和彦監督(48)が指導を続ける理由だ。
この種目との出会いは04年。全国大会を控え、指導を依頼された。選手では県立高梁高時代に全国高校総体優勝。日体大でインカレ3回優勝。指導経験も積んでいた。
だが、グラウンドに行くと、キャッチボールができる程度。「自分の指導方法を180度見直す機会になった」。知的障害者の場合、盗塁、スクイズができないといったルールがある。打撃練習に重点を置き、選手たちにルール、マナー、チームの約束事、技術を一つ一つ確認する。瞬間的な判断が必要な走塁などは、チーム全体で指示する。最初は「障害者だ」と構えていたが、「教え方に気を付ければいい。友達、同僚感覚で声をかける。障害はその人の癖のようなもの」と話す。
全国制覇後、「続けたい」の声に、クラブチームに。選手の意欲を保とうと、チーム名に「選抜」を残した。3連覇後、東京に1回戦で敗れ、選手が落ち込んだ。「選手は自分のためだけでなく、周囲に喜んでもらいたいのだと知った」
その後も常に東京との激闘が続き、昨年は東京と戦わずに通算6回目の優勝。今年は「東京を倒して優勝」が目標となった。最大の好敵手の地元が開催地となった10月14日の決勝を9−0で制した。「みんなの思い、潜在能力、すごかった」。健常者への指導も変わった。「失敗を責めるより、自分の教え方が未熟だったと思うようになった。チームと出会い、私の人生も変わったと思います」【山本麻美子】
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◇県選抜ソフトボールチーム
「全国障害者スポーツ大会優勝」が目標の知的障害者のクラブチーム。2006年設立。毎週日曜、倉敷市の清心女子高グラウンドで約3時間半練習。現在は中学生から45歳まで、選手26人。監督らスタッフ7人。随時、会員募集中。
毎日新聞 2013年12月05日 地方版