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Channel: ゴエモンのつぶやき
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困窮と犯罪 出所した高齢者らへ支援

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 認知症患者らが暮らす、千葉市内のあるグループホーム。顔見知りの県地域生活定着支援センター職員の訪問に、がっちりした体格の入居者の男性(85)は顔をほころばせながらも少し困った表情で応じた。「こんにちは。ええっと…誰だったかな」

 男性は昨年9月まで約2年間、窃盗罪で刑務所に服役していた。それまでは知的障害のある息子と2人暮らし。高齢のため長く続けてきた運送業をやめ、生活保護費と障害年金でつつましく生活を送っていた。しかし、認知症が徐々に進行。金銭の管理が難しくなり、生活は困窮していった。

 「倅(せがれ)を食わせないと…」。息子への思いから何度も、近くの小売店で食べ物を万引した。

 79歳から現在まで3回窃盗罪で摘発され、執行猶予期間中に再犯したことから、収監。生活の根幹が変わらなければ、出所後も同じ生活が待っていることは目に見えていた。そんな困窮と犯罪の“負の連鎖”に陥った男性に手を差し伸べたのが支援センターだった。

 平成24年の刑務所入所者の高齢者数は、その19年前の5年と比べて約5・6倍と激増している。法務省によると、毎年刑務所からの出所者は3万人前後。18年の調査によると、その中で親族などの身元引受人がおらず、自立が困難な65歳以上の高齢者や障害者は約1千人に上った。

 こうした人たちは出所後も安定した暮らしができないため再犯のリスクが高いとされ、身元引受人がいない高齢者の約7割が5年以内に再入所するというデータもある。知的障害などがある受刑者は、3割以上が犯罪の動機に「困窮」を挙げている。

 こうした人たちを支援するため、厚生労働省は21年から、各都道府県に社会福祉士などでつくる拠点を整備し、福祉サービスを出所者と結びつけ、再犯者を減らそうという事業を始めた。千葉県内の支援センターは22年10月に千葉市中央区に設立。これまで200人を超える出所者の支援に携わった。

 男性は出所後、センターの支援を受けて初めて介護認定を受けた。日常生活にほぼ全面的な介護が必要とされる要介護3。職員は「体が丈夫だから、これまで介護が必要だとなかなか気づいてもらえなかったのでは」と話す。

 職員によると、出所した高齢者・障害者の中には、知人や家族に金銭を搾取され、困窮に陥っている例も多くみられるという。

 男性は一旦は息子と暮らす自宅アパートに戻ったものの認知症が進み、たばこの不始末によるぼやや自転車窃盗などを起こした。支援センターの仲介を経て1月、24時間の見守り態勢があるグループホームへ入所した。

 施設では歌を歌ったり、体操をしたりして穏やかな日々を過ごす。大雪の時には体力を生かして雪かきを手伝い、感謝された。男性は「ここは退屈で仕方ないよ」と口をとがらせながらも、こう話す。

 「でも、ご飯が3食安心して食べられるのはありがたい」もう、食べ物のために盗みを起こすことはない。

 開設4年目の支援センターを中心に、県内では自立困難で再犯リスクのある高齢者・障害者に手を差し伸べる輪が広がりつつある。一方、福祉の限界を踏まえ、司法と連携した新たな動きも出ている。

MSN産経ニュース : 2014.2.23 20:18

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