Quantcast
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

累犯障害者の福祉支援 厳罰=再犯防止ではない

 知的障害を抱え社会の居場所がなく、福祉支援からこぼれ落ちて軽微な犯罪を繰り返してしまう「累犯障害者」。処罰よりも社会復帰の受け皿が必要という認識が徐々に広がっている。厳罰重視の従来の検察には考えられなかった福祉とのつながりを一層強めたい。

 2011年、再犯防止対策強化に伴い長崎、仙台、大津の各地検は福祉専門家らによる「障がい者審査委員会」を設置。助言を判断材料に取り入れる試みを導入した。東京地検もアドバイザーに社会福祉士を迎えている。累犯障害者の再犯防止に司法と福祉の相互支援は不可欠だ。緊密とは言えなかった両者の連携の制度化を急がねばならない。

 2007年犯罪白書で全国15刑務所の受刑者2万7千人のうち知的障害者(疑い含む)は410人いた。平均年齢は48・8歳。福祉サービスを受けるのに有利な療育手帳を持っていたのはわずか26人。再犯者は285人で約7割に達し、5回以上の再犯は162人にもなる。再犯期間は前回受刑から3カ月以内が32%、1年未満が60%だった。

 社会に出ても家族がいれば福祉の援助は受けやすいが、帰住先もなく福祉援助からもれた障害者は、孤立・困窮し生きるために犯罪を繰り返してしまう実態がうかがえる。

 「知的障害者が反社会的なのではなく、社会が犯罪に追い込んでいる」と指摘する専門家もいる。こうした人たちを福祉に導くのも司法の責務となる。

 最高検が昨年初公表した捜査・公判事例には福祉施設の受け入れ確約を得たことで起訴猶予にした累犯前科を持つ知的障害者や、実刑が想定される執行猶予中の窃盗再犯が福祉との連携で居場所を確保し執行猶予求刑となった社会復帰の優先例が紹介されている。

 「厳罰=再犯防止」とする検察の意識が変わってきた。きっかけは大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽(いんぺい)事件など相次いだ不祥事。検察改革に向け最高検が11年に複数の専門委員会を設置したその中に知的障害者の問題を扱う委員会があり、福祉関係者からの意見聴取で現状を知った経緯がある。

 支援事業は現在、全都道府県に設置された「地域定着支援センター」を中心に急速に進められている。本県は県の委託先の済生会病院内に置かれ、保護観察所や福祉関係機関などと連携して出所者の帰住地調整や福祉サービスの申請支援といったコーディネート業務などを行っている。

 累犯障害者が地域社会に溶け込むのは容易ではない。行政、民間のさまざまな機関・団体が連携し受け皿のネットワークを整えなければならない。まず累犯障害者の福祉支援を明確に法定化することが先決だ。

福井新聞

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>