岡山県で注目され始めている県産イノシシの皮革製品「KIBINO(きびの)」。障害者の就労を支援する県セルプセンターが扱う新しいブランドだ。製造は県内3カ所の障害者就労支援施設に委託している。鳥獣害対策と福祉事業を結び付け、処分に困っていたイノシシ皮を県特産品として生まれ変わらせた。
・働く喜び生む革加工
センターは2013年にブランドを商標登録。スリッパや手提げ袋、ティッシュカバーなど約30商品を岡山市の雑貨店やイベントで販売する独自の流通網を整えた。
支援施設になめした革を提供し、製品の製造を任せる。施設利用者が手作業で加工し、専用の焼き印を入れてセンターに卸す。皮革製品の価格はスリッパの1万9800円から、しおりの700円まで幅広く設定。売り上げの一部が工賃として利用者に支払われる。
センターの田中正幸事務局長は「皮革製品は希少で売価が高く、工賃アップが見込める。手芸に慣れた利用者が多く作業もスムーズだ」と、利点を説明する。
障害者の自立には、労働に見合った収入を得ることの実感が欠かせない。しかし、就労訓練は菓子や工業部品の製造などに限られているのが実情だ。
新たな仕事づくりにセンターが目を付けたのが皮革製品だった。県備前県民局の紹介で12年度、イノシシを精肉加工する吉備中央町の加茂川有害獣利用促進協議会から革を調達、商品開発に乗り出した。支援施設と試作を重ね、東京都内や名古屋市など都市部で試験的に販売。革本来の手触りや物珍しさが好評だったことに商機を見いだした。
倉敷市で昨年11月に開かれたイベントでは、3日間で14万円を売り上げた。手作りで色や形が一つずつ微妙に違うこともブランドの魅力になっている。
革は12年度に69枚、13年度には39枚(12月末まで)を使用。1頭で1枚しかないため、革を供給する促進協議会は品質にこだわる。解体時に手作業で剥皮して脂肪を除去した上、業者になめし加工を委託し、1枚約1万円でセンターに卸す。協議会長の二枝茂広さん(62)は「1頭で平均7キロ出る皮の処分に困っていた。廃棄物が売れ、一頭でも多く捕ろうという意欲につながっている」と評価する。
製造を担う施設の一つ、吉備中央町の「吉備の里 希望」は3人が作業する。型作りや縫製など得意分野を分担し、ピーク時には2週間で100品を仕上げる。
「縫い物が得意なんだ。やりがいを感じている」と話す利用者の男性(31)。黙々と作業し、熊をかたどった小物を完成させた。皮革製品作りが好きで、製造が始まった時から作業に参加しているという。施設の丸山貴子主幹は「利用者の意欲は高く、需要拡大にも対応できる」と指摘。就労支援につなげながら、鳥獣害対策をも後押しする。
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日本農業新聞 -(2014/1/23)
・働く喜び生む革加工
センターは2013年にブランドを商標登録。スリッパや手提げ袋、ティッシュカバーなど約30商品を岡山市の雑貨店やイベントで販売する独自の流通網を整えた。
支援施設になめした革を提供し、製品の製造を任せる。施設利用者が手作業で加工し、専用の焼き印を入れてセンターに卸す。皮革製品の価格はスリッパの1万9800円から、しおりの700円まで幅広く設定。売り上げの一部が工賃として利用者に支払われる。
センターの田中正幸事務局長は「皮革製品は希少で売価が高く、工賃アップが見込める。手芸に慣れた利用者が多く作業もスムーズだ」と、利点を説明する。
障害者の自立には、労働に見合った収入を得ることの実感が欠かせない。しかし、就労訓練は菓子や工業部品の製造などに限られているのが実情だ。
新たな仕事づくりにセンターが目を付けたのが皮革製品だった。県備前県民局の紹介で12年度、イノシシを精肉加工する吉備中央町の加茂川有害獣利用促進協議会から革を調達、商品開発に乗り出した。支援施設と試作を重ね、東京都内や名古屋市など都市部で試験的に販売。革本来の手触りや物珍しさが好評だったことに商機を見いだした。
倉敷市で昨年11月に開かれたイベントでは、3日間で14万円を売り上げた。手作りで色や形が一つずつ微妙に違うこともブランドの魅力になっている。
革は12年度に69枚、13年度には39枚(12月末まで)を使用。1頭で1枚しかないため、革を供給する促進協議会は品質にこだわる。解体時に手作業で剥皮して脂肪を除去した上、業者になめし加工を委託し、1枚約1万円でセンターに卸す。協議会長の二枝茂広さん(62)は「1頭で平均7キロ出る皮の処分に困っていた。廃棄物が売れ、一頭でも多く捕ろうという意欲につながっている」と評価する。
製造を担う施設の一つ、吉備中央町の「吉備の里 希望」は3人が作業する。型作りや縫製など得意分野を分担し、ピーク時には2週間で100品を仕上げる。
「縫い物が得意なんだ。やりがいを感じている」と話す利用者の男性(31)。黙々と作業し、熊をかたどった小物を完成させた。皮革製品作りが好きで、製造が始まった時から作業に参加しているという。施設の丸山貴子主幹は「利用者の意欲は高く、需要拡大にも対応できる」と指摘。就労支援につなげながら、鳥獣害対策をも後押しする。

日本農業新聞 -(2014/1/23)