障害者の法定雇用率が昨年4月に引き上げられ、精神障害者の雇用が増えている。しかし、発達障害のある人にとって、障害者手帳を取得するか、一般の就職を目指すかは難しい選択だ。障害者として働くことで、どんなサポートが受けられるのか。現場を訪ねた。(寺田理恵)
◆必要とされる喜び
3年近い引きこもりを経て、21歳で広汎性発達障害と診断された吉沢祐子さん。初めて就職した「ぐるなびサポートアソシエ」(千葉市中央区)は障害者に配慮した取り組みを行う特例子会社だ。
入社から丸3年。「自暴自棄になったときも解雇せず、向き合ってくれた。給料分の働きができるようになりたい」と言い、積極的にパソコン(PC)の技術を磨く。
高校1年のとき、パニック障害で通学ができなくなった。何度か就職を試みたが、目を合わせて話すなどの接客業務が難しく本採用に至らず、医師の提案で訪れた障害者職業センターで発達障害が判明。「それまでは鬱の診断で、いつか治ると思っていました。先天的な障害と分かり、踏ん切りがつきました」と、障害者枠での就職を決意した。
入社当初は「周囲に配慮してもらうしかない」と考えていたが、職場で勧められた専門機関の訓練を受け、対人関係の苦手意識を解消。現在は業務支援システムの保守を担当する。「うまく作動しなくて呼ばれると、役に立っていると感じられる。名前を呼んでもらえ、必要とされる喜びはいいなと思います」
◆可能性を広げる
同社は親会社の飲食店検索サイト運営会社「ぐるなび」(東京都千代田区)が、増え続ける社員数に対し、障害者の法定雇用率を達成するため、平成22年11月に設立された。日報に体調や起床・就寝時間の記入欄も設け、健康状態を把握。社員の不安解消のため、面談を定期的に行うなどの取り組みを実施している。
障害者13人(25年12月10日現在)が契約社員として働き、月給13万〜16万円を得る。広汎性発達障害のある別の女性社員(33)は働きやすさを「マニュアルが整っていて(苦手とする)『見て覚える』『1回聞いてメモをとる』などの場面がない」と説明する。
業務内容は、親会社の取引先である飲食店から届く月約2万件の契約申込書の電子化からスタート。より高度なウェブ監視業務などを担当する社員が増えている一方、PCが苦手で辞めた人もいる。
このため、採用時にはPC事務でやっていく覚悟を求める。同社管理部の工藤賢治さんは「社員には業務の枠を広げる挑戦をしてもらう。可能性を広げれば面白くなり、会社のメリットにもなる」と能力を引き出す重要性を指摘する。
障害者雇用促進法の改正で、精神障害者の雇用が30年4月に義務化され、障害者としての就労機会が増えるとみられている。しかし、松為(まつい)信雄・文京学院大教授によると、発達障害のある子を持つ親は実践的なカリキュラムのある特別支援学校か、一般の学校かの選択に悩まされるという。
松為教授は「障害者として働けば法に基づくサポートが受けられるが、必ずしも一般の社員と同様には処遇が上がらない。いずれの選択肢にもメリット、デメリットがあることを専門家が示し、意思決定につなげるべきだ」と話している。
【用語解説】特例子会社
障害者の雇用に特別な配慮をして設立され、雇用している障害者を親会社やグループ企業全体の雇用とみなし、雇用率を算定できる子会社。障害者雇用促進法に基づき、一定要件を満たしたと認定される必要があり、認定企業は380社(平成25年6月1日現在)。常用の従業員50人以上の企業には障害者の雇用(法定雇用率2.0%)が義務付けられており、達成できない企業(従業員200人超)に納付金が課される一方、達成企業には調整金が支給される。
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発達障害のある人も含め、障害者が働きやすい環境を整備した特例子会社「ぐるなびサポートアソシエ」 =千葉市中央区
MSN産経ニュース 2014.2.13 09:00
◆必要とされる喜び
3年近い引きこもりを経て、21歳で広汎性発達障害と診断された吉沢祐子さん。初めて就職した「ぐるなびサポートアソシエ」(千葉市中央区)は障害者に配慮した取り組みを行う特例子会社だ。
入社から丸3年。「自暴自棄になったときも解雇せず、向き合ってくれた。給料分の働きができるようになりたい」と言い、積極的にパソコン(PC)の技術を磨く。
高校1年のとき、パニック障害で通学ができなくなった。何度か就職を試みたが、目を合わせて話すなどの接客業務が難しく本採用に至らず、医師の提案で訪れた障害者職業センターで発達障害が判明。「それまでは鬱の診断で、いつか治ると思っていました。先天的な障害と分かり、踏ん切りがつきました」と、障害者枠での就職を決意した。
入社当初は「周囲に配慮してもらうしかない」と考えていたが、職場で勧められた専門機関の訓練を受け、対人関係の苦手意識を解消。現在は業務支援システムの保守を担当する。「うまく作動しなくて呼ばれると、役に立っていると感じられる。名前を呼んでもらえ、必要とされる喜びはいいなと思います」
◆可能性を広げる
同社は親会社の飲食店検索サイト運営会社「ぐるなび」(東京都千代田区)が、増え続ける社員数に対し、障害者の法定雇用率を達成するため、平成22年11月に設立された。日報に体調や起床・就寝時間の記入欄も設け、健康状態を把握。社員の不安解消のため、面談を定期的に行うなどの取り組みを実施している。
障害者13人(25年12月10日現在)が契約社員として働き、月給13万〜16万円を得る。広汎性発達障害のある別の女性社員(33)は働きやすさを「マニュアルが整っていて(苦手とする)『見て覚える』『1回聞いてメモをとる』などの場面がない」と説明する。
業務内容は、親会社の取引先である飲食店から届く月約2万件の契約申込書の電子化からスタート。より高度なウェブ監視業務などを担当する社員が増えている一方、PCが苦手で辞めた人もいる。
このため、採用時にはPC事務でやっていく覚悟を求める。同社管理部の工藤賢治さんは「社員には業務の枠を広げる挑戦をしてもらう。可能性を広げれば面白くなり、会社のメリットにもなる」と能力を引き出す重要性を指摘する。
障害者雇用促進法の改正で、精神障害者の雇用が30年4月に義務化され、障害者としての就労機会が増えるとみられている。しかし、松為(まつい)信雄・文京学院大教授によると、発達障害のある子を持つ親は実践的なカリキュラムのある特別支援学校か、一般の学校かの選択に悩まされるという。
松為教授は「障害者として働けば法に基づくサポートが受けられるが、必ずしも一般の社員と同様には処遇が上がらない。いずれの選択肢にもメリット、デメリットがあることを専門家が示し、意思決定につなげるべきだ」と話している。
【用語解説】特例子会社
障害者の雇用に特別な配慮をして設立され、雇用している障害者を親会社やグループ企業全体の雇用とみなし、雇用率を算定できる子会社。障害者雇用促進法に基づき、一定要件を満たしたと認定される必要があり、認定企業は380社(平成25年6月1日現在)。常用の従業員50人以上の企業には障害者の雇用(法定雇用率2.0%)が義務付けられており、達成できない企業(従業員200人超)に納付金が課される一方、達成企業には調整金が支給される。

発達障害のある人も含め、障害者が働きやすい環境を整備した特例子会社「ぐるなびサポートアソシエ」 =千葉市中央区
MSN産経ニュース 2014.2.13 09:00