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Channel: ゴエモンのつぶやき
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太良高全県枠1期生が卒業 多様な進路実現

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 県立高校で卒業式が行われる1日、不登校経験者や発達障害のある生徒、高校中退者を2011年から全県募集枠(全県枠)で受け入れてきた太良高(藤津郡太良町)でも第1期生が巣立つ。全日制普通科に特別支援教育の視点を取り入れたきめ細やかな教育で、国立大学進学から福祉的就労まで、生徒一人一人の能力や特性に合ったさまざまな進路を実現。進学校や実業校にも応用できる、高等教育の一つのモデルになりそうだ。

 卒業するのは全県枠16人と西部学区枠24人。教室の正面には掲示物を貼らず、机や椅子の脚にはカバーをかぶせて音を抑えるなど、統一されたシンプルで静かな学習環境で共に学んできた。発達障害の特性で視覚的な情報をうまく捉えられなかったり、聴覚が過敏だったりする生徒への配慮は、どの生徒にも落ち着いて学ぶ雰囲気を生んだ。

 少人数制のカリキュラムやサポート役の教諭を配置したほか、本人の意欲に応じた放課後の個別指導など学習支援に力を入れる一方、相談を随時受け付ける体制に加え、支援に関わる三つの校内会議を定期的に実施。生徒の出欠状況などを共有して対応を検討し、高校生活を支えた。

 発達障害のある中尾優理さん(19)は学校に通えなくなった時期もあったが、「立ち止まったとき、どうしたらいいのか先生が親身になって一緒に考えてくれた。その温かさがうれしかった」と振り返る。相談を重ねるうちに目標を見つけ、海外への語学留学の準備を進めている。

 進路をめぐっては、11年ぶりの国公立大学進学となる佐賀大への合格者が出る一方、発達障害のある生徒には佐賀障害者職業センターなど外部機関と連携し、福祉的就労への道筋を開拓した。

 生徒自身や保護者が特性を理解できるように時間をかけて丁寧に説明。障害者手帳を取得する選択肢も示した。手帳を活用すれば、社会的な支援を受けながら自立を目指して働くことができる。実際に交付を受け、この春から就労移行支援事業所で働くケースもあり、従来の全日制普通科にはない進路の幅を広げた。

 地域の人たちも生徒たちを支え、学校近くで暮らす老夫妻がホームステイを引き受けたり、地元企業が就業体験の場を提供したりしてきた。

 校内外の関係者が心配するのは、生徒たちが春からの新生活につまずくことで、学校側は卒業生向けの相談窓口の開設も検討している。

 同校の特別支援教育コーディネーターの南一也教諭(49)らは全県枠の生徒の進学先を中心に1月から訪問を重ね、相談窓口の担当者に、高校生活の様子やこれまで取り組んできた支援内容を伝えてきた。「高校側は卒業させたら終わりではいけない。在学中から進路先の相談窓口を明確にしておくことで不安の軽減にもつながる」と南教諭。苦手な部分だけでなく、環境や条件次第で十分に能力が発揮できる強みを伝え、配慮を取り付けている。

 太良高に学生支援員を派遣している佐賀大文化教育学部の園田貴章教授(60)=学習支援論=は「多様化した生徒のニーズに応えられる、新しい全日制高校の在り方を実践で示した」と評価。「特性に配慮するために工夫された授業や進路指導は、どの子にも生かせる。ほかの教育現場にも同様の取り組みが広がれば」と期待する。


生徒一人一人に配慮した教育を実践してきた太良高。学科改編後初めての卒業生が巣立つのを前に、式典の準備が進む=藤津郡太良町

佐賀新聞 : 2014年03月01日更新

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